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【論文】バンダジェフスキー「セシウムと心臓」第3章:実験動物の体内の構造・代謝の病変

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◇◇◆目次◆◇◇

環境要因の結果としての心血管病理

放射能汚染地に生きる子どもたちの心血管系の病変

検死解剖に診るゴメリ州住民の心筋構造の病変

3

137Csに内部被曝した実験動物の体内の構造・代謝病変

放射性セシウムが心臓におよぼす作用の病態生理特性

結論・略語リスト・原書目次・参照文献

出処:International solidarity CHERNOBYL

原文:Radioactive Cesium and the Heart: Pathophysiological AspectsPDF


放射性セシウムと心臓:
病理生理学的側面

医学博士、ユーリ・I・バンダジェスキー教授
by Professor Yuri I. Bandazhevsky, M.D.

論文原本出版:ミンスク、2001

ロシア語⇒英語・新訳:2013


Bandazhevsky Y. Radioactive cesium and the Heart: Pathophysiological Aspects.
"The Belrad Institute" 2001. - 64 pp. ISBN 985-434-080-5


3

137Csに内部被曝した実験動物の体内の構造・代謝の病変

動物(白変種ラット)実験によって、セシウム137による内部被曝の期間中に発症した、心臓、肝臓、腎臓、肺の構造および代謝の病変が調べられた。放射性核種は、水溶液の経口投与またはオーツ飼料の摂取を介してラットの体内に入った。

体重180200グラム、総数121匹の白変種ラットおよびウィスター・ラットの雄が飼育器で保管された。実験の第1シリーズの一環は、実験群の動物に137Cs濃度が400 Bq/kgのオーツの摂取を45日間つづけさせることだった(両群の1日あたりオーツ摂取量は1匹ごとに35グラム)。この期間中、対照群の動物は、137Cs濃度が400 Bq/kgのオーツを与えられた。

実験群の動物39匹と対照群の29匹が、実験の8日目にエーテル麻酔剤を吸引したあと、犠牲に供せられた。45日目に実験群の10匹と対照群の10匹もまた犠牲になった。すべての実験群動物と対照群動物は安楽死に先立って、ガンマ放射線計測器RUG-2(製造はベラルーシ放射線防護研究所「ベルラド」)によるホールボディ137Cs濃度計測を受けさせられた。

実験の第2シリーズは、6日間にわたり実験群動物19匹に1日あたり45 Bqのセシウム137を水溶液(5 ml)で連日経口投与することで実施された。対照群動物の20匹は同期間中、生理食塩水(5 ml)の連日経口投与を受けさせられた。動物のホールボディ137Cs蓄積量が実験の全期間を通して定期的に放射線計測器RUG-2を用いて計測された。

実験開始後、4日目、6日目、8日目に実験群と対照群の動物の一部が犠牲になった。

実験の第3シリーズは、実験群の雄12匹に180 Bq137Cs水溶液(5 ml)を6日間にわたり連日経口投与することで実施した。同期間中、対照群の12匹は生理食塩溶液5 mlの連日経口投与を受けた。実験の全期間中、動物のホールボディ137Cs蓄積量が放射線計測器RUG-2で検査された。実験開始後8日目に、実験群と対照群の動物は犠牲になった。

実験群の全動物が犠牲になったあと、体内臓器の顕微鏡検査が実施された。肝臓、腎臓、心筋、肺が0.51.0 cm厚の薄片に薄切りされ、10%フォルマリン溶液で固定され、パラフィンに埋め込まれた。結果は、ヘマトキシリンとエオシンで着色した58ミクロン厚の組織プレパラートとして結実した。組織プレパラートは双眼顕微鏡を用いて調べられた。第1シリーズ実験11日目の動物の心筋における収縮組織の病変を判定するために、オプトン社(ドイツ)製“Vidas”ビデオ形態光学システムを介したA帯のサイズ定義による偏光顕微鏡法を用いた。筋肉組織試料は、実験群および対照群の動物8匹の心臓から採取した。これらの組織は均質化処理され、アルカリ・フォスファターゼ、酸フォスファターゼ、乳酸脱水素酵素、クレアチン・フォスフォキナーゼ、アラニン・アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノ酸転移酵素、γ-グルタミルトランスフェラーゼの働きを分析した。

実験シリーズの全動物に対して、血液試料採取を実施し、血清を分離して、ベックマン社製の“Synchron”分析装置を用いて、蛋白質、アルブミン、尿素、クレアチニン、アスパラギン酸アミノ酸転移酵素、アラニン・アミノトランスフェラーゼの総量レベルを判定した。結果はその後、統計分析に廻された。

研究の結果、飼料中137Csの連日摂取によって白変種ラットの体内の累進的137Cs蓄積を引き起こすことが示された。とりわけ、実験11日目の137Cs蓄積量は、実験群で63.35 ± 3.58 Bq/kg、対照群で5.43 ± 0.87 Bq/kg p <0.001)だった。

実験11日目の対照群動物の体内組織に対する顕微鏡検査では、顕著な病変は明らかにならなかった。しかしながら、心筋細胞の偏光特性には、対照群と比較して、A帯のサイズ増大の形で病変がしっかり記録されていた(図6)。心筋細胞のアルカリ・フォスファターゼおよびクレアチン・フォスフォキナーゼの作用減衰が認められた(図7)。

6:実験群動物の心筋における異方性介在板の高さ
1
.実験群                            2.対照群           p0.05

7:実験群動物の心筋組織における酵素の働きの病変(対照群に対する%で表示)
1
。アルカリ・フォスファターゼ 2.クレアチン・フォスフォキナーゼ
p0.05

これらの動物の血清中に、アスパラギン酸アミノ酸転移酵素およびクレアチニンのレベル上昇が認められた(図8)。肝臓組織が蛋白質ジストロフィーおよび循環不調の徴候を示した。

 8:実験群動物の血清における基礎代謝指標の病変(対照群に比較した%で表示)
1.クレアチンの内容 2.アスパラギン酸アミノ酸転移酵素の働き 
p0.05

腎臓組織において、糸状体ループへのリンパ組織球細胞の浸潤とともに、いくつかの症例で糸状体の断片化と崩壊が観察された。101.05 ± 1.69 Bq/kg137Cs蓄積は、白変種ラットの体内に重大な病変を引き起こした。腎臓に認められた病的な病変には、メサンギウム細胞の増殖、糸状体ループへのリンパ組織球細胞の浸潤、糸球体の断片化と喪失などがある。直線状および回状細管の上皮組織に粒質および硝子質溶滴変性が認められた。

肝臓組織の顕微鏡検査によって、肝細胞の粒状および液胞変性、それにディッセ腔(類洞周囲腔)の拡張が見つかった。ふさわしくも際立った循環障害が、中央小葉静脈管の拡張と充血という形で認められた。心筋組織に、びまん性筋細胞溶解、焦点リンパ組織球浸潤、血管充血が見受けられた。これらの動物の血清では、クレアチニン値が41.20 ± 1.60 nmol/lに達し、対照群の33.11 ± 2.45 nmol/l (p <0.001)に比較して相当な上昇を示していた。

45 Bq137Cs の連日経口投与の結果、後日における実験群ラットの137Cs濃度は次のとおりになった――
4
日目:40.91 ± 10.62 Bq/kg (対照群 2.67 ± 1.05 Bq/kg, p <0.005)、
6
日目:104.55 ± 24.73 Bq/kg(対照群 12.13 ± 4.75 Bq/kg, p <0.001)、
8
日目:150.58 ± 52.06 Bq/kg (対照群 10.66 ± 4.82 Bq/kg, p <0.001)。

顕微鏡検査によって、オーツ摂食を介して動物の体内に入ったセシウム137の作用と認められる病変に対応した、心筋、肝臓、腎臓におけるジストロフィー性および壊死性の病変が検出された。ラットの体内に取り込まれるセシウム137の量が増大するのに伴って、主としてα1およびα2グロブリン画分の減少による、蛋白質総量の累進的減少およびクレアチニンの増加が認められた。

6

実験動物(白変種ラット)の蛋白質画分値

蛋白質画分

137Cs, Bq/kg

(編者注:ホールボディ計測による判定)

1

40.91±10.62

2

104.55±24.73*

3

150.58±52.06*

総蛋白質 g/l

65.56±3.74

62.98±3.26

49,08±2.01*

アルブミン(%)

36.32±1.70

39.95±2.26

41.68±0.97*

α1グロブリン(%)

13.84±1.01

12.93±1.93

10.16±0.54*

α2グロブリン(%)

15.63±0.91

11.65±1.23

12.12±0.45*

βグロブリン(%)

14.52±0.88

13.78±2.18

14.76±0.76

γグロブリン(%)

19.69±1.41

21.70±1.40

21.28±1.24

グロブリンに対する
アルブミンの比率(%)

0.58±0.04

0.67±0.06

0.72±0.3*

* p<0.05

6日間にわたってセシウム137180 Bq水溶液を連日経口投与した結果、実験8日目に白変種ラットの平均137Cs蓄積量は991.00 ± 76.00 Bq/kgになった(対照群:6.70 ± 2.36 Bq/kgb, p <0.01)。実験群動物のうち、5匹(41.7%)が実験5日目と6日目に死亡し、その体内の137Cs蓄積量が1,000 Bq/kgを超えていたのは、注目すべきことである。顕微鏡検査の結果、体内器官の顕著な出血が明らかになった。腎臓組織の顕微鏡検査によって、糸状体構造要素の損傷が記録された。損傷の大半は上皮組織と血管系の壊死であり、その完全な消失とその後の空洞の形成に終わっていた。細管において、上皮細胞の壊死と併せて、液胞性および粒状性の変性が検出された。

肝臓において、静脈に鬱血があって、それが小葉中心部でなお目立ち、幹細胞の壊死と併せて、蛋白質と脂肪の変性を伴っていた。肺では、血管の膨張と充血が顕著であり、肺胞内腔の赤血球の存在、そして肋膜の炎症性病変が確認された。心筋では、線維間および細胞内の浮腫の発現が顕著であり、心筋細胞の大半がその核もろともに消散していた。いくつかの症例で、心外膜と心膜の部位の炎症性浸潤が検出された。

このように、水溶液を経口投与し、また一部はオーツ飼料として与えることによる、消化管を通した白変種ラットの体内137Cs取り込みは、生命維持器官に構造的および代謝的な病変を引き起こす。これらの病変発現の程度は、蛋白栄養不良の表れから危険な壊死性および変性的な病変まで、取り込まれたセシウム137の量によって決定する。このことは、心臓、肝臓、腎臓など、生命維持に不可欠な臓器に対するセシウム137の毒性作用をあらわにしている。

この寿命の長い放射性核種の毒性が、まったく、または極小にしか増殖能力を持ち合わせない高度に専門化された細胞にいの一番に影響することは注目されるべきである。心筋の場合、ミトコンドリアの構造に重大な病変が発現し9、このことは、高エネルギーのリン酸塩およびクレアチンが関与する反応に触媒作用をおよぼすことでエネルギー交換の鍵となる酵素、クレアチン・フォスフォキナーゼの働きを減退させることになる。心臓のエネルギー生成過程が破壊され、細胞内の低酸素症が進行すれば、その収縮組織、つまり筋細線維にさまざまな程度の痙縮、あるいは解離や溶解といった病変が発現することになる30

収縮組織の超微細構造(訳注:光学顕微鏡では観察できない原形質の構造)における病変は、筋線維の偏光特性の変化として観測できる。体内の137Cs濃度が上昇すれば、心筋の細胞死につながる。137Cs濃度が100150 Bq/kgの範囲にある場合、心筋内の免疫系の反応として、リンパ組織球性浸潤を観測できることがあるが、これは注目すべきことである。137Cs濃度が1,0001,500 Bq/kg、つまりさらに10倍になれば、全面的なジストロフィーおよび幾多の心筋細胞の喪失を招くことになるので、生命とは相容れなくなる。

137Csの影響による細胞構造の損傷が、心筋に加え、肝臓および腎臓で観察された。特筆すべきことに、腎臓の糸球体組織に変性過程が発現していた。3050 Bq/kgという比較的に低レベルの137Cs取り込みでさえ、個別の糸状体に、特質的な空洞の形成と併せて、細胞要素の喪失が観察された。われわれは、この過程の基本的なメカニズムが細血管や毛細血管のレベルにおける血管損傷の形成であることを度外視するわけにはいかなかった。血管上皮組織の損傷は、さまざまなタイプの蛋白質変性および細胞の壊死を招いていた。



腎臓が体内からの放射性セシウム排出を担うための主要臓器であることを考えれば、その排泄機能が崩壊すると、代謝老廃物および放射性セシウムがもろともに体内蓄積することになると論じることができる。このような代謝老廃物は、生命維持器官、とりわけ心筋に対して毒性作用をおよぼす。

137Cs体外排出の途絶は、その血中濃度の上昇をまねき、したがって、最高レベルの代謝活性を示し、しかも構造的・機能的に専門化した心筋細胞など、細胞の内部の放射性セシウム蓄積を促進することになる。この場合、細胞膜の選択的透過性が損傷を受け、その結果、ナトリウムイオン(+)および水の細胞内への移動が増進する。この過程の帰結として、心臓の働きが途絶し、被曝した個体の死を招く。

このように、放射性セシウム排出の阻害は、ネフロン(腎単位)構造の死に帰結し、中毒性の心筋症の発症につながることになる。この病理過程の形態学的な発現は、腎不全の場合のような、肋膜および心膜の炎症と同じ様相を示す。セシウム137には肝臓組織に対する毒性作用があり、このことは疑いなく物質代謝の状態に影響する。以上の結果は、低濃度137Csの実験動物体内取り込みが、心筋、肝臓および腎臓の細胞に対して毒性作用をおよぼし、死の主要な原因になりうることを示している。


◇◇◆目次◆◇◇

環境要因の結果としての心血管病理

放射能汚染地に生きる子どもたちの心血管系の病変

検死解剖に診るゴメリ州住民の心筋構造の病変

3

137Csに内部被曝した実験動物の体内の構造・代謝病変

放射性セシウムが心臓におよぼす作用の病態生理特性

結論・略語リスト・原書目次・参照文献

出処:International solidarity CHERNOBYL

原文:Radioactive Cesium and the Heart: Pathophysiological AspectsPDF



【論文】バンダジェフスキー「セシウムと心臓」第4章:放射性セシウムが心臓におよぼす作用の病態生理特性

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◇◇◆目次◆◇◇

環境要因の結果としての心血管病理

放射能汚染地に生きる子どもたちの心血管系の病変

検死解剖に診るゴメリ州住民の心筋構造の病変

137Csに内部被曝した実験動物の体内の構造・代謝病変

4

放射性セシウムが心臓におよぼす作用の病態生理特性

結論・略語リスト・原書目次・参照文献


(訳注:米国在住の医師、平沼百合さん@YuriHiranumaによる
4章および「結論日本語訳
pdf.


出処:International solidarity CHERNOBYL

原文:Radioactive Cesium and the Heart: Pathophysiological AspectsPDF


放射性セシウムと心臓:
病理生理学的側面

医学博士、ユーリ・I・バンダジェスキー教授
by Professor Yuri I. Bandazhevsky, M.D.

論文原本出版:ミンスク、2001

ロシア語⇒英語・新訳:2013

Bandazhevsky Y. Radioactive cesium and the Heart: Pathophysiological Aspects.
"The Belrad Institute" 2001. - 64 pp. ISBN 985-434-080-5


4

放射性セシウムが心臓におよぼす作用の病態生理特性

これまで、さまざまな年齢層、さまざまなホールボディ137Cs取り込みレベルの子どもたちに対するECG検査、チェルノブイリ災害の被災地に生きる人たちに対する顕微鏡検査、動物実験の結果を分析してきたが、その結果、セシウム137が心血管系に悪影響をおよぼすと結論することができるようになった。この作用は、一連のシステム、とりわけ神経系および内分泌系を介した間接的な影響と併せて、細胞構造に対する直接的な影響として発現した。

心臓に対するセシウム137の直接的な影響は、それが他の臓器や組織よりも、心筋細胞内に蓄積しやすい選択性に由来する(図910)。これはおそらく、ナトリウム=カリウム・ポンプ機能が調子よく働いているためだろう。セシウム137はカリウムと同じ原子グループに属し、たやすく心筋細胞に入り込めるからである。このプロセスには、細胞膜の構造が関与しており、この放射性核種と細胞膜構造の相互作用は活発である15。これに、細胞のエネルギー交換、すなわち高エネルギーのリン酸塩の蓄積、移動および利用に関わる重要な酵素、クレアチン・フォスフォキナーゼ(CPK)の働きの抑制が伴っている。CPKは可逆性のリン酸化反応に対して触媒作用をおよぼし、これには、ATP(アデノシン三リン酸)からクレアチンへ、フォスフォクレアチンからADP(無水リン酸アンモニウム)へといった、リン酸塩グループの転移が関わっている1

図9:実験群ラットの臓器および全身におけるセシウム137蓄積量
1
.心臓  2.肝臓  3.脾臓  4.腎臓  5.全身

(編者注:各臓器のBq/kg値がホールボディ計測値より何倍も高いことに注意!)

101日あたり180 Bqを連日投与された白変種ラットの体内器官の137Cs濃度
1
.ラット生体(編者注:ホールボディ計測) 
2
.肝臓 3.腎臓 4.心筋 5.脾臓 6.骨格筋 7.精巣 8.肺

(編者注:腎臓のBq/kg値、つまり137Cs濃度は、ホールボディBq/kg値より少なくとも13倍は高くなっている)

CPK(クレアチン・フォスフォキナーゼ)は、細胞質、ミトコンドリア、ミクロソーム、細胞核、筋小胞体、筋細線維といった、さまざまな細胞内構造に局在している。CPKは現在の考えかたによれば、ミトコンドリア基質の内部で酸化的リン酸化反応の結果として生成される、ATP(アデノシン三リン酸)からクレアチンリン酸への形成過程の触媒として働いている。合成されたクレアチンは、濃度勾配にもとