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35年後のTMI「スリーマイル・アイランド小史」 via @tmi35project

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スリーマイル・アイランド小史



 

スリーマイル・アイランド、略称TMIは、ペンシルヴェニア州ミドルタウンの近く、サスケハナ川の島にある原子力発電所です。


位置関係でいえば、ミドルタウンはハーシー・パークから13.5キロ、州都ハリスバーグから16キロ、アーミッシュが根付くランカスターから43.5キロ、ゲティスバーグから77キロのところにあります。

これらの地域社会はたいがい、生態系の豊かなサスケハナ川の恵みを生活の基盤にしています。サスケハナ川流域はまた、たまたま米国有数の洪水多発地帯になっています。TMIはサスケハナ川の公式名をブリンサー島という島に立地しています。


TMI1号機の建造は19685月にはじまりました。2号機の建造は19697月にはじまりました。その当時、核エネルギーは「メーターで計る必要のないほど、安価」なエネルギー源と考えられ、エネルギー産業の未来を象徴していました。政府はこの新技術をさまざまな目的に使いたいと意欲的になっていました。


TMI1号機を4億ドルの建造費をかけて、19749月に完成し、稼働しました。2号機は197812月に稼働しました。2号機の建造は予算を超過し、工期が遅れ、地域の核監視団体、スリーマイル・アイランド警報(TMIA)と原子力環境同盟(ECNP)による訴訟を招きました。


TMI2号機が稼働して、ちょうど90日目(予測耐用期間の1120)の1979328日、原子炉が部分的なメルトダウンを起こしました。事故は午前4時ごろにはじまりました。未知の機械的不良のため、送水ポンプが蒸気発生器の冷却に欠かせない水を供給できなくなり、その結果、炉心を冷却できなくなりました。この故障のため、原子炉が停止しました。


原子炉停止のあと、一次系の圧力が上昇しはじめました。圧力を下げるため、排気弁が開けられました――が、弁が動かなくなり、開けっぱなしになりましたが、この事態は原発操作員らの知識を超えていました。その結果、貴重な冷却水が抜けてしまいました。誤った情報伝達がいくつか重なり、原子炉を安定させようと努めるあまり、さらなる冷却水供給を遮断しましが、それが事態をさらに悪化させているとは気づいていませんでした。


冷却水を喪失したため、炉心は過熱しました。燃料ペレットの半分とその被覆容器が溶け、後になって部分的メルトダウンと診断されることになる事態にいたりました。


関係者たちは、どのように行動すればよいのか、わからなくなりました。事態を制御下に置くために産業と地域の関係者らは緊急出動しましたが、TMIの幹部職員たちと原子力規制委員会(NRC)は互いに矛盾する説明をばらまいていました。


ペンシルヴェニア州のソーンバーグ知事は、原発から半径8キロの圏内に住む妊娠中の女性と幼児の予防的避難を求めました。


(女性と子どもたちは、細胞分裂が活発なので、変異した体内の細胞が増殖しやすく、放射線による突然変異と癌のリスクが高くなります)


原発から50キロの周辺地域から、約144,000人の人たちが逃げだしました。秩序と緊急避難計画が欠けていることが明らかになりました。ジミー・カーター大統領は一般住民を落ち着かせるために、NRC原子炉規制事務所のハロルド・デントン室長を派遣し、原発で起こっている事態を住民に説明させました。


デントンはNRCが公表した専門技術的な情報を理解しやすい用語に噛み砕いて説明しました。彼は、水素の泡のために原発が爆発するかもしれないという恐怖を静めることに役立ちました。
(水素の泡は、溶けた燃料と水の化学反応で発生します。水素は、やがて制御できる規模で燃えました)


ジミー・カーター(Jimmy Carter)は現地に飛び、帰宅しても安全であることをみなに知ってもらうために、TMIに現れた姿を見せることさえしました。


核燃料の取り出しが19798月にはじめられました。この仕事に約1,000人の作業員が従事し、経費が約97300万ドルかかりました。そのころ、住民たちは原発の説明責任を声高に問いはじめ、周辺町村で健康調査をおこないはじめました。


1号炉は無期限に停止していましたが、いまだ混乱のさなかにありながら、19797月にその安全性が確認できると、NRCはそれを再稼働させる意向を表明しました。住民活動家たちは主導権を求めて戦いました。

NRCは、2号炉の事故とフォールアウトは制御されていたのであり、一般人の健康問題はなかったと確実に証明できると主張して対抗しました。


PANE(核エネルギーに反対する人びと)という活動家グループは、NRCは精神的苦痛を考えていないが、政策決定に心理的な福利を組み入れるべきであると主張しました。グループはNRCを提訴し、最高裁に訴訟を持ちこみましたが、NRCの勝訴とする判決が下りました。


19825月に1号炉再稼働の賛否を問う住民投票がおこなわれ、反対する一般住民の声が決定的に勝利しましたが、1号炉は198510月に再稼働されてしまいました。


TMI契約先の電力会社、メトロポリタン・エジソン社(Met Ed)は、裁判所命令11号に対して抗告申し立てを断念したのに加えて、1984年に司法省との司法取引に応じました。その結果、Met Edは罰金45,000ドルを支払うとともに、ペンシルヴェニア州緊急事態管理局の資金となる100万ドルの口座を開設しました。この法的結着には、地方税納付者がMet Edの弁護費用を負担する必要がないという条項も含まれていました。


ペンシルヴェニア州最高裁は19959月、下級審の決定を破棄し、GPUMet Edの新しい社名)がTMI-2号炉事故経費分を電気料金納付者に課金することを許しました。この決定は、TMI-2号炉が電気料金納付者による7億ドルの負担で建造されたという事実を看過していたのです。10億ドルの経費が原発の核燃料を抜き取るために使われ、その原発はいま無為に停止し、または別のことばで言えば、「監視付き保管」下にあります。



TMI事故に関して、注目される健康調査がいくつかあり、さまざまに異なった結果を出しています。活動家が運動し、長年にわたり法廷闘争がおこなわれているにもかかわらず、TMI-1号炉は今日にいたるまで稼働しています。NRC2009年、その運転免許期間を延長した。1号炉は2034年まで運転が継続することになります。事故の結果、人びとは原子力の賛否両論に厳しい目を向けることを余儀なくされ、核産業に技術面および安全面で前進する新しい時代をもたらしました。そのような前進が充分なのか、あるいはNRCTMIで勃発した事態の説明責任を完全に果たしたのかは、いまなお異議を唱えられているのです。


ウッズホール海洋学研究所【ニュースリリース】カナダ沿岸で微量のフクシマ放射能を検出

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ウッズホール海洋学研究所
Woods Hole Oceanographic Institute



ニュースリリース

ブリティッシュ・コロンビア沿岸で

微量のフクシマ放射能を検出

即時広報版

201546日 メディア広報室 (508) 289-3340 media@whoi.edu

ウッズホール海洋学研究所(WHOI)の科学者たちは、北米の沿岸で採取した海水試料から、2011年の福島第一原子力発電所事故に由来する微量の放射能を初めて検出した。ブリティッシュ・コロンビア州ユークレットにおいて、ユークレット水族館の協力により219日に採取した試料に、人間と海洋生物に対して影響を与える恐れがあると国際的に認められたレベルよりじゅうぶん低い、極微量のセシウム(Cs134および137が含まれていた。

WHOIの科学者たちはこれまで15か月間にわたり、フクシマ由来の放射性核種の痕跡を探して、米国とカナダの西岸およびハワイの60か所以上で市民ボランティアの協力を得て、試料を収集してきた。研究チームは、カリフォルニア州北部の沖合100マイル(150キロ)で採取した試料に検出可能なフクシマ由来の放射能が初めて含まれていたと昨年11月に報告した。しかしながら、一般のみなさんが2013年から試料採取をしてきた海浜や海岸沿いでは、まだ放射能は検出されていなかった。

2011年から太平洋を横断して放射能レベルの測定をしてきたWHOIの海洋化学者、ケン・ビューセラーは、「放射脳が危険になるかもしれず、事故による間違いなく史上最大規模の放射性汚染物質が海中に放出されたあと、わたしたちは注意深く海を監視しなければなりません。しかしながら、ユークレットで検出したレベルは、非常に低いものです」と語った。

WHOIの科学者たちは試料を分析して、人間活動のみに由来する2種類の放射性セシウムを探した。セシウム137は大気圏内核兵器実験の「残存物」であり、その半減期が30年と比較的に長いので、世界の海洋の全域で見つかる。つまり、試料中のセシウム137の半分が崩壊するのに、30年かかる。フクシマの原子炉は空前の量のセシウム137を、同量のセシウム134とともに、海に加えた。セシウム134の半減期は2年なので、海洋中で検出されるセシウム134はすべて最近になって加えられたもの――そして、最近のセシウム134排出源は唯一フクシマだけである。

ユークレット試料には、フクシマ由来であることを告げる兆候、セシウム1341立方メートルあたり1.4ベクレル(Bq/m3)(水1立方メートルあたり、1秒間の崩壊事象の回数)、セシウム1375.8 Bq/m3含まれていた。これらのレベルは昨年の夏、カリフォルニア州北部海岸の160キロ沖合で測定されたものと同じである。セシウム含有量がユークレット試料の倍のレベルである水のなかで、毎日6時間ずつ1年間、泳ぐとしても、被曝する放射線量は、歯科でレントゲン検査を受けるさいのエックス線量の1000分の1以下である。

モニタリング活動

沿岸海域の放射能監視を担当する米国政府機関は存在しないので、ビューセラーは試料を収集するのに、クラウド・ファンディングおよび"Our Radioactive Ocean"[「わたしたちの放射能の海」]の名称で知られる市民科学率先活動に支えられてきた。その結果は、次のウェブサイトで一般に公開されている: OurRadioactiveOcean.org.

「今後、もっと多くの地点で検知可能なレベルのセシウム134が見つかるとわたしたちは予測していますが、海流および沖合と沿岸海域の海水入れ替わりはとても複雑です。海岸に近づくほど、放射能拡散の予測が複雑になりますので、この試料採取ネットワークを維持するためには、一般のみなさんのご支援が必要です」と、ビューセラーは述べた。

ビューセラーのグループと、カナダ、ヴィクトリア大学のジェイ・カレンが率いるInFORMと呼ばれるカナダ資金のプログラムが提携することによって、ブリティッシュ・コロンビア州の海岸沿いに12か所のモニタリング拠点が追加されることになった。さらに、カリフォルニア州ラ・ホヤのスクリップス海洋研究所との共同で近くおこなわれる航海によって、沖合の試料採取海域が新たに10か所加わることになる。また2015年、WHOIの物理海洋学者、アリソン·マクドナルドが率いるアメリカ国立科学財団 出資プロジェクトには、今年5月、ハワイ・アラスカ州アリューシャン列島間を航海する研究船で採取した250点以上の海水試料を分析するための資金が用意されている。

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ウッズホール海洋学研究所は、マサチューセッツ州ケープ・コッドの私立・独立組織であり、海洋調査、エンジニアリング、高等教育に貢献している。米国科学アカデミーの勧告にもとづき、1930年に設立された研究所の主任務は、海洋および海洋と地球全体の相互作用を理解することであり、変わりつつある環境における海洋の役割に関する基本的な理解を伝達することにある。詳しくは次のウェブサイトを参照のこと: www.whoi.edu

ケン・ビューセラーKen Buesselerは、ウッズホール海洋学研究所(WHOI)の研究主幹であり、海洋における天然および人工の放射性核種の研究を専門にしている。彼の研究には、大気圏内核実験のフォールアウトの研究、黒海に対するチェルノブイリの影響のアセスメント、太平洋における福島第一原子力発電所に由来する放射性核種による汚染の調査がある。ビューセラー博士は、WHOI海洋化学・地球化学部の部長、米国全球海洋フラックス合同研究計画およびデータ管理事務所の執行科学者を務め、また2年間、全米科学財団、化学海洋学計画のプログラム参事の任にあった。彼は2009年、アメリカ地球物理学連合のフェローに選ばれ、2011年、タイムズ高等教育誌によって、2000年~2010年の10年間で最も多く論文が引用された海洋科学者に指名されている。彼は目下、WHOI海洋・環境放射能センターCenter for Marine and Environmental Radioactivity)所長である。詳細は彼の研究室サイトを参照のこと: Café Thorium.

「わたしたちの放射能の海」(ourradioactiveocean.org)のモニタリング活動は、420人以上の個人による献金とスポンサー団体(sponsoring organizations)に支えられている。

初出公開日:201546
海水温の衛星測定(色調で表示)と海流の方向(矢印)がフクシマ由来の放射能が運ばれる場所を示すのに役立つ。大規模な海流が海水を西方向へ太平洋を横断して運ぶ。丸印は海水試料が採取された箇所を示す。白丸は、セシウム134が検出されたかった採取箇所。黄色の丸は低レベルのセシウム134が検出された採取箇所を示す。2015219日、ブリティッシュ・コロンビア州ユークレットの波止場で採取された海水試料から少量のセシウム134が検出された。昨年11月には、沖合で低レベルのものが検出されている。(ウッズホール海洋学研究所)

福島第一原子力発電所を背景に、研究船甲板上に立つWHOIの海洋放射性物質化学者、ケン・ビューセラーは、フクシマ惨事のあと、最初の国際海洋学遠征隊を組織した。彼は、北米西岸沿い各地で海水試料を収集し、彼のWHOI研究室で分析する市民科学試料収集活動、OurRadioactiveOcean.orgを創設した。彼の分析の結果は、OurRadioactiveOcean.orgに掲載され、一般公開されている。(写真提供 Ken Buesseler

【推奨サイト】

Fukushima and Our Radioactive Ocean(フクシマとわたしたちの放射能の海)


ウッズホール海洋学研究所と太平洋水族館の共同制作、米国海洋大気庁の球面上科学(SOS)システムで表現するビデオ。



【関連記事】



【NHKワールド】東電福島第一廃炉カンパニー代表に聴く~「打つ手がわからない」

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NHK WORLD News

2015年3月30日31日放映


廃炉カンパニー代表「打つ手がわからない」
"We have no idea"

トラスクリプト

[訳注:英語圏に伝わった情報の再現を試みるために、松田代表の肉声を無視して、英語の吹き替えを翻訳]


0:07

キャスター:福島第一原発の解体に取り組んでいる関係者たちは挫折につぐ挫折にみまわれています。彼らは放射能汚染水漏れと戦ってきて、失策に対する非難を浴びてきました。そのため、社会の信頼を大いに失い、信用を取り戻そうと努めています。


0:23

東京電力は解体専門の事業会社[福島第一廃炉推進カンパニー]を設立しました。課題解決の舵取りを任された責任者が、国際報道局記者、立岩陽一郎に語りました。彼は、政府が設定した計画に従うことができるか、わからないと打ち明けます。


0:40

立岩記者:松田尚宏代表は、福島第一廃炉工程の全体を任されています。彼は仕事に役立つ経験を備えています。彼は核エンジニアとして何十年間も働いてきました。松田氏は、損傷した原子炉建屋の一部の区域では、放射線レベルが高くて、作業員らがほんの数分間しか留まれないといいます。


1:07

廃炉工程で最も困難な部分は、[溶け落ちて]溜まり、高レベル放射性のデブリ(残骸)になりはてた核燃料の除去になるでしょう。


1:20

松田代表:わたしたちには、デブリのことがなにもわかっていません。形も、強度もわかりません。わたしたちはそれを30メートルの高さから遠隔操作で除去しなければなりません。しかし、わたしたちにはその種のテクノロジーがまだありません。単純にいって、そのような技術は存在しないのです。


1:45

記者:専門家は、放射線の放出を防ぐために、デブリを水漬けにしなければならないといいます。しかし、松田代表は、それは思うほど容易なことではないといいました。


200

松田代表:わたしたちにはいまだに、原子炉格納容器を水で満たす方法がわかっていません。3基の原子炉格納容器に裂け目や穴が見つかっています。裂け目や穴をすべて見つけたのかもわかっていません。他にも穴があるということになれば、デブリを取り出すために、なにか別の方法を考えなければならないかもしれません。


225

記者:政府はその作業が2020年に初められることを望んでいます。松田氏に、その目標を達成する自信があるのか、質問してみましたが、答えは驚くほど率直なものでした。


240

松田代表:これは大変な課題です。素直にいって、それは可能であるとはいえませんが、わたしは同時にまた、不可能であるともいいません。


253

記者:松田氏に、作業を成功させるために、なにが必要なのかとも質問してみました。

303

松田代表:難しい質問ですね。でも、たぶん経験です。どれほどの被曝量に人間が耐えられるのか? 地域の住民がどのような種類の情報を必要としているのか? なにをしなければならないのか、わたしたちに教えてくれる教科書はありません。わたしは、工程の前途にあるすべての段階で決定を下さなければならないのです。また、みなさんに対して、わたしは正直でなければなりません。わたしは常に正しい決定をすると約束することはできません。


343

記者:松田代表は、世界中のさまざまな分野の専門家に支援をお願いしたいと述べました。彼は、すべての作業を安全・効率的に遂行するために、最善の努力を尽くしたいと語りました。


NHKワールド、立岩陽一郎がお伝えしました。



ウッズホール海洋学研究所【ビデオ】フクシマ、そしてわたしたちの放射能の海 #WHOI

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フクシマ、そしてわたしたちの放射能の海
Fukushima and Our Radioactive Ocean



ウッズホール海洋学研究所



2015/03/30 に公開


このビデオは、米国海洋大気庁(NOAA)の「球面上の科学」(SOS)システムで上映するために、ウッズホール海洋学研究所と太平洋水族館(the Aquarium of the Pacific)によって共同制作された。この作品は、福島第一原子力発電所から放出された放射性核種および海洋生物と人間に対する放射能の影響に関する知見を解説している。


海洋の放射能とフクシマからの放射能について、詳しくは次のウェブサイトを参照のこと:


トラスクリプト

0:14

20113月、記録史上で最大規模の地震が6分間近くにわたり日本を揺るがし、破壊的な津波を引き起こし、それが300キロ以上におよぶ日本の沿岸部に押し寄せました。16,000人近くの人びとが命を奪われました。

0:30

津波はまた、福島第一原子力発電所を冠水させ、原子炉制御システムと予備電源を破壊しました。

0:42

原子炉が過熱して爆発し、大量の放射性物質が大気圏と海に放出されました。

0:52

海水を使って原子炉を冷却しようと試みた結果、さらに大量の放射性物質が海に洗い流されました。フクシマは、最大規模の放射能の海洋放出という不測の事態を招いた歴史に前例のない事件だったのです。

1:10

フクシマの影響を理解するためには、わたしたちが自然由来の放射性物質のある惑星で生きていることについて学ぶ必要があります。

1:18

放射性物質の大部分は地球の地殻に含まれる岩に由来しています。人間によって造られる放射性物質もあります。

1:24

放射線は、不安定な原子が崩壊するさいに放出されるエネルギーです。これは主として高速で飛ぶ粒子です。この放射線は目に見えませんし、音もなく、味も匂いもありません。

1:38

フクシマについて、わたしたちがしなければならない質問とは、「どれだけの放射能が放出されたのか?」、そして「どのようなリスクを人間と海洋生物にもたらすのか?」という問いになります。

1:50

大量の放射能は命取りになりえます。ある種のものは、呑みこめば、少量であっても危険になるかもしれません。

1:58

わたしたちは常に低レベル放射線に被曝しています。吸引する空気、飲用する水、摂取する食べ物のすべてに、極微量の放射性元素が含まれています。あまりにも少量ですので、害にはなりません。

2:14

実は、癌やその他の疾患を治療するためにも、放射線が使われています。放射線が命を救っているのです。

2:22

科学者たちは、放射線量を1秒間あたりの崩壊事象の数として測定しています。

2;27

海水中に最も大量に存在する放射性元素がカリウム40であり、天然のカリウムは常に生成されています。1,000リットル(約260ガロン)の海水のなかで1秒間に12,000回のカリウム40崩壊が起こっています。これはとても大きな数値ですが、人間や海洋生物の健康に影響をおよぼすとは考えられています。

2:53

フクシマ以前に環境に持ちこまれる人工放射能の主だった発生源は、1960年代に最盛期に達した大気圏内の核兵器実験でした。

3:04

時間の経過とともに、核実験の放射能が減衰し、今日では平均して、天然発生源に由来する放射能の1,000分の1になっています。

3:18

フクシマが爆発したとき、放射性の気体と粒子が大気圏内に漏出しました。そのほとんどが近くの土地と海に降下しました。少量のものが大気中に残りました。そして、数日のうちに地球を周回したのです。

3:35

フクシマに近い海域では、漏出したなかで最も大量に含まれていた2種類の放射性物質であるセシウム137134のレベルが、最大値で自然レベルの1500万倍以上にまで達しました。

3:50

原発に近い海域の漁業は休漁を余儀なくされました。放射能レベルが数千分の1にまで下がってからでさえ、放射能で汚染された魚を食べてしまう不安のため、原発に近い海域で休漁がつづきました。

4:07

フクシマの近海を回遊するマグロ、その他の魚類が被曝しましたが、きれいな海水のなかを長距離にわたり回遊しているうちに放射性セシウムが魚の体内から洗い流されました。

4:21

津波によって海に流されたガレキは、ほとんど放射能に汚染されていませんでした。

4:30

フクシマから放出された放射性物質のプルームは海流に運ばれ、太平洋を横断します。放射性物質が拡散すると、ますます希釈されて、濃縮度が低くなりますが、それでもやはり検出することができます。

4:51

プルームの動きをモデル化した科学者たちは、北米西岸沿いの放射能が増加するが、そのレベルは人間と海洋生物を脅かすほどにはならないと予測しています。

5:04

この予測は、検証されています。市民と科学者たちが海水試料を収集していますので、研究者らは先端的な装置を使って試料の測定を実施することができます。

5:17

今日、得られている結果によれば、北米西岸沿いとハワイのセシウムのレベルが、フクシマ以前に比べて、ほんの少しだけ上昇していることが示されています。

5:27

1年間毎日、海で泳ぐ人がいれば、歯科レントゲン検査1回分、またはロサンジェルス・ニューヨーク間のフライト1回分で受ける放射線量に比べて、100分の11,000分の1の線量をセシウムから受けることになるでしょう。

5:44

このような低レベルでは、魚、その他の海産物は人の飲食基準に適合しています。

5:53

あらゆる放射能は危険であるかもしれませんので、慎重なモニタリングが欠かせません。わたしたちは放射性の惑星で生きていますので、常になにかから被曝していることを忘れないでおきましょう。


WHOI関連記事】


201548日水曜日


20141114日金曜日



ニューヨーク・タイムズ紙「チェルノブイリ立入禁止区域内の森林火災で放射性物質再拡散の恐れ」

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森林火災による新たなチェルノブイリ放射性降下物の恐れ

レイチェル・ニュワーRACHEL NUWER 201546


20108月、モスクワのロシニ・オストロフ自然保護区の森林火災で、残り火に水をかける消防隊。これがチェルノブイリ核惨事によって汚染された土地の火災であれば、放射性粒子が空気中に放出されていただろう。

Credit: Alexey Sazonov / Agence France-Presse — Getty Images

ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所は1986426日、放射能のプルームを放出し、それは最終的にヨーロッパとユーラシアの推定77,000平方マイル[199,400 km2]を覆いつくした。最悪の汚染は原発の近接地――立入禁止区域と称する、いまだに人の居住が禁止されている地域――をみまったが、その影響はいまだにもっと遠く離れた地でも見られる。ドイツの森林を放射性イノシシがうろつき、ブルガリアで放射性マッシュルームが育つ。専門家の国際チームがいま、森林火災によってチェルノブイリの放射能が新たに舞い上がり、ヨーロッパに届くことがありうると警告している。


セシウム、ストロンチウム、プルトニウムの放射性同位体は、減衰するのに数十年から数千年かかる。汚染物質は土壌や植物体に残留しており、火災になれば、空気中に発散される。


気候モデルは、気温上昇が降水量の安定または減少と相まって、すでに炎上しやすくなっているチェルノブイリの周辺環境で野火が発生するリスクを上昇させると予測している。


事故前の地域では、森林が土地のちょうど50パーセントをおおっていたが、いま木樹と藪(やぶ)が立入禁止区域――ニューヨーク市の約4倍の広さの土地――の70パーセントをおおっている。火災予防と消火活動の能力は最低である。


サウス・カロライナ大学の生物学者、ティモシー・ムソーと彼の研究仲間たちは、火災型式、気候予測、ウクライナとベラルーシの汚染地域で収集した野外調査データを組み込んだコンピュータ・モデルを作成した。


エコロジカル・モノグラフ誌に掲載された、彼らの論文によれば、2002年、2008年、2010年に立入禁止区域内で発生した野火のために再放出されたセシウム137の推定累積量は、1986年の核災害で放出された元の量の8パーセントになる。


ムソー博士は、「古い原子炉建屋を新しいカバーをかけるために何十億ドルも投じています。しかし、森林火災には元の事故に由来する放射性物質を再び拡散する能力があるのです」という。


研究者らは将来に放射性物質が再拡散される量を予告しなかったものの、大火災になれば、相当な量の放射性の煤(すす)がチェルノブイリ周辺とヨーロッパ全域に撒き散らされ、おそらく農産物の汚染を引き起こすだろうと警告する。


これがどれほどの健康リスクをもたらすのかは、未知のままである。だが、ムソー博士は、「わたしたちの環境に発癌性物質が増えて、ロクなことになるはずがありません。有害に決まっています」と指摘した。


【筆者】 Rachel Nuwer



レイチェル・ニュワーはSmart News記者であり、Smithsonian.comに科学記事を投稿。ブルックリン在住のフリーランス科学ライター。


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【関連記事】


2015211日水曜日





【放射能ゴミ焼却問題を追及するブログ】


鮫川村に秘密裏に建設された放射性廃棄物焼却処分場に反対する住民組織『鮫川村焼却炉問題連絡会』のメンバーによるブログ



田村市都路町・川内村の境界にある東京電力()南いわき開閉所に、放射性廃棄物焼却炉の建設計画が浮上しました。20144月から帰還が始まり、子供達が避難先から元の学校に通う矢先です。元の安心できる暮らしと子供達を守るため、有志の会を立ち上げました。


【参考資料】


【最新】福島県内の放射能ゴミ焼却処理施設計画 from プリン キタムラ

郡山市に住むNさんは20113月の地震のあと、灯油などが買えない時期に、「薪ストーブがあってよかった」と、喜んでいたといいます。それまでも、家の外の薪置き場で乾燥させた薪を使用していたので、震災直後も同じように使っていたそうです。当時は、放射能に関する知識もありませんでした。

 ある日、福島県に住む知人から「自宅の薪ストーブの灰の数値が1キログラムあたり1万ベクレルを超えた」という話を聞いて驚き、すぐに自宅の薪ストーブの近くで放射線量を測定してみたそうです。使いつづけていた薪ストーブの灰の近くは、16マイクロシーベルト/hありました。20116月のことです。



プラウダ「原潜オレルの艦内火災で被害甚大」

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pravda.ru



原潜オレルの艦内火災で被害甚大


201548



 


ロシアの原子力潜水艦オレル(Orel=「鷲・ワシ」)の艦内で最近、火災が発生した。艦内第9区画で溶接作業中、火花から引火した。セヴェロドヴィンスクのプラウダ軍事情報通信員、アンドレイ·ミハイロフが思いがけなく事件の目撃者になった。


「わたしは自室の窓から、潜水艦が燃えているのを見ました。949型潜水艦オスカは、セヴェロドヴィンスクにあるシュベドッカ造船所の乾ドックに入渠(にゅうきょ)しています。オスカは補修と改修を受けるために2013年末、セヴェロドヴィンスクに入港し、2016年に出港する予定になっていました。艦内のあらゆるシステム――航行、音響探知、武装系統――が補修と近代化の対象になっています。潜水艦オスカは巡航ミサイルを搭載しています。潜水排水量は約25000トン、浮上排水量は22000トンです。つまり、非常に大きな潜水艦です」と、プラウダ通信員、アンドレイ·ミハイロフはいった。


このクラスの潜水艦は、これまでに数隻がシュベドッカ造船所で補修を受けていると通信員は指摘した。潜水艦オレルが入渠する前に、同艦に搭載されている原子炉2基の核燃料は除去されていた。巡航ミサイルと魚雷、発火性の液体物――タービンオイルとディーゼル燃料――もやはり艦内から降ろされていた。ミハイロフによれば、このような火災は非常に頻繁に起こっており、特に米国の潜水艦の場合、なおさらのことである。


「アメリカ人は、補修中の艦船の安全を確保する方法について、わが国から教訓を得ることさえしていました。シュベドッカ造船所の広報本部長、エフゲニー・グラディショフによれば、船尾にあたる第9区画の外殻と耐圧殻のあいだで溶接作業をおこなっているさい、火災が発生しました。ゴム引きの防音遮断材が発火したのです。潜水艦の防音被覆材は外殻の一番上にあります。外殻と耐圧殻のあいだに薄いゴムの層がありました。熱をともなう作業のさい、こういうことは度々ありますし、このような日常茶飯事が発火になぜつながったのか、明らかになっていません」と、通信員は語った。


火災が発生したとき、作業員全員と一部の乗員がただちに避難したと、アンドレイ・ミハイロフはいう。「補修と近代化のあいだ、乗員は艦内に残っていますが、総員ではありません。乗員の一部は艦内に燃え広がるのを防ぐために潜水艦内に残りました。シュベドッカ造船所消防隊の8チームが鎮火作戦の任に付きました。彼らは2分で火災現場に到着しました。シュベドッカ広報本部長、エフゲニー・グラディショフによれば、緊急事態ではないので、犯人を探すのは無意味だそうです」。


しかしながら、原潜オレル艦内火災は刑事事件として告発された。この告発は、刑法第216条「怠慢による甚大損害をもたらす作業安全規制違反」にもとづいていた。


潜水艦の原子炉は停止しており、巡航ミサイルは降ろされていた。放射能の危険はなかった。鎮火を期すために、潜水艦が入渠していたドックの冠水が決断された。


最新情報によれば、潜水艦オレル火災で生じた損害額は、1億ルーブル(23000万円)以上である。火災のため、潜水艦の潜水・浮上操舵系統が被害を受けた。


【付録】


英紙ガーディアン:



Nuclear submarine accident: Russian sub catches fire during repairs in Zvezdochka shipyard


カーストン・ガーミス「わたしの観察眼」~5年間の東京勤務を終えたドイツ紙特派員の惜別メッセージ

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The Foreign Correspondents’ Club of Japan



わたしの観察眼
On My Watch


島渡り~韓国旅行会社の竹島ツアーに参加した筆者。
このため、外務省に呼び出された。


5年にわたり東京から報道してきた
外国特派員からドイツの読者の
みなさんへの打ち明け話

カーストン・ガーミス Carsten Germis

が終わるように、荷造りは終わった。ドイツの日刊紙、フランクフルター·アルゲマイネ·ツァイトゥング紙の東京特派員として5年間以上にわたり過ごしてきたわたしは、まもなく東京を発ち、帰国する。

わたしが離れようとしている国は、わたしが20101月の当時、到着した国とは別物である。表面のものごとは同じように見えるが、社会的風土は――過去12か月、わたしの仕事にますます影響をおよぼし――ゆっくりだが、目について変わりつつある。

日本のエリートたちの見識と外国のメディアで報道されていることのギャプが拡がっており、それが当地で仕事するジャーナリストにとって問題になりかねないとわたしは心配している。もちろん、日本は報道の自由をともなう民主主義の国であり、日本語の腕前がおぼつかない特派員でさえ、情報の入手は可能である。だが、安倍晋三首相の統率力のもとで、明白な変化――正しい歴史から糊塗した歴史への転換――が生じている。日本の新興エリートが対立見解または批判に対処するのに苦しんでおり、この状況が外国メディアでつづく可能性が非常に大きいので、これは問題になりかねない。

日経新聞は、ドイツのアンゲラ・メルケル首相による1月の訪日について、同紙のドイツ特派員による論説を掲載した。記者はこう書いた――「メルケルの訪日は友好よりも対日批判に終わった。学識経験者らと脱原発を議論し、朝日新聞社を訪れ、首脳会談で歴史認識に言及した。民主党の岡田克也代表とも会った……友好のシンボルと呼べるのはせいぜいドイツ系企業の工場や二足歩行ロボットASIMO(アシモ)の視察などにとどまった」。

わたしが離れようとしている国は
わたしが20101月の当時
到着した国とは別物である

これは手厳しく思える。だが、たとえ言い分を受け入れたとしても…友好とはなんだろう? 友好とは、ただの合意だろうか? 友好とは、友が自分の害になりかねない方向転換をしているときに、みずからの信じることを語る能力ではないのだろうか? そして、メルケルの訪問は、単に批判的である以上に複雑だった。

わたし自身の立場をはっきりしておこう。5年たって、この国に寄せる、わたしの愛と好意は破れていない。じっさい、わたしがお会いした沢山のすてきな人たちのおかげで、わたしの思いはこれまで以上に強くなっている。わたしの日本の友だちとドイツにいる日本人読者のみなさんはたいがい、わたしの書いた記事に愛を感じるとおっしゃり、特に2011311日のできごとからはなおさらである。

残念なことに、日本の外務省のお役人はものごとをまったく違ったふうに見ており、日本のメディアの一部の人たちも同じように感じているようだ。わたしは彼らにとって――ドイツのメディアで働くわたしの仲間たちのたいがいと同じく――辛辣な批判を加えるだけの日本叩きだった。ベルリンの日経マンは、わたしたちのことを、二国間関係に「友好が損なわれている」のも彼らのせいだとおっしゃる。


変転する関係

フランクフルター·アルゲマイネ·ツァイトゥングは政治的に保守、経済的にリベラルであり、マーケットに主眼を置いている。それでも、安部首相の歴史修正主義に関する記事がいつも批判的であると主張する向きは正しい。ドイツでは、自由民主主義者にとって、侵略戦争であったものを否定することは考えられない。ドイツで日本の評判が損なわれているとすれば、メディア記事のせいではなく、ドイツの歴史修正主義嫌いのためなのだ。

たしの日本勤務は非常に違った問題ではじまった。2010年には、日本の民主党が政権を握っていた。わたしが取材した3代――鳩山、菅、野田――の政権はすべて、自分たちの政策を外国メディアに説明しようと努めていたし、わたしたちは度々、政治家が「わたしたちは、国を運営するのにもっと多くのことをなし、さらにうまくならなければならないとわかっています」という風にいうのを聞いた。

たとえば、外国人ジャーナリストらは意見交換のために岡田克也副総理によく招かれた。首相官邸で週例会合が開かれ、当局者たちは目下の問題について――多少なりとも率直に――議論する意欲があった。わたしたちは特定の問題について、政府の姿勢をためらうことなく批判していたが、当局者たちはみずからの立場を理解してもらおうと努めていた。

201212月の選挙のあと、即座に巻き返しにみまわれた。たとえば、フェースブックなど、首相のニュー・メディア好きにもかかわらず、彼の政権のどこにも率直さを評価する証拠がない。麻生太郎財務相は金輪際、外国人ジャーナリストに語ろうとしないし、巨額の国債残高について質問されても答えようとしない。

じっさい、エネルギー政策、アベノミクスのリスク、憲法改定、若年世代の機会、地方の人口減少…外国人特派員が官僚の論じるのを聞きたいことは山ほどある。しかし、政府代表の外国人記者と話す意欲は、ないに等しかった。それでも同時に、素晴らしき新世界を批判するものはだれでも、総理大臣に日本叩き呼ばわりされる。

素晴らしき新世界を
批判するものはだれでも
総理大臣に日本叩き呼ばわりされる

5年前に比べて、新しいこと、また考えられなかったことは、外務省による――直接的なものだけではなく、ドイツにいる新聞の論説委員に仕掛けられるものも含めた――攻撃に見舞われることだ。わたしが書いた安倍政権の歴史修正主義に批判的な記事が掲載されると、新聞の外交政策編集幹部が日本の在フランクフルト総領事の訪問を受け、「日本政府」の異議申立てを伝えられた。総領事は、中国がその記事を対日プロパガンダの材料に使ったと苦情をいった。

っと酷いことになった。冷え冷えとした90分間の面会で後ほど、記事のどの事実が間違っているか、わかるような情報を教えてほしいと編集幹部は総領事に頼んだが、糠に釘だった。「金が絡んでいると思うしかないですな」と、外交官はいって、わたしを侮辱し、編集幹部と新聞全体を侮辱した。彼はわたしの記事の切り抜きフォルダを取り出し、おそらくわたしがヴィザ申請の承認を受ける必要があって、親中国プロパガンダ記事を書かなければならないのだろうと同情心を開陳した。

わたしが? 中国に雇われたスパイ? 中国に行ったこともなければ、ヴィザを申請したことすらない。これが日本の目標を理解してもらうために新政権が採用した攻め手であるなら、やるべき仕事はどっさりある。もちろん、親中国の言いがかりは、わたしの編集幹部に功を奏しなかった。なにか効き目があったとすれば、わたしの報道記事の編集の切れ味がよくなった。

これまでの数年間、高圧的な姿勢が目立ってきた。まだ民主党が政権与党だった2012年のこと、わたしは韓国の旅に出かけ、元慰安婦に取材し、紛争中の島、竹島(韓国人にとっては、獨島〔独島・トクト〕)を訪問した。もちろん、ツアーは宣伝目的だったが、わたしにとって、自分の目で紛争の核心地を見る、またとないチャンスになった。わたしは外務省から食事と議論に呼ばれ、この島が日本領であると証明する数十ページの資料を受け取った。 

2014年には事情が変わってしまったようであり
外務官僚たちは批判的な報道を
公然と攻撃するように見受けられた

安倍政権に交代してからの2013年、わたしは、3人の慰安婦を相手にしたインタビューについての記事を書いたあと、またもや呼び出された。今回もランチの招待付きであり、やはりわたしが首相の考えを理解するのに役立つ資料をいただいた。

だが、2014年には事情が変わってしまったようであり、外務官僚たちは批判的な報道を公然と攻撃するように見受けられた。首相のナショナリズムが対中貿易におよぼす影響に関する記事を書いたあと、わたしは呼び出された。わたしが引用したのは公式統計だけであると告げると、先方は数字が間違っていると反論した。


わたしの惜別のメッセージ

総領事とわたしの編集幹部が叙事詩的な面会をしたときの2週間前、わたしはまたもや外務省の職員たちとランチを共にし、そのさい、わたしが「糊塗された歴史」といったことばを使っているとか、安部首相の国家主義的な傾向が「東アジアだけに限らず、日本を孤立させる」と考えているなどと抗議された。口調は凍りつくようであり、彼らの態度は、説明したり、納得させたりしようとするものではなく、怒りだった。なぜドイツのメディアが歴史修正主義に対して特に敏感なのか、わたしが説明しようとしても、だれ一人として聞く耳を持たなかった。

わたしは、外国人特派員に対する政府職員による昼食会の招待の数が増えているとか、第二次世界大戦に関する日本の見解を拡散するための予算が増額されているとか、あまりにも批判的にすぎると目された外国人特派員の上司たちを(もちろん、ビジネス・クラスで)招待するのが新しいトレンドであるとか、聞いている。だが、最高の手練手管とがさつな努力を尽くした政治宣伝にさらされた――そして、慣れっこになった――こういう編集員らには、えてして逆効果になるので、わたしなら、提案者たちが慎重に事を運ぶように忠告するだろう。わたしが中国から資金を受け取ったという総領事のこめんとについて正式に苦情を申し立てると、それは「誤解」だったといわれた。

こで、わたしの惜別のメッセージを告げておく――わたしの記者仲間の一部と違って、わたしは日本で報道の自由に対する脅迫を目にしていない。民主党政権の時期に比べて、多くの批判者の声が沈黙しているが、とにかく批判者はいる――そして、たぶん以前よりも増えている。

日本の政治エリートの仲間内意識、ならびに現在の政権指導者たちに外国メディアと公開討論をするリスクに賭ける能力が欠けていることが、ほんとうは報道の自由に影響しない。情報収集源は他にも沢山ある。だが、このことは確かに、政府が――民主主義国において――政策を国民に対して説明しなければならないことを、ほんの少ししか理解していないことを明らかにしている。世界に対してもそうだ。

英語で話そうとする、あるいは外国人ジャーナリストに情報を提供しようとするスタッフを、自民党は広報本部に抱えていないと記者仲間たちが告げても、もはやわたしは変だと驚かない。現在の総理大臣がたっぷりと旅慣れていると自慢するものの、外国特派員協会でわたしたちに話しかけるために小さな旅をすることを辞退してきたという事実にも驚かない。じっさい、外国の報道機関に対してだけでなく、自国民に対しても政府が秘密主義で押し通すありさまだけが、わたしを悲しくさせる。

英語で話そうとするスタッフを
自民党は広報本部に抱えていないと
記者仲間たちが告げても
もはやわたしは変だと驚かない

これまでの5年間、わたしは日本列島を北へ南へと旅してきたが、北海道から九州までどこへ行っても――東京と違って――わたしの記事が日本に敵対的だとして、わたしを責める人は一人もいなかった。その反対に、どこへ行っても、わたしは面白い話と楽しい人たちに恵まれた。日本は、いまでも世界有数の裕福で開かれた国である。日本は外国特派員にとって、住むにも、報道するにも愉快な国である。

わたしが希望するのは、外国人ジャーナリストが――さらにもっと重要なことに、日本の国民が――胸の内を語りつづけることである。わたしは、人の和が抑圧や無知によって到来するはずがなく、新に開かれた健全な民主主義の国が、わたしのすばらしい、これまで5年間のふるさとにふさわしい目標であると信じている。

【筆者】

カーストン・ガーミスCarsten Germis2010年から2015年まで、フランクフルター·アルゲマイネ·ツァイトゥングの東京特派員、日本外国特派員協会の理事だった。


Published in: April 2015

#ECOLOGIST【評論】フクシマをよそに…日本の「原子力ムラ」が復活

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フクシマをよそに…日本の「原発ムラ」が復活
After Fukushima:
Japan's 'nuclear village' is back in charge

ジム・グリーン Jim Green 2015328

いま、口を塞がれているのは、日本の報道機関である。2011413日、放射性物質を吹き出している福島第一原発から約40キロ、避難準備中の飯舘村の住民。
Photo: Kyodo News via Irish Typepad on Flickr (CC BY-NC-ND 2.0).

原子力に反対する国民世論はまだ強いが、安倍晋三の右翼政権は薄紙を剥ぐように、日本で悪名高い「原発ムラ」の主導権を――厳罰を課す報道監視法制、巨額の無利子融資、フクシマの「教訓」をすべてなきものにする決定で後押しして――回復させたと、ジム・グリーンは書く。さらなる大事故は避けられないのだろうか?

「フクシマ後の急展開として
核惨事の教訓に学び
改善がなされた

「だが、この歴史的な惨事の真の教訓とは
日本の核産業が破滅的な失策から
なにも学ばなかったことである」


原子炉の再稼働(また、より全般的には核産業)に反対する国民世論は、日本でいくらかの影響力を保っている。

日本の「運転可能」である原子炉48基のうち、最も老朽化した5基から7基は、他の原子炉の再稼働に反対する世論をなだめるために犠牲になりそうであり、地域の抵抗によって、他にもいくつかの原子炉が恒久的に停止したままになる結果となるかもしれない。

現在、日本の「運転可能」である48基の原子炉はすべて停止しており――福島第一原子力発電所の6基はリストから抹消されている。

しかし、フクシマ核惨事を招いた堕落と結託の慣行がゆっくりとだが、着実に再浮上している。「原発ムラ」が主導権を回復したのである。

エネルギー政策

民主党政権はフクシマ核事故を受けて、エネルギー政策の見直しに着手した*。核批判派、賛成派、中立派をほぼ同数で揃えた委員会の審議を終えてからの20126月、原子炉による発電量の割合を、それぞれ0%、15%、2025%に想定する3種類のシナリオが示された。

これらのシナリオが広く全国規模の公開討論に付され、その結果、疑う余地ない国民の大多数が核の段階的廃絶を支持していることが示された。国民的な討論が決め手になって、民主党政権は段階的廃絶の支持に踏み切った。

201212月総選挙のあと、返り咲いた自由民主党の政権は、原子力を段階的に廃絶する民主党の目標を拒否した。自民党政権はまた、政策を立案する委員会を組み替え、核批判派委員の数を抜本的に減らした。また委員会それ自体も、エネルギー基本計画草案の策定作業の脇に追いやられた。

これは手続きの観点から、ほぼ20年間の逆戻り」と、日本のエネルギー政策策定手続きを研究するフィリップ・ホワイト博士はいう*(前出)

「もんじゅ高速増殖炉で199512月にナトリウムが漏れ、火災が発生したのをきっかけに、国民参加と情報開示に向けた歩みが大きく前進した」と、ホワイト博士は書いた。

「国民参加が誠実に実現されなかったにしても、少なくともリップ・サービスは振りまかれた。現在の政権は口先だけでも約束する必要もないと決めてかかっているようである」

内閣が20144月に承認したエネルギー基本計画は、核エネルギー依存は「可能な範囲」で削減すると謳っており、幅広い国民の反核世論にとって、無意味なたわごとに他ならない。

ジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)代表でエネルギー計画諮問委員会[総合資源エネルギー調査会・基本問題委員会]から外されたうちのひとり、枝廣淳子は201411月、次のように述べている――

「現在の日本には、3.11などなかったかのように職務にあたっている政府官僚や委員がいます。彼らはその前の3040年間にわたって行ってきたように、『原発に力を注ぎ』続けているのです。

「悪名高い、いわゆる「原子力ムラ」と呼ばれるものが存在しています。これは原子力担当の政府官僚、業界、学術界のグループで、大きな力を持っています。そして、現在のところ何も変わっていません。原子力の政策と運営を監督する原子力規制委員会の現委員長は、原子力ムラのメンバーだという声もあります」*

「事故は必ずまた起こります」

内閣官房「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」の元委員長、畑中洋太郎は最近、フクシマ以前の無頓着な姿勢が再来していると朝日新聞に語っている*

東京大学の機械工学名誉教授である畑中は、フクシマ惨事の原因を究明する「科学的な検証がおこなわれていない」という。

政府事故調報告は核惨事の原因を究明する努力の継続を政府に求めたが、その勧告は「ほとんどなにも」最近の政府の措置に反映されていないと畑中は述べた。

畑中はさらに、フクシマ後に規制を厳しくした核安全基準を適用しているが、この「ハードルを上げただけで…状況は事故前と変わらないと思う」という。

「(政府の行動を)ちゃんと見る組織も動いていないように思える。安全評価を監視しても、想定外のことが常にあり、事故は必ずまた起こる」と、畑村は語った。

畑村は避難計画の妥当性を疑い、フクシマ事故を完全に反映せずにまとめられているという――「策定された避難計画にもとづいて、原発ごとの30キロ圏内の住民全員を対象とした避難訓練を実施するなり、じゅうぶんな準備が整って初めて、原子炉の再稼働を宣言すべきなのです」。

原子力委員会

民主党政権は20129月、内閣府原子力委員会(JAEC)の在り方見直しを「その廃絶または再編に留意して」実施すると約束した。政府は見直しのための有識者会議を設置し、会議は201212月に『原子力委員会の在り方見直しについて』報告を公表した。自民党が政権奪還を果たすと、新政権は報告を棚上げし*、新たな見直しに着手した。

二つ目の見直し案は、原子力委員会がもはや包括的な原子力政策大綱の策定を担当することはないと勧告していた。ところが、ある自民党の委員会が、原子力政策大綱と実質的に同等な意味合いをもつ原子力政策の取りまとめを原子力委員会に委ねることに決めたと伝えられている。

二つの見直し案が出て、変化はほとんどなかった――原子力委員会は廃絶からほど遠く、原子力政策を策定する役割を引き続き保持することになった。自民党はそのうえ、原子力の推進機関である原子力委員会が、核廃棄物最終処分場の選定にさいして「第三者機関」として行動できるようにすることを提案した。

2月に開かれた経産省パネル会合に出席した有識者の一部は、原子力委員会の独立性に疑問を表明した*

東電に対する政府の巨額資金援助

東京電力の国有化、あるいは事業部門ごとの企業分割を要求する声は大きいが、自民党政権は東京電力を擁護し、支援してきた。政府はまた、東京電力に対する資金援助を大幅に拡充した。

たとえば、政府は20141月、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が東京電力に供与する無利子融資の上限額を5兆円から9兆円に引き上げることを承認した*

政府はまた、福島第一原発敷地外の除染作業で発生する廃棄物の中間貯蔵施設の整備に要する推計11000億円など、以前は東電に支払いを求められていたフクシマ事故の処理費の一部を肩代わりしようとしている*(前出)

政府はまた、「電気事業会計規則等の一部を改正する省令」を施行し、「原子力発電所の廃炉に係る料金」を電気料金に上乗せする期間を原発の閉鎖後10年間までに延長した。この省令改定によって、東京電力が福島第一原発の廃炉作業のために購入する追加的な機器の減価償却費を電気料金に上乗せできるようにもなった。

原子力問題調査特別委員会

自民党政権による原発ムラ再編の手始めの一例として、原子力行政を監視するものとして、2013年に自民党政権が設置した[衆議院]原子力問題調査特別委員会を挙げられる*

その委員の過半数は自民党議員だった。自民党・国会対策委員会の幹部は、「われわれは反原発議員を排除した」と発言した。自民党の国会議員であり、反原発に賛同する国会議員の超党派グループに加わる河野太郎は、委員会に参加することを望んだが、相手にされなかった。この特別委員会は皮肉なことに、国会事故調の提言にもとづいて設置されたものだが、提言がいましめていた冷笑的な縁故主義めいたものを招く結果になった。

メディアの検閲と威嚇

日本はフクシマ核惨事以降、国境なき記者団「報道の自由」世界ランキング*の順位を2010年の第11位から最近の61位へと着実に下げている**

* Reporters Without Borders: 2015 World Press Freedom Index
** The Wall Street Journal, Feb 13, 2015: Japan Slips in Press Freedom Ranking

ジャーナリストが「犯罪者訴追」と名誉毀損訴訟で脅されており、日本の「国家秘密」法*[リンク切れ]が日本の核産業に関する調査報道をやばい仕事にしている。201412月に施行された特定秘密保護法のもとで、政府は――広範に指定される――政府の秘密を漏らした者を10年の刑務所送りにできる**(前出)

国境なき記者団のベンジャミン・イスマイルは20143月、次のように書いた――

「われわれが2012年時点で恐れていたように、情報をやりとりする自由が、この核惨事の余波を処理する自分たちなりの対策に関する報道を抑えようとする『原発ムラ』と政府によって制限されつづけている。

「その長期的影響はいま浮上しはじめたばかりであり、健康リスクと公衆の健康問題はかつてないほど重要である」

国境なき記者団は20143月、次のように声明した*[リンク切れ]――

「日本と外国の記者たちがそろって、(フクシマ核)惨事とその影響を伝えようとする独立報道を抑えるために当局者らが用いた、さまざまなやりくちを国境なき記者団に書いてよこした。記者たちは反原発デモに関する報道を妨げられ、原発周辺に指定された『レッドゾーン』に入域すれば、刑事告発すると脅された。

「彼らが諜報機関によって尋問され、脅迫にさらされることさえあった」

教訓が学ばれ…早々と忘れ去られた

日本の原発ムラの腐敗と共謀行為は、フクシマ核惨事以前にも、おびただしい数の事故を招いていた*

Friends of the Earth (FoE) Australia;
Japan's nuclear scandals and the Fukushima disaster

そして、日本の原発ムラの腐敗と結託は、フクシマ核惨事そのものの根本的な原因だった。この点に関して、国会事故調は鈍感になるわけにはいかなかった――「事故は、政府、規制機関、東京電力の結託、そしてこれらの当事者による管理の欠如の結果である」。

フクシマ後の急展開として、核惨事の教訓に学び、改善がなされた。だが、この歴史的な惨事の真の教訓とは――少なくとも日本の――核産業が破滅的な失策から、なにも学ばなかったことである。

畑中洋太郎がいうように、事故は必ずまた起こる。

【筆者】


ジム・グリーン博士Dr Jim Greenは、地球の友・オーストラリアの全国核キャンペーンの世話人、ニュークリア・モニター“Nuclear Monitor”ニュースレター編集者であり、本稿の初出は同紙(2015319日付け第800号)。


小沢一郎氏「安倍首相の稚拙な辺野古対応」(米誌ディプロマット寄稿記事)

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THE DIPLOMAT アジア太平洋評論誌『ディプロマット』



安倍首相の稚拙な辺野古対応

首相の米軍基地移設対応は、長い目で見て、日本に高くつくだろう。

小沢一郎 201543
Image Credit: newsonline via Flickr.com
安倍政権は、米海兵隊の普天間航空基地を沖縄県内の名護市辺野古に移設する動きの一環として海底掘削調査を再開するのに、強引な手法に頼っている。海上保安庁は地元住民の排除に行き過ぎた手荒な戦術を用いており、キャンプ・シュワブで働く警備員らが移設に抗議する市民らを拘束する事例もあった。安倍政権はこの重要な政治問題に対して、高圧的な政治戦術を繰り返し用いており、これは極めて危険である。

人びとの意志を尊重し、民意にもとづく政治をすることが、民主主義の基本原則である。もちろん、世論が国民と国のために正しいことを示す最善の指標では必ずしもなく、政治家は時には、国民と国のために多数意見に逆らって行動しなければならないかもしれない。これが議会制民主主義に付きものなのである。

したがって、政治家は常に多数派の支持する特定の行動をすべきであるとは断定できない。そうはいっても、安倍と彼の政権がこの件で用いる高圧的な手法が日本国民の利益にかなっているとは、とてもいえない。施設を普天間から辺野古に無理矢理に移設しても、沖縄県民にも、国民全体にも利益にならない。だが、そうすることが日本と国民の評判に大きな汚点を残すだろう。

日本政府は、普天間から辺野古への施設の移転に問題があれば、日米関係に悪影響がおよぶだろうと主張している。わたしは、これは間違っていると信じている。もちろん、中国の軍事的拡張に関して米国が感じている留保は、日本と近隣諸国で共有されている。だからといって、この理由で、米軍の沖縄駐留が必要であるわけではない。

しかし、米国は目下、アジアだけでなく、ヨーロッパからも前線部隊を撤収させている。これは、米国が軍事戦略を、常時部隊駐留から、有事に緊急即応部隊を動員する手法に転換したからである。沖縄に駐留していた海兵隊のグアムとその他への再配置は、この戦略の一環であり、日本、あるいは沖縄に配慮して無邪気に実行されているわけではない。

わたしは米国の軍事戦略の転換を考えると、辺野古に普天間の代替施設を造ったり、滑走路を建設したりする必要があるとは信じない。だが、滑走路がほんとうに必要なら、沖縄でも本州でも代わりになるのに適した土地がある。したがって、安倍のふるまいがどんな形であれ、わたしは土地埋め立てと辺野古での工事の準備を強行することに賛同できない。

わたしはまた、在日米軍基地の74パーセントを抱えている沖縄の住民の反対を踏みつぶして、辺野古の滑走路建設を強行して、米国の利益になるとも信じない。滑走路が軍事的に正当化されても、美しいサンゴが栄え、マナティと類縁の希少な海棲哺乳類、ジュゴンの北限の自然生息地である澄み切った海を埋め立てる結果になるのに他ならない。われわれは力を尽くして、沖縄の貴重な自然環境を守るべきである。

それでも安倍政権が辺野古移設を実現すると意を決しているなら、まず地元の行政当局と万全な協議を尽くすべきである。沖縄県民によって正当に選出された県知事は、首相との面会を要請している。単に見解が異なっているという理由で、安倍が面会を拒んでいるのは、常軌を逸して子どもじみている。道理をわきまえた議論ができるはずだとは考えにくくしているのは、総理大臣にふさわしくない言動であり、幼稚なふるまいなのだ。

仲井眞弘和・前知事が埋め立てを認可したかもしれないが、沖縄県民はその後の県知事選挙の結果をもって、この上なく明確な「No」を計画に突きつけたのである。翁長雄志・現知事は、日本政府との議論を再開しようとしており、沖縄県民の意志にそって行動している。安倍が翁長とのかかわりを拒んでいるのは、民主的な政治手続きを否定している。日本政府がいましなければならない義務は、まず沖縄の民意を聴きとることであり、そのうえで、問題解決のための議論を米国とはじめることである。

こうした議論の結果、米軍が沖縄から撤退することになれば、日本自体が自国防衛の責任を担い、隙間を埋める方法を決めなければならない。安倍政権はこのような論争を避けたいと思い、単純に米国の要求にそうことを好んでいる。これもまた、政治手続きの放棄である。

沖縄は、戦略と地政学の両面で極めて重要である。米軍が撤退するのであれば、日本が負担を肩代わりする方法について、日本国民のすべてが真剣に考えるべきである。日本国民は、米国がやるべきことをやると当てにするのではなく、負担をわかちあい、責任を担うべきである。

わたしは、沖縄の駐留米軍を可能なかぎりの最小限に削減すべきであると信じている。日本が責任分担に取り組む強い決意を示せば、米国は議論に応じるとわたしは信じている。わたしは、辺野古移設が計画どおりに実現しなければ、ただちに日米同盟に重大な影響がおよぶという意見にくみしない。

それどころか、普天間基地の移設に関して、日本政府が高圧的な戦術をつづければ、反感と不信を招くだけであり、反対派を硬化させる。昔ながらの格言「急がばまわれ」は、この場合でも間違っていない。時間がかかるにしても、安倍は徹底的な議論を尽くすべきだ。無分別に突き進めば、失敗に終わるだけであり、日米関係におよぼす影響をさらに悪化させるだけである。首相と内閣は、もっと誠実な手法を採るべきであり、もっと広範な視野に立って考えるべきである。

【筆者】

小沢一郎は日本の政治家、生活の党と山本太郎となかまたち代表。

【メディア】

ディプロマットは、初のアジア太平洋向け国際時事問題雑誌である。

ディプロマットは2002年に創刊し、アジアと世界のできごとの良質な分析と評論を提供してきた。ディプロマットは、各地の時事問題の深層を取材し、評論界、政界、学界の影響力のある人びとに読まれている。

ディプロマットの報道分野――

•  アジア太平洋の地政学的動向
• 
防衛と諜報
• 
環境、人間の安全保障、開発
• 
アート、社会のトレンド、大衆文化

【関連報道記事】




2015413 06:13

【平安名純代・米国特約記者】生活の党の小沢一郎代表は3日、アジア太平洋地域の政治・安保問題専門の米オンライン誌「ザ・ディプロマット」に論文を寄稿した。名護市辺野古の新基地建設計画を強行する安倍晋三政権を批判。在沖米海兵隊のグアム移転計画は、沖縄の負担軽減ではなく、米軍事戦略の変化を反映した結果だとし、新基地の必要性を否定。日米両政府に計画の再考を促した。

小沢氏は、辺野古沖で反対活動を展開する住民らに海上保安庁が過剰対応を繰り返し、緊張が高まる沖縄の現状に警鐘を鳴らした。

#BBC「小型ロボットがフクシマ格納容器内部を撮影」…国内メディア報道と比較する

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ロボットがフクシマの原子炉内部の状況を撮影
Robot films scene in Japan's Fukushima nuclear plant

2015415

福島第一原子力発電所の原子炉[格納容器]の内部のようすを初めて撮影した小型ロボットが、作業を開始してから、たった3時間で機能を停止した。

この6基の原子炉を備えた原子力発電所は、2011311日の地震と津波が原子炉冷却システムを破壊したあと、深刻な損傷をこうむり、メルトダウンにいたって、放射能を放出した。

ルーパート・ウィングフィールド・ヘイズが東京から伝える。


0:00

このザラついた映像は、4年前の三重メルトダウン惨事からこのかた、だれも見たことがなかったフクシマの原子炉[格納容器]のひとつの内部の光景です。この場所の下にある暗闇のどこかに溶けた核燃料の残骸があります。ビデオは、この仕事のために特別の開発された小型ロボットによって撮影されました。

0:21

画面の下のほうに放射線レベルが表示されています。放射線量が1時間あたり24シーベルトに達する場所もあり、これでは数秒間だけの被曝で人の致死量になるでしょう。

0:35

この小型ロボットは、このような極限環境のなかで10時間耐えられる設計になっていました。

0:40

先週の金曜日(410日)、ロボットは原子炉のなかへ降ろされました。その後、ロボットは形態を変えて前進し、所々で停まって撮影しました。

0:51

だが、投入後3時間で機能を停止しました。なぜか、はっきりしませんが、おそらく高レベルの放射線が原因なのでしょう。

1:02

この探査は、溶け落ちた炉心を見つけだし、最終的に原子炉を解体する工程を見据えた第1段階に位置づけられていました。

1:10

廃炉完了までおよそ40年かかると見積もられています。しかし、今日またもや見せつけられたように、それを可能にするテクノロジーはまだ開発されていません

1:22

BCCのルーパート・ウィングフィールド・ヘイズが東京からお伝えしました。



#BBC「日本の裁判所、高浜原発の再稼働を差し止め」

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BBC NEWS Asia



日本の裁判所、高浜原発の再稼働を差し止め
Japan court bars restart of Takahama nuclear reactors

2015414日 Asia

裁判所は原発が大地震に備えがないと認定した
日本の裁判所が本州西部の高浜市の住民が提起した安全性に対する懸念に応えて、高浜原発の原子炉2基の再稼働を差し止めた。

この原発は国の核規制機関による認可をすでに得ていた。

しかし、地元住民らはこの原発が強い地震に耐えられないと主張して、高浜市が所在する福島県の裁判所に再稼働の差し止めを申し立てた。

2011年のフクシマ核惨事を受けて、日本の商業用原子炉48基のすべてが停止したままである。

BBCの東京特派員、ルーパート・ウィングフィールド・ヘイズは、この差し止め決定が安倍晋三首相による原子炉再稼働の推進政策にとって厳しい打撃になるという。

安倍首相は、原発を稼働しなければ、電力の不足分を埋め合わせるために、日本が高価な化石燃料を輸入することを余儀なくされ、不振にあえぐ経済の痛手になると述べた。

高浜原発の運営会社、関西電力は高浜原発がフクシマ後に原子力規制庁によって導入されたハードルの高い安全基準に適合しているという。

だが、裁判所は差し止めを申し立てた地元住民9名の意見を採用し、関西電力はあまりにも楽観的であり、[原発が立地する]一帯に大地震は起きないと仮定していると認定したと国営放送NHKが報じた。

裁判所はまた、原子力規制委員会の安全基準が「合理性を欠いている」と批判した。



関西電力は差し止め決定に対して抗告を考えると述べた。

大地震と津波が引き起こした事故の以前には、日本の電力の約30%が原子力発電によるものだった。


目下、再稼働が認可されている原子炉は――はるか南の鹿児島県にある――2基だけである。この2基は今年中に稼働すると予測されているが、やはり裁判所で係争中である。



【英紙ガーディアン】2015年「持続可能性を考える地方行政府」世界会議ルポ~100%再生可能エネルギーをめざす都市

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The Guardian > Renewable energy
ヴァンクーヴァー市は再生可能エネルギー100%をめざす

カナダの60万人都市が先陣を切って、20年以内に電力、交通・運輸、冷暖房需要を再生可能エネルギーだけで賄うことをめざすと発表。

ヴァンクーヴァー副市長、アンドレア・ライマー「切迫した倫理的要請もございますが、グリーンな都市になることは夢のような経済事例になります」

Photograph: George Rose/Getty Images
ソウル支局 スティーヴン・リーヒ― Stephen Leahy

2015410

ヴァンクーヴァーは再生可能エネルギー100%を約束する最先端都市になった。カナダ西岸に位置する60万人都市は、電力のみならず、冷暖房と交通・運輸のためにもグリーンなエネルギー源だけを使うことをめざす。

ヴァンクーヴァーがこの公約を表明した、3年ごとに開催される持続可能性を考える地方自治体サミット、2015ICLEI世界会議(The ICLEI World Congress 2015)において、韓国ソウル市の元淳(パク・ウォンスン)市長は、都会と市街化区域は世界CO2排出量の7075%分に寄与しており、「気候に対する現実的な行動をはじめなければならない」のは、こうした地域であると発言した。

「わたしたちは、気候変動から世界を救うために結集した緑の潮流なのです」と、朴は100人以上の市長を含む15,000人近くの参加者に語りかけた。

ヴァンクーヴァーのアンドレア・ライマーはガーディアン紙に、「切迫した倫理的要請もございますが、グリーンな都市になることは夢のような経済事例になります」と語った。100%達成目標は冷暖房部門で2030年から2035年、交通・運輸部門で2040年から2050年に設定されているようである。連邦政府と州政府の支援があれば、実現が早まるだろう。

市民と実業界はクリーンでグリーンな市街地で暮らすこと、働くことを望んでいるとライマーはいい、100%転換技術の開発者が21世紀の覇者になると付け加えた。

ヴァンクーヴァーは、100%再生可能エネルギー電力を数年内に達成できるが、冷暖房と交通・運輸の場合、時間がもっとかかるだろう。カナダがこれまでの10年間、「環境に無責任な世界有数の国家政府」であるという事実はさておいて、市の大望は2020年までに世界一のグリーン都市になることであるとライマーはいった。

朴市長は、人口1100万人であり、その人口が急速に膨張しているソウル市は、2018年までに40,000セットのソーラー・パネルを一般家庭に普及させ、15,000台の電気自動車を走らせるなどして、エネルギー使用量を削減し、再生可能エネルギー発電量を拡大すると発表した。同市は2030年までにCO2排出量を40%削減すると期待されている。

カリフォルニア州のサンディエゴとサンフランシスコ、オーストラリアのシドニー、コペンハーゲンなど、50以上の都市が、100%再生可能エネルギー達成をめざす途上にあると発表した。その一部は2020年、その他は2030年から2035年の達成を目標にしている。

アイスランドのレイキャヴィックなど、一部の都市は、すでに電力と熱源でこの目標を実現している。コスタリカは今年、75日間連続して全国的に再生可能エネルギーで電力需要をまかなっている。

世界100%再生可能エネルギー連合(Global 100% RE Alliance)――化石燃料からの転換を推進する団体の国際連合――の世話人、アンナ・ライドライターは、「わたしたちはほんの3年前、100%再生可能エネルギーは実現できるといっていましたが、いま沢山の都市と地域がそれを実現しています」という。

大手電力会社、あるいはエネルギー企業が牛耳るなら、気候変動に対処する企ての足手まといになるだろうとライドライターは述べた。「再生可能エネルギーの事業モデルはまったく別物であり、企業ではなく、人びとの利益になるべきものなのです」

南相馬市立総合病院に脳卒中センター建設へ…発症原因は「長期間の避難生活」?

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南相馬に脳卒中センター建設へ

南相馬市にある市立総合病院に脳血管疾患に迅速に対応するための「脳卒中センター」が建設されることになり、16日、関係者が建設予定地で工事の安全を祈願しました。

「南相馬市立総合病院」は、相双地域の医療の拠点となっている病院の1つで、震災と原発事故後、長引く避難生活によるストレスなどが原因と見られる脳血管疾患の患者が増えていることから、迅速に対応するために「脳卒中センター」を整備する計画です。…

建設される脳卒中センターは、総工費48億円、地上6階建てで、延べ床面積はおよそ9200平方メートル、あわせて100床ある脳神経外科とリハビリテーションの2つの病棟が設けられるほか、屋上には救急搬送や災害時にも対応できるようヘリポートも整備される計画です。

浜通り北部には脳血管疾患の患者に対応できるこうした大規模な施設はなく、病院側は、地域全体の医療を担う場所にしたいとしています。…

0416日 2114



【参考人】南相馬市立総合病院副院長、広島大学客員教授:及川友好君

○及川参考人 私自身は脳神経外科医でありますので、脳卒中の発症率を、東京大学の国際保健政策学教室と一緒になって今データを集めているところなんですが、これはまだ暫定的なデータで、確定的なものではないんですが、ただし、恐ろしいデータが出ています。我々の地域で脳卒中発症率が、六十五歳以上で約一・四倍、それどころか、三十五歳から六十四歳の壮年層で三・四倍まで上がっています。こういう非常に恐ろしいデータが今出てきていますね。これらのデータをきちんと解析しながら発表していくのも我々の仕事だと思っているんです。

○柿沢未途委員 及川副院長に。先ほど、脳卒中が五十代、六十代は一・四倍、三十代で三・四倍、これはやはりちょっと衝撃的な数字だと思うんです。ストレスがあったり、さまざまなこれまでの生活の困難が影響しているのかもしれませんし、また、場合によっては放射線がもたらす何らかの影響があるのかもしれません

 そういう意味で、この状況を、もちろん学問的に分析はまだ十分できているのかどうかわかりませんけれども、どういうふうに背景を見ておられるか。このことについて御見解を伺って、一つずつお答えいただいて終わりにしたいと思います。

○及川参考人 及川でございます。

 まず最初に、正確なところを、先ほどの柿沢先生のお話はちょっと違いますので。

 六十五歳以上の高齢者において脳卒中発症率が一・六二倍、三十五歳から六十四歳までの壮年者で三・四三倍、震災前と比べて発症率が上がっております。

 これは、レセプトデータといいまして、病院を訪れた人たちのレセプトデータから拾い上げた数字です。補正をかけなければいけませんから、これが最終的なデータではありませんが、実際に臨床、医療をしておりますと、確かに、脳卒中の患者さんが多くなったというような印象を受けております。後日、きちんとしたデータを出したいと思います。

 二つ目の御質問ですが、これらに対する原因は何だということなんですが、脳卒中の発症率の基本的な考え方は、基礎疾患がございます。高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、喫煙、アルコール、こういうものが脳卒中を有意に発症させる原因となっております。とすれば、我々の地域においてこれらのことが有意に悪化しているということが予測されます。

 これはまだデータは持っておりません、今後検討の課題でございますが、例えば、薬、服薬がきちんとできなくなって高血圧が悪化する。食生活の変化によって糖尿病や高脂血症の症状が悪化する。避難所または仮設住宅に入っていることによって、アルコール、つまりアルコール中毒ですね、依存症の患者さんがふえる。そういう方たちが、むしろ若年層ですね、壮年層、三十五歳から六十四歳の働き盛りの年齢層に起こっているのではないかということが十分に示唆されるデータだと思います。



 南相馬市立総含病院 脳卒中センター建設基本計画(要約版)pdf
基本理念
脳卒中の診療と研究を通して、最善の予防、診断及び治療の方法を確立して地域住民の健康福祉の増進に寄与するとともに、医学の向上に貢献する。人道を尊び、地域の方とともに良質な医療を目指す。

基本方針
脳卒中センターにおいて特に強化する機能

(1)        
相双地区の医療復興の拠点となるべく、積極的に政策医療 (脳血管疾患及び救急医療)に取り組み、脳卒中死亡率を激減させる。

(2)        
相双地区市民に積極的に脳卒中啓蒙活動を行い、脳卒中発生率の低減に努める。

(3)        
住みなれた地域の中で安心して暮らせるよう、地域医療支援病院として他の医療機関と積極的に連携し、地域医療体制の充実を図る( 1)

(4)        
特に福島県立医科大学、東北大学から御支援を頂けるよう両大学との協力関係を深め、人的交流、医療相談、医療教育の連携を進める。

(5)        
災害拠点病院として災害時に被災者に対する救急治療スペースの確保、被災者受入れ機能に配慮した施設の整備に努める。また、災害時に「救護所、避難所に出向き診療活動」を行う。

(6)        
経営の健全化・安定性を確立する。
( 1)相双医療圏の脳血管疾患救急医療構想



福島県南相馬市は6日、市立総合病院脳卒中センター建設工事(建築・設備一括)を一般競争入札した結果、43億3600万円(税別)で佐藤工業・庄司建設工業JVを落札候補者に決めた。事後審査を実施した上で落札者を正式決定する。…
 規模は、S造地上6階建て9158㎡。耐震構造を採用する。ベッド数は100床を想定。1階は救急部や外来室、2階はリハビリテーション室など、3階はリハビリ病棟、4階は脳神経外科病棟、5階は機械室、6階はヘリポートを設ける。…





震災で需要が増加、医療提供が追い付かない◆Vol.3
「東日本大震災から4年」病院見学ツアーに同行
2015315日 成相通子(m3.com編集部)

全国の看護師を集めて、福島県の浜通り地域の病院を見学するバスツアーの旅では、今年度初めて、昨年3年半ぶりに全線開通した国道6号を通り、「帰還困難区域」を通過した。帰還困難区域は、年間の放射線量50ミリシーベルトを超え、住民が長期にわたって帰宅できない区域で、バスガイドから事前に「窓を開けないように」とのお知らせがあった。バスの窓からは、朽ち果てた家々と道路わきに並ぶ除染廃棄物が入った黒い「フレコンバッグ」と呼ばれる袋が見えた。


「脳卒中センター」の設立

 相双地区は、もともとの医療者不足に加え、原発事故による看護師の避難が打撃を与えた。その一方で、受療率の高い高齢者人口の増加や、長期の避難所生活による脳梗塞、脳卒中の増加が指摘されており、医療の需給バランスの悪化に拍車がかかっている。



英紙インディペンデント「フランスの核プロジェクトの欠陥が英国の核戦略メルトダウンに波及するドミノ倒し」

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フランスの核プロジェクトの欠陥が
英国の核戦略メルトダウンに波及するドミノ倒し

欠陥はまた、ヒンクリー・プロジェクト経費140億ポンド(26700億円)の一部を引き受けることになっていた中国の国営投資機関を遠ざけるかもしれない。

ジョン・リッチフィールドJOHN LICHFIELD 

2015417日金曜日/パリ


今後10年にわたり英国の「明かりを灯しつづける」デイヴィッド・キャメロンの戦略の核心になっているフランスの原子力発電所で、「非常に深刻」な欠陥が露見した。

サマセット(イングランド南西部の地域)のヒンクリー・ポイントで計画されている原子炉2基は、ノルマンディーの同じEPR(ヨーロッパ型加圧水型炉)発電所の建設で破局的惨事を招きかねない過誤が露見し、疑問視されている。


フランス原子力安全局の局長、ピエール=フランク・シュヴェは、「これは深刻な欠陥、原子炉の肝心な部分にかかわっていますので、非常に深刻な欠陥です」といった。


シェルブール近郊フラマンヴィルの新しい画期的な原子炉を囲う高さ15メートルの安全密閉容器、つまり「圧力容器」に使われている鋼材の品質に対して、2度目の検査が命じられた。鋼材が欠陥品であると判明すれば、ERP原型炉の完成は――すでに工程が遅れ、3倍の予算超過になっているが――数年間は遅れることになるかもしれない。


シュヴェ氏は、ヒンクリー・ポイント原発用に設計され、「すでに製造済み」の同じ圧力容器の鋼材にも同じ製造技術が使われていると明かした。



グリーンピース・フランスのヤニック・ルースレは、ノルマンディーの原型炉がこうむっている最近の問題が「EPR計画に対する明らかなトドメの一撃」であるという。


この欠陥は、2023年までにヒンクリーで2基のEPR炉、英国サフォークのサイズウェルで3基目を建造することになっているフランス国有の核建設企業、アレヴァのすでに脆弱な財政を傾かせるかもしれない。それはまた、60年間にわたり英国のエネルギー需要の6パーセントを賄うと目論まれているヒンクリー・プロジェクトの経費26700億円の一部を引き受けることになっていた中国国営の投資機関を遠ざけるかもしれない。


ヒンクリーに対する「投資」の最終決定は、数回も遅れに遅れていたが、6月におこなわれると予想されている。フランスのマニュエル・ヴァルス首相は417日に緊急会議を招集し、この欠陥がフランスの――世界最大手――核建設企業にもたらす脅威に関して協議した。


マンチェスター市議会議員であり、核廃絶自治体連合の議長、マーク・ハケットは、「これは、英国における原子力発電所新設の推進派に対する痛烈な一撃になります。たぶん中国の支援者を怖じけさせるでしょう。わたしが博徒なら、ヒンクリー・ポイントにできない方に賭けるでしょう」と語った。


グリーンピース・フランスのヤニック・ルースレは、ノルマンディーの原型炉がこうむっている最近の問題が「EPR計画に対する明らかなトドメの一撃」であるという。「フランス自体が建設工事を完成できないのに、どこの外国人顧客がこの原子炉を買いたいというのでしょう?」と、彼は問う。


英国だけでなく、米国と中国もフランスからヨーロッパ型加圧水原子炉の――安全性と効率性を増強したとされる――新世代版を購入する手続きを進めている。アレヴァと、ヒンクリー・ポイント原発を所有・運営することになっているフランス電力庁(EDF)のどちらも、詳しいコメントを拒否した。

問題の建設現場


EDFは、「鋼鉄製格納容器のさらなる検査」を可及的速やかに実施するといった。その間にも、フラマンヴィルの85億ユーロ(1900億円)プロジェクト(当初見積もり30億ユーロ)の他の作業をつづけるとEDFはいう。


フランス原子力安全局(ASN)局長、シェヴェ氏は1週間前に初めて欠陥を明かした。彼は昨日、さらに詳細なコメントを公表し、EPR6基の――ヒンクリー・ポイント向け出荷分も含む――「格納容器」の鋼材が不正確に製造されていたことが判明したと明かした。


すでにフラマンヴィル原発に設置された圧力容器を12月に検査した結果、格納容器の上部と底辺の鋼材に含まれる炭素の量が過剰であることが示された。これは、放射能漏れを防ぐために、原子炉を格納する巨大な円筒が「脆弱」すぎて、「断裂しかねない」ことを意味する。


格納容器のすべてを鍛造したのは、フランス中部ル・クルーゾのアレヴァ工場であり、ずっと以前の2007年から2008年のことである。取替えは可能だろうが、時間的・金銭的に非常に多大なロスになると、シェヴェ氏は述べた。


フランス核産業のインサイダーが昨日の16日、欠陥品の格納容器を解体し、新品を発注して製造させるには数年かかるとル・パリジャン紙に語った。「鋼材の脆弱性が判明すれば、わたしがEPRプロジェクトの生き残りを願ってもダメですね」と、この元・核安全審査幹部は同紙に告げた。


シェヴェ氏は、セカンド・オピニオンが求められており、他の国ぐにの専門家が「意見を求められるかもしれない」と述べた。疑問の余地なく「失策でした」と、彼は付け加えた。「フランスで最後の原子力発電所が建設されてから、15年以上になります。なんらかの職種の専門技能がうまく世代継承されなかったのです」と、彼はいう。


老朽化したヒンクリー・ポイント原子力発電所を新世代の英国製原子炉に更新する当初計画は、最後の労働党政権下の20081月に遡る。そのプロジェクトは、炭素排出量を削減する国際公約を実現する戦略の要石として現政権に引き継がれた。


同原発を所有するフランス電力庁は、原則として、2017年に建設作業をはじめることになっている。ヒンクリー原発は、サイズウェルの3つ目のEPRと併せて、2020年代中ごろまでに英国の電力の16パーセント――そして、エネルギー必要量の6パーセント――を発電することになっている。


フラマンヴィルの危機はまた、パリにとっても潜在的な災難になる。フランスは電力需要の80パーセントを原子力に頼っている。同国は英国と同じく、一群の老朽原発を抱えている。EPRはクリーンで安全な新しい核エネルギー源であるとされていた。このテクノロジーは、アレヴァとEDFを文句なしの世界核産業の主導企業体にすると期待されていた。

人権: チェルノブイリ vs 福島 HUMAN RIGHTS in #Fukushima

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 放射線被曝管理
ウクライナ&ベラルーシ vs 日本


ウクライナ&ベラルーシ

日本

強制避難

≧ 5ミリシーベルト/年

≧ 20ミリシーベルト/年

避難の権利

15ミリシーベルト/年

None

汚染地指定

≧ 0.5ミリシーベルト/年

None

被災者登録

避難区域&汚染地域住民

None

健康検査

毎年170万人(ベラルーシ)

福島県の子どもの甲状腺検査だけ

医療費負担

無料

子どもの甲状腺検査費だけ無料

他は健康保険

子どもの保養

国による年に1か月の保養を提供

保養は市民ボランティア頼り

学校給食

安全な食品を調達

地産地消を推奨

現場作業員

英雄として顕彰

住宅と医療、高額の年金を提供
多重下請け制度

作業員名の登録さえ不完全



フクシマ避難基準 vs チェルノブイリ法基準

年間放射線量

フクシマ区分

チェルノブイリ法区分

50ミリシーベルト以上

帰還困難区域

強制避難区域

2050ミリシーベルト

居住制限区域

20ミリシーベルト未満

避難指示解除準備区域

5ミリシーベルト以上

妊婦・幼児を含め…

無制限に居住可能

移住義務区域

15ミリシーベルト未満

移住権利区域

0.51ミリシーベルト未満

放射線管理区域


(赤字)原則として立入禁止。ただしフクシマ居住制限区域は一時帰宅可能



【追補】

 ウクライナは19912月、放射線汚染ゾーンおよび避難基準の法的な定義を制定し、さらに199212月、チェルノブイリ事故から45年後に多種多様な疾患が激増したため、その定義を改定しました。
なぜ日本政府は、年間20ミリシーベルトの被曝が安全だと言い張れるのでしょう? そのような避難基準はウクライナのそれの4倍にもなり、チェルノブイリの教訓を裏切るものです。ストロンチウム90の基準は定められておらず、公的機関によるストロンチウム90の測定は取りやめられています。

みなさんには、科学的証明が未確定の場合、予防原則を再優先に行動し、フクシマの子どもたちに避難の権利を与えるよう、日本政府に要求していただくように、こころからお願いします。

ウクライナ

放射能汚染地域の法的定義

区分

土壌の放射能汚染レベル

KBqm2CiKm2

被曝線量

mSv/年


セシウム137

ストロンチウム90

プルトニウム


避難ゾーン*

N.D.**

N.D.

N.D.

N.D.

移住義務ゾーン

555

(>15

111

(>3

3.7

(>0.1

5

移住権利ゾーン

185555

515

5.55111

0.153

0.373.7

0.010.1

1

放射線管理ゾーン

37185

15

0.745.55

0.020.15

0.1850.37

0.0050.01

0.5

*避難ゾーン:住民は1986年に避難。**N.D.:定義なし




国際電力業界情報サイトPEi 「#フクシマ 廃炉作業に募る労働力不足の懸念」

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パワー・エンジニアリング・インターナショナル

欧州、アジア、南米、アフリカ、オセアニアの発電ニュース、テクノロジーとトレンド
フクシマ廃炉作業に募る労働力不足の懸念

201542

ティルディ・ベイアー Tildy Bayar


福島第一原子力発電所の廃炉作業における労働力不足が事業を危うくするかもしれないとアナリストらが警告している。


朝日新聞のウィークエンド・レポートによれば、資源エネルギー庁の職員が「廃炉が完了するまで、必要な労働力を確保できるかどうか不透明である」と語った。



問題なのは、労働安全衛生法にもとづく被曝線量の法定限度――5年間で100ミリシーベルト、または1年間で50ミリシーベルト――に多数の労働者が達して、離職を余儀なくされることである。(国際放射線防護委員会は、労働者が5年間、1年あたり20ミリシーベルトを超えて被曝しないことと勧告している)

福島第一原発の登録労働者14,000名のうち、174人が法定限度に達して離職したと伝えられ、2081人が50ないし100ミリシーベルトの被曝をしている。朝日新聞によれば、後者の「大多数」が限度に達する前に所属会社によって被曝レベルの低い持ち場に移されており、これは従業員の被曝線量が20ミリシーベルトに達したさいの一般的な処遇である。


このため、今後の作業の見通しが――原発のなかでも最も放射線レベルの高い現場で実施する必要のある仕事を含め――おぼつかなくなる。


東京電力は、従業員数が作業に必要な適正員数より多いので、労働力不足は起こらないというが、これまで以上の労働者が被曝量限度に達するようなことがつづくなら、「原発内の放射線レベルを引き下げることによって、状況に対応する」ともいう。


アナリストらは、廃炉完了まで30年ないし40年かかるとされる事業を維持するためには、長期計画が必要であるという。福島県の安全顧問グループ(「福島第一原子力発電所の廃止措置等の安全確認に係る有識者懇談会」)の角山茂章座長は、あまりにも多くの熟練労働者が被曝量限度に達し、離職するなり配置転換になるようであれば、「廃炉作業が行き詰まる」と朝日新聞に語った。「政府と東京電力はできるだけ早く、なんらかの対策を講じるべきです」と彼は警告した。


東京電力が探求した一分野が、原発内の放射線区域で、人間の労働者をロボットに置き換えることである。同社は、これまで原子炉内の損傷を調査するためにカメラを装備したロボットを使ってきたという。「わたしどもは、原子炉建屋内の高線量区域の除染、原子炉格納容器または圧力容器の内部にある燃料デブリなどの作業に、もっと遠隔操作技術を応用できるのではと期待しております」という。


東京電力の工程計画にある次の段階は、3号炉の燃料プールから燃料棒を取り出すことであり、この作業では、労働者の被曝線量を抑制するために、主として遠隔操作技術を採用する計画になっている。しかし、何人かの労働者が必要な装置を設置する必要がある。




ミリアム・ジャーマン「平和と相容れない核…リアルな核の脅威」@NatCounterPunch

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「アメリカ随一の政治ニュースレター」境界を超えるマガジン

カウンターパンチ CounterPunch 
――事実を伝え、実名を名指す――
週末版 201541012

平和と相容れない核…

リアルな核の脅威

No Peaceful Nukes

ミリアム・ジャーマン MIRIAM GERMAN

時は20153月の暗い日々、生態系がこうむった地球上最悪の人災の始まりから4年と2週間の歳月がたって、悪意を秘めた最大手メディア企業の道化ショーに興じる誰にとっても、名を口にするのも憚(はばか)れるようである福島第一原子力発電所は溶けて、米国政府の消えることにない影に隠れたモルドールMordor:トールキン『指輪物語』の冥王サウロンが砦を構える「黒の国」]で燻(くすぶ)っていますが、その間にも、ジョン・ケリー[国務長官]とアーネスト・モニス[エネルギー長官]が、わが国のカリフォルニア州、ワシントン州オレゴン州の太平洋岸から遠く離れ、日々にアメリカ人を殺している99基の漏らし、ひび割れ、蒸気を噴き出し、ろくに動かず、咳込み、粒子が爆(は)ぜる原子力発電所の本国から遠く離れた場所で起こっていることについて、すでに死の谷を過ぎた亡霊の耳にだけ聞こえる鐘に向かって、気にかけていると口先だけのことを言っています。

全員の目がイスラエルとイランに貼りついていますが、わたしは焦点を国内に、それもわたしが住むところ、ディアブロ・キャニオン、コロンビアの両原子力発電所が例のアーネスト・モニスによって、わたしたちの環境に大損害を振りまきつづける自由裁量権を付与されている米国西岸だけでなく、他の米国内各地、イランが製造を夢見ることさえやっとこさというやつよりも大きな爆弾のように原発が噴きあがりかねず、しかも、やはりモニスとNRC(原子力規制委員会)ご提供の人工呼吸器と生命維持装置に頼ってはいても、生き残り、電力を供給している米国に戻したいと思います。

ディアブロ・キャニオン、コロンビア発電所。デーヴィス・ベッセ。ピルグリム。インディアン・ポイント。ターキー・ポイント。もっとつづけられますが、われらが米国の裏庭にある核爆弾の陳腐さであなたをうんざりさせるべきではないでしょう。イランのほうが、ずっと興奮する! でも、面白半分で、ちょっと覗いてみましょう。

マサチューセッツ州プリマスの岬にあるピルグリム原子力発電所は、ボストンから20マイル[32キロ]よりほんの少し遠くに立地しています。進入路は1本、退出路は1本です。彼らは安全だといいます。ガッチリしている。活力がある。ピルグリムがメルトダウン。逃げ道はありません。ピルグリムが爆発。逃げ道はありません。NRCは監視しているのでしょうか? ほら、エネルギー省! 国際原子力機関! こっち、こっち! ピルグリムは、核燃料棒が800本あると考えられていたとき、プールに3200本保管しています。PRは、ピルグリムが安全だといいます。ピルグリムは2015117日、ブリザード・ジュノ[米北東部を襲った大吹雪]のさい、高潮時ごろに送電線2本がやられ、停止しました。どれほど安全であれば、じゅうぶん安全なのでしょう?

どこでアメリカの警戒怠りない鷹たちが、正気、明晰さ、透明性の旗を打ち振って、イラクに向かって、俺たちは君たちの息づかいを見つめ、君たちの核施設周辺を見張っているぞと告げているのでしょう? 米国のどこにIAEAが駐在して、同様な正気を示しているのでしょう? 米国民はまったく気にしないか、気にするにしても、気の狂った老いぼれイランだけですか?

米国内で核施設1か所が爆発すれば、核燃料棒の量が膨大なので、多数の核爆弾に匹敵し、爆発による癌発症や死亡者の数は核戦争による数に相当します。イランは核爆弾をまったく保有していませんが、わが国は原子炉99基というベースロード(基礎負荷)を備えており、これはつまり爆弾であり、電線が凍結して、送電網が1か所で故障したり、1本のパイプが凍結したり、1件の火災が発生したり、一人がヒューマンエラーをやらかしたりして、いついかなる時でも爆発しかねません。

オハイオ州デーヴィス・ベッセで、すぐにでも破裂しようとしている爆弾を見てみましょう。(例の鷹のような米国とIAEAの目がイランを睨(にら)んでいますが、40年間の最後の一瞬だけでも、こちらに向けてもらいたいものです) さあ、こころの準備はOKですか?

次に並べるのは、デーヴィス・ベッセに関する事実のほんの一部です――

l  氾濫原に建造されたため、1972年のエリー湖暴風雨のさい、稼働前の原子炉を含め、建設現場全体が大規模な洪水にみまわれた。

l  197710月、排気弁が固着。

l  ウラニウム燃料は常時、メルトダウン防止のために水(冷却材)に浸かっていなければならない。デーヴィス・ベッセは19856月、給水喪失事故を起こした。原子力規制委員会は施設を1年間閉鎖した。

l  1998年、竜巻のため、外部電源を喪失。

l  20023月、怠慢により冷却水にホウ酸が混入し、鋼鉄製の炉蓋を7インチ(178ミリ)以上の深さまで侵食し、3/16″4.8ミリ)厚の裏貼り材が残って放射能漏れを防いだ。施設は2年間閉鎖され、電気料金支払者に60億ドル(7134億円)を負担させた。デーヴィス・ベッセは33500万ドルの罰金が課され、これはNRC史上で最高額である。

l  2004年になった再稼働のために、腐食した蓋は取り替えられたが、この新品に亀裂が見つかり、2011年の再交換に追いこまれた。

l  デーヴィス・ベッセの放射能漏れを防ぐコンクリート遮蔽建屋は、老朽化、劣化、損傷部分を交換するために4か所で大規模に切断された。工事は2011年にはじまり、建屋のコンクリートに裂け目や空洞が見つかった。

モニスはここへ来て、足元の米国土を見つめ、わたしたちの生きる地球そのものを殺してしまう核を、ドヤ顔の尊大な馬鹿たちが世界を救うと信じ、いくつか思いついた凄まじい愚かなアイデアにもとづく大昔のお寒いテクノロジーの遺物とわたしなら名付けるものを、あなたは安全だ、安上がりだ、必要だといまだに信じているはずが、その実、地雷原が横たわって、あなたを待っていたと理解し、認識するがよろしい。あなたは賭博台のどちら側にご着席? いいですか、札はもう開かれていますよ。フクシマ、チェルノブイリ、スリーマイル・アイランド。それに、ハンフォード。

平和利用できる核はなく、核に平和はありません。ただの蜃気楼です。

コロンビア原子力発電所。ワシントン州リッチランド。コロンビア川に立地。コロンビア原発は12本の活断層の上に造られました。建設当時はわかっていませんでしたが、今では事実が判明しています。この原発は、米国北西部でいつ起こってもおかしくないマグニチュード9.0の地震に耐えられません。閉鎖すらしません。事実をもって、わたしたちには人道目的で変化を促す能力で武装しています。でも、わたしたちが心配なのは、戦争目的の武装だけです。コロンビア原発の燃料プールのまわりには格納容器がありません。燃料プールは4階の高さにあります。フクシマを考えてみましょう。ほんとうに。フクシマを考えろ。コロンビア原発の原子炉はフクシマのものと同型です。コロンビア原発はハンフォードの高レベルに放射性の核廃棄物5600万ガロン(212,000 m3200 l.ドラム缶換算で106万本分)から10マイル(16キロ)のところにあります。コロンビア原発でメルトダウンか爆発が起これば、ハンフォードを巻きこむでしょう。放射線量が著しく高レベルなので、浄化のために地域に入るすべはないでしょう。コロンビア川はじかに太平洋に流れています。コロンビア原発は23週間に1度ばかり、モニタリング回路に問題を起こしています。この回路がなければ、原発構内から環境に出ていく放射能レベルを測定できません。あげくの果てに、管理職から作業員まで薬物乱用の記録があり、抜き打ちのドラッグ検査をすると構内でラリってたり酔っぱらっていたりしており、その記録がとても多いものだから、わたしたちはスプレッドシートを用意して、定期的に記入しています。あなたはコロンビア原発の近くに住みたいですか?

IAEAはどこにいるのでしょう? 彼らはイラクに飛ぶために待機中です。

ディアブロ・キャニオン。汚職。パシフィック・ガス&エレクトリック。水資源局。太平洋への熱水の違法投棄。ディアブロ・キャニオンの基礎部にある断層線の写真を一瞥し、カリフォルニア州沖合の海を覗きこめば、精神疾患の光景を理解することになります。前回の地震によって、原発の基礎部にへこみが生じました。このくぼみに棲息する海洋生物は、ディアブロが採用する「非循環」冷却方式によって流出する熱水のために殺されてきました。カリフォルニア。ハイウェイ101号線。サンルイス・オビスポ(SFとロスの中間にある都市)。少なくとも原発事故は1パーセントを気にしません…放射能はお金持ちも殺しちゃいます。ディアブロ・キャニオン周辺の放射線レベルは、ほんの数マイル離れたところに比べて、目に見えて高いのです。わたしはIAEAがここに来て、NRCが実施を求めているルールが順守されているか、確認してほしいと求めているのです。実施なんて、どこでしていますか? 実施なんて、とても… どうぞ、イランに目配りを。

フロリダ半島の先端に立地するターキー・ポイント原子力発電所のモットーは、「人と環境を守る」といっています。このモットーはからっきり正しくもなく、現実に即してもいません。人間を守りながら、原子力を保持することは可能でなく、原発を保持することの切っても切れない理由である核爆弾はいわずもがなであり、また前述したように、結局、原子力発電所は兵器庫に備蓄した核爆弾でもあるのです。戦争に平和はありません。核と併存して、生命を維持する環境はありません。この場合もやはり、上記のすべてが証明済みでありながら、だれも真実を語る科学者たちに本気で耳を傾けないのです。真実として、わたしたちが全面的に、また隠しようもなく、老いぼれた核の恐竜が吐き出す放射能で自殺しようとしているのであり、わたしたちの救出に駆けつけてくれる環境保護庁や原子力規制委員会やエネルギー省や国際原子力機関はないので、だれも真実を気にかけようとしないのです。

環境保護庁は、核事故が発生するとき、または好きなときにデータベースをサッサと閉鎖します。環境保護庁サイトを開き、フクシマ核惨事当初から数週間分のカリフォルニア、オレゴン、ワシントン各州の計測値を探せば、あなたご自身でこのことを確かめることができます。

原子力規制委員会のお仕事は、核施設規制の順守状況を監視することですが、核のお仕事をサボると、契約事業者と委員たちのポケットに入ってくるお金の流れをよくすることになるので、ろくな仕事をしていません(Bechtel/Hanfordを参照のこと)。原子力規制委員会の内輪だけのモットーは、NRCによる規制緩和のおかげで、老朽化した原発が操業規則の順守を達成できるようにするために、核施設の安全基準を引き下げろというものです。おわかりになりました?

国防核施設安全委員会(DNFSB)のお仕事は、エネルギー省(DOE)の国防関連核施設における公衆衛生と安全性の問題が適切に対処されているかを監視することであり、適切でない場合、大統領とエネルギー長官(あのモニスを憶えていますか?)に報告することになっています。でも、DNFSBDOEに対して本物の権限がなく、DOEはそのことを知っています。DOEには本物の独立監視機関が備わっておらず、この問題に関して、原子力規制委員会や国際原子力機関(IAEA)も右に同じです。IAEAは人類の護民官を装ってはいますが、平和目的のための原子力と兵器を後押しするために創設されました。機関は、全世界における平和、保健及び繁栄に対する原子力の貢献を促進し、及び増大するように努力しなければならない(IAEA憲章2条)――このようにIAEAウェブサイトに述べられています。見上げたものです。この一節をもう一度読んでみましょう。もはやどのような独立監視機関もなく、とりわけアルファ・ウルフ(ゲームのキャラクター)がなんともお優しいことに、世は天下泰平といってくれるとき、核のある世界は生きるのに安全でない世界なのです。われらには、われらを守る核がある!

ニューヨーク市(NYC)。800万人を優に超える人びとが暮らす街、そしてブロンクス(NYC最北端の行政区)からほんの25マイル(40キロ)の距離に立地するインディアン・ポイント原子力発電所。ここに漏れで知られる核施設がありますが、IAEAとそのイランにおける安全に関する深刻な懸念の眼差しは、その故郷(IAEAは米国主導で創設)の近くではどこにも向けられていません。インディアン・ポイントはトリチウムを漏らしています。トリチウムが地下水、飲用水、あるいは河川や湖に混入すれば、どれほどひどいことになるか、あなたはご存知でしょうか? IAEADOENRCに任せていれば、ビッグ・アップル(NYCの愛称)は溶融コリウム(酸化ウランとジルコニウム、鉄などの溶融物)になってしまうかもしれません。

ケリーとモニスが近ごろ、IAEAのイラン行きに関連して監視と懸念と安全と透明性について盛んに語っていますので、MOX燃料に言及しておきましょう。プルトニウムが爆発すれば、ウラニウムよりも大量の熱と放射能を放出し、ウラニウムを用いた爆発に比べて、2倍の癌発症数を民間人にもたらしますが、核兵器から取り出したプルトニウムは、核施設の燃料に使用することができます。事実:MOX燃料は最も爆発しやすいタイプの燃料。MOX燃料は核兵器のヴァイアグラ。それなのに、核エンジニアたちは最も爆発しやすいと知りながら、MOX燃料を原子力発電所に装填すると決めています。まるっきり狂っています。

アレヴァの上級副社長、デイヴィッド・ジョーンズは原子炉でMOX燃料を燃やすことについて、「わたしが思うに、それは最高の解決法です…危険であるように設計されたものを取り出し、それを社会に役立つものに変えるのです」といいました。現実としては、これは社会への贈り物ではなく、アレヴァのための贈り物であり、アレヴァはプルトニウムを実質的に無料で仕入れ、それをMOX燃料に加工して、核施設に装填し、お金を稼いでいるのです。

MOX燃料は福島第一原子力発電所の3号機で使われ、3.11のさい、空高く噴きあがり、世界に放射性粒子を浴びせて、それが地球上の民間人と動物たちに、知ることもなく意図することもないまま、吸引されたのです。

あなたは安全がどれほど安全であってほしいでしょうか? IAEAMOX燃料を燃やすことを許しています。IAEAはイランの核を査察しようとしています。IAEAは米の核にダメ出ししません。IAEAはなにも監視していませんが、核の力を推進しています。この地でただひとつ真実であるものは、蜃気楼です。

彼らは東に向かって息を詰め、彼らを解き放ち、彼らを闘争から自由にする力を、鎖の錠前が外されるのを待ち望んでおり、東西、南北の皆もろともに天国の扉が開くのを見て、千疋の蛾のように地獄へと吸いこまれ、背後の路上で最後の残り火がくすぶり、地球上に残されるものは、無為に過ごす永遠の暗闇だけになるのです。

【筆者】

マリアム・ジャーマンMiriam German は、RadCast.org.理事、2112年にNo Nukes NWを創設。

[訳注:挿画はすべて訳者による。出所はWikipedia]

サウス・カロライナ大学:ムソー教授が語る、福島における鳥類の個体数の減少

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サウス・カロライナ大学
福島における鳥類の個体数の減少
Dwindling bird populations in Fukushima

投稿:2015414日 更新:2014415
スティーヴン・ポーウェル Steven Powell, 803-777-1923



線量測定
ティム・ムソーと彼の研究チームは、野生の個別対象の放射線量を測定するガンマ放射線感受結晶を使った熱ルミネセンス検出器を用いて、先駆的な調査を実施している。

1年のうちのこの時期は、鳥類が姿を見せ、翼を広げる季節だが、4年前の春到来より少し前の悲惨な日から、日本の福島県は羽のある生きものに信頼できる土地ではなくなった。サウス・カロライナ大学の生物学者、ティム・ムソーらが公表した数件の論文が示すように、その地の鳥類の状況は悪化していく一方である。


2011311日の地震、津波、それにつづく福島第一原子力発電所の核惨事から数カ月後以来、ムソーと彼の共同研究者らは汚染地域における一連の鳥類個体数調査を実施してきた。彼らはこのほど鳥類学ジャーナルに論文*を発表し、57種の鳥類に関する研究に最初の3年間の結果を公表した。


事故の結果、多数の個体群が個体数を減らしていることが判明し、いくつかの種では、劇的な現象にみまわれていた。とりわけ痛烈な打撃を受けた種がツバメ(Hirundo rustica)であり、放射線被曝レベルの個体別測定の結果、被曝線量に比例する形で個体数の著しい減少をこうむったことが認められた。


研究者らはツバメをさらに綿密に観察し、2年間分のデータを分析して、個体数の減少を引き起こしたメカニズムの特定を試みた。しかし、ムソー、彼の博士号取得共同研究者、アンドレア・ボニゾリ=アルクアティ、その他の共同研究者らが先日、サイエンティフィック・レポーツ誌で公開した別の論文*で報告したように、ツバメ雛個体の末梢赤血球を検査した結果、放射線量に正比例する作用の結果としての遺伝子損傷は認めることができなかった。それでもなお、さらに詳細な研究の結果、幼鳥の個体数の減少と割合の低下が共に認められた。


ムソーはこう語る――「災害のあと、あの最初の夏は“最高線量”の地域に入ることがかなわず、次の夏は“中程度の線量”の地域の一部に踏みこむことができただけですので、この研究では、背景被曝線量の比較的狭い範囲を扱っていました。したがって、ああいう種類の関連を見出すのに、わたしたちは比較的貧弱な統計検出力しか使えなかったのですし、あれほど少ししかツバメが残っていないという事実とそれを結びつけるとなれば、なおさらのことです。災害の前には、一定の地域に数百羽いたことがわかっているのですが、ほんの2年後には、数十羽が残っているのを見ることができただけです。羽数の減少は、実に劇的でした」。


世界のなかで、フクシマでいま進行している事態をみぬく洞察力をあたえてくれるはずのもうひとつの場所は、ウクライナで1986年、放射性物質の壊滅的な放出が起こった現場、チェルノブイリである。ムソーは、チェルノブイリ+フクシマ研究イニシャティブがカロライナで2000年に設立された時からの主任として、これまで20年間にわたり、野生地帯に生きる動物に対する放射能の影響に関する大規模な研究活動を確立してきた指導者であり、比較を引き出すのに唯一無二の適任者である。


ムソーと彼の長年にわたる共同研究者、CNRS(フランス国立科学研究センター)のアンダース・モラーは鳥類学会誌の別論文*で、フクシマとチェルノブイリにおける鳥類種の反応の異なる様相を論じている。2か所の現場それぞれの放射線による影響の差異は際立っていた。チェルノブイリの変異原性状況において、渡り鳥が周年留鳥に比べて顕著に悪く、その一方、フクシマではその逆が真だった。


ムソーは次のようにいう――


「それによって、わたしたちがたった今、フクシマで見ているものは基本的に――定住動物がそこに長く滞在すればするほど、それだけ大きな影響を受けますので――毒性作用をおよぼしている放射線被曝の直接的な結果によるものであることが示唆されています。チェルノブイリでは多世代を重ねたあと、渡り鳥が一層大きな影響を受けていますが、ひとつの可能性として、これは変異蓄積の違いを反映しています。


「渡りをする鳥類種のDNA修復能力は、少なくとも渡りにつづく短期間、損なわれています。渡り鳥の羽ばたきのあと、運動の影響で酸化ストレスが生じ、抗酸化物質――たとえば、ビタミンE、カロチノイド類――のレベルが正常値より大幅に低くなって、それほど急激な減耗効果をこうむらない留鳥類種に比べて、放射線が渡りをする鳥類種にとって厳しい打撃になるのでしょう」


研究関係者たち、そして鳥類愛好家たち全般にとって、最大の痛恨事であろうことは、フクシマで事態が進行する様相である。これまでの4年間を通して、地域における背景放射線量が低下傾向にあるにもかかわらず、鳥類に対する事故の有害な影響は拡大傾向にある。



ムソーはいう――「最初の夏には、放射線量と個体数の関係が否定的な形で動き出しましたが、関係の強さは年ごとに増大してきました。そこで、わたしたちは鳥類の個体数と鳥類種の数の両方で実に驚くべき減少を目撃しているのです。ですから、放射線量レベルが下がっているとはいえ、これらの高レベル地域で、生物多様性と個体数の両方が劇的な影響を見せつけているのです」

【論文紹介と概要】スイスで低線量被曝と小児ガンのリスク研究 大きな反響

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里信邦子


23.00.2015

福島第一原発事故以降、低線量被曝による小児ガンのリスクは欧州でも関心を呼んでいる。こうした中、スイス・ベルン大学が2月末に発表した研究は、低線量でも線量の増加と小児ガンのリスクは正比例だとし、「低線量の環境放射線は、すべての小児ガン、中でも白血病と脳腫瘍にかかるリスクを高める可能性がある」と結論した。毎時0.25マイクロシーベルト以下といった低線量被曝を扱った研究は今でも数少なく、同研究はスイスやドイツの主要新聞に大きく取り上げられ反響を呼んだ。


 「予想以上のメディアの反応に驚いている。しかし、この研究で焦点を当てた宇宙線と大地放射線は避けられない自然放射線だ。スイス・アルプスなどの線量の高いところに住む子どもがガンにかかるリスクは確かに高いのだが、恐怖を与えたり、警告を発したりするのが目的ではない」と、ベルン大学社会予防医学研究所(ISPM)で同研究に携わったベン・シュピヒャーさんは釘をさし、疫学の専門家として、次のように言う。


 「あくまでも科学的な低線量被曝のリスク研究の一つとして、スイスでは例えば、子どもには必要のないCTスキャンなどは避けるといった予防に対する意識の向上に役立ててほしい」


 日本を含め世界では現在、低線量被曝と発がんや遺伝子の影響に関する見解において、年間100ミリシーベルト以下の被曝では、「線量の増加に正比例して発がんや遺伝子の影響が起きる確率が増える」という考え、つまり、ある線量以下なら影響が出ないという「しきい値」を取り払った、直線しきい値なし仮説(LNT仮説)に従っている。


 よって、(ISPMが扱ったような)毎時0.25マイクロシーベルト以下といったわずかな線量でも、理論的には線量の増加と小児ガンのリスクは正比例の関係になる。しかし、実際にはこうした低線量被曝のリスク研究はわずかしか存在せず、しかも科学的にまだ不十分な点が多い。これが、ISPMが今回の研究に取り組んだ一つの理由だ。


 また、スイスで小児ガンにかかる年間約200人の患者のうち、小児白血病は約30%、小児脳腫瘍は約25%を占める。この二つのガンは、広島・長崎の原爆で被爆した人の中でも特に当時子どもだった人がその後にかかる主な疾患だとする多くの研究がある。「では、スイス国内の小児ガンでメインなこの二つのガンと低線量被曝に相関関係があるのか?」と考えたのが二つ目の理由だ。


斬新な研究


 「我々の研究の斬新さは、ガンにかかった子ども一人ひとりの病名や経緯、またその子が住むスイス国内の住所を特定し、その場所の詳細な環境放射線の値を使ったことだ」とシュピヒャーさんは言う。


 ここで言う環境放射線とは、子どもの住環境にある放射線を指し、それはさらに、原発事故などによる人工放射線と自然放射線に分けられる。この自然放射線には、宇宙線と岩石などから出る大地放射線などがある。


 ISPMは、まず1990年から2008年にかけ、スイス国勢調査を使って16歳以下の子ども約200万人を選び出し、その後、スイス小児ガン登録簿(SCCR)を使って1782人のガン患者を特定した。


 それに、スイスの自然放射線量とチェルノブイリ事故後に飛散したセシウム137の土壌濃度を記した放射線量マップを基に、200万人の子ども全員の住居地の線量を把握した。このマップは、連邦工科大学チューリヒ校が行ったスイスにおける放射線量研究(Raybachレポート)で作成されたものだ。


 「住所を含むこうした情報は個人情報に近いため、恐らく北欧の国を除いては入手できないものだ」とシュピヒャーさん。さらに、200万人の子どもが住む周囲の環境放射線の数値を、それも4平方キロメートルごとに調査したものを使った研究は今までにないと強調する。


 実は2013年に、環境放射線と小児ガンのリスクを扱った、イギリスの研究(Kendallレポート)がある。対象となった子どもの数と線量測定地の数がスイスのISPMの研究より多いなどの点から「トータルにはISPMのものと同程度の価値がある」と言われるものだ。ただ、ガン患者が住む場所の線量が行政区の平均値であるため、個々人の住居周辺の線量データを使ったスイスのものとの比較において、疫学的観点からは不正確さが残るとされる。


スイス全土の宇宙線と自然放射線


 では、なぜ小児ガンを引き起こす原因として、宇宙線と大地放射線、及びチェルノブイリ事故後のセシウム137に焦点を当てたのだろうか?


 「スイスの環境では、こうした環境放射線以外に、特殊な化学物質や公害物質がガンを引き起こす可能性はほぼない。また、大地放射線のガンマ線が白血病を引き起こすことはKendallレポートなどからも明白だったからだ。他にラドンガスもあるが、これは主に肺に吸収され肺ガンの原因になるから、今回の研究からは除いた」とシュピヒャーさんは説明する。


 そこで、宇宙線と大地放射線、セシウム137の毎時の線量が計算できる前出のRaybachレポートのマップを使用した。さらに、これら三つの放射線の、生まれたときから調査時までに浴びた総線量も計算。毎時の放射線量と総線量の両面からガンにかかるリスクを分析した。


 その結果、数値としては「生まれたときから浴びた総線量において、総線量が1ミリシーベルト増えるごとに4%ガンにかかるリスクが増える」を結果として提示した。


10~20年でさらに進む研究 


 最後に、日本人には気になるセシウム137。これはチェルノブイリ事故のせいで、スイスでは主にイタリア語圏のティチーノ州に今でも存在する。しかし、スイス国民が受ける環境放射線量の平均は、毎時約109ナノシーベルト(約0.1マイクロシーベルト)。うちセシウム137は、毎時約8ナノシーベルトに過ぎない。


 こうした値をスイス全体でみると(マップ参照)、やはり山岳部のグラウビュンデン、ヴァレー、ティチーノ州の一部に、毎時0.2マイクロシーベルトを超える放射線量の高いところがある。


 しかし、ここでまた、シュピヒャーさんの前出の結論が繰り返される。「フクシマのせいで、この研究結果に関心を持つ日本人は多いと思う。しかしこれは、低線量と小児ガンにかかるリスクの可能性が正比例で高まることを示した、科学的な一つの研究だ。そのことを理解して役立ててほしい」と語った上で、次のように続ける。


 「我々の研究も完全ではない。例えば、放射線量の正確さを最大限に高めたいなら、ガン患者のすべての住居でかなりの期間にわたり測定が必要だ。実際、そうした研究も今後出てくるだろう。この研究を一つの礎にして、より詳細で大規模な低線量被曝の研究を期待する。そうして今後10~20年でこの分野の研究はさらに進むと思う」


ベルン大学が発表した「環境にある低線量の放射線と小児ガンのリスク」


ベルン大学社会予防医学研究所(ISPM)が発表した研究のタイトルは「Background Ionizing Radiation and the Risk of Childhood Cancer : A Censusu-Based Nationwide Chohort Study」。


2年かけて行われた同研究は、スイス連邦内務省保健局、スイスガン連盟、スイス連邦科学基金などが支援した。


疫学の専門家ベン・シュピヒャーさんや3人の小児ガンの専門家などを含む10人の研究者と小児ガン研究グループ、国勢調査グループなどが研究に参加した。


個々の小児ガン患者のデータを使用して、小児ガンになるリスクと環境放射線中の特にガンマ線による低線量被曝の相関関係に焦点を当てた研究は、同研究とスウェーデンの研究(2002年)、イギリスの二つの研究(2002年のものとKandellレポート)の、計四つがある。そのうち同研究を含む三つが、相関関係を証明している。



なお、2011年にISPMはスイスの原発から、5キロメートル、5~10キロメートル、10~15キロメートルの範囲で、放射線量と小児ガンとの関係も調査した。



ADVANCE PUBLICATION


Environ Health Perspective; DOI:10.1289/ehp.1408548

背景放射線と小児癌のリスク:

全数調査にもとづく全国コホート研究

 PDF Version (426 KB)

受付:2014411日 受諾:2015128日 先行公開:2015223

スイス小児腫瘍学グループおよびスイス全国コホート研究グループ
Ben D. Spycher, 1 Judith E. Lupatsch, 1 Marcel Zwahlen, 1Martin Röösli, 2,3 Felix Niggli, 4 Michael A. Grotzer, 4Johannes Rischewski, 5 Matthias Egger, 1 and Claudia E. Kuehni

1スイス、ベルン、ベルン大学・社会予防医学研究所(ISPM)。

2スイス、バーゼル、熱帯・公衆衛生研究所。

3スイス、バーゼル、バーゼル大学

4スイス、チューリッヒ、チューリッヒ子ども病院大学腫瘍学部

5スイス、ルツェルン、州立病院ルツェルン、こども病院腫瘍・血液科

Address correspondence to Ben D. Spycher, Institute of Social and Preventive Medicine (ISPM), University of Bern, Finkenhubelweg 11, CH-3012 Bern, Switzerland. Telephone: +41 31 631 56 97. E-mail: ben.spycher@ispm.unibe.ch

金銭的利益相反

著者らは金銭的利益相反を有しないと宣言する。

概要

背景:中または高線量の電離放射線は、子どもたちの発癌要因として既に知られている。自然線源に由来する低線量放射線が小児癌のリスクに寄与する程度は未解明のままである。

目的:われわれは全国全数調査コホート研究によって、小児癌の発症率が地球のガンマ線と宇宙線による背景放射線と関連しているか否かを検証した。

方法1990年および2000年の国勢調査において16歳未満の子どもたちが調査対象になった。追跡調査は2008年までつづけられ、癌の症例はスイス小児癌登録簿によって特定された。居住地点における地球・宇宙線の線量率を予測するために、放射線モデルが用いられた。癌リスクと誕生以来の線量率および蓄積線量の関連を評価するために、コックス回帰モデルを用いた。

結果:国勢調査に記載されている2,093,660人の子どものうち、1,782症例の癌が識別され、そのうち、530症例が白血病、328症例がリンパ腫、423症例が中枢神経系(CNS)の腫瘍だった。外部放射線の蓄積線量が1 mSv増加するごとの危険率は、癌全般が1.0395% CI: 1.01, 1.05)、白血病が1.041.00, 1.08)、リンパ腫が1.010.96, 1.05)、CNS腫瘍が1.041.00, 1.08)だった。一連の潜在的交絡因子による補正を試みたが、結果にほとんど影響しなかった。

結論:われわれの研究は、白血病、CNS腫瘍など、小児癌のリスクに背景放射線が寄与しているかもしれないことを示唆している。

NHKが森林火災による放射性物質拡散の恐れに言及!…ただし、国内向けではなく、NHK WORLD News

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チェルノブイリ立入禁止区域で森林火災

2015429

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ウクライナ、チェルノブイリ原発周辺の封鎖地区で森林火災が勃発しました。火災が発生したことで、森林の放射性物質が拡散するかもしれないと不安が募っています。


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火災がはじまったのは、4月26日のことです。ウクライナ内務省は、火が4平方キロに拡がり、原発から20キロの地域に達したと述べました。内務省は、放火の可能性があるともいっています。数か所から火が出たと信じられています。


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アルセニー・ヤツェニュク首相は200人の消防隊が消火にあたっていると述べました。首相は、この火災は1990年以降で最大規模のものだが、状況はコントロールされているともいいました。


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ヤツェニュク首相は、バックグラウンド放射線レベルの変化は検出されていないとも付け加えました。


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1986年にチェルノブイリ原発の原子炉1基が爆発し、膨大な量の放射性物質を大気中に放出しました。惨事のあと、原発から半径30キロの地域を立入禁止区域とすると宣言されました。
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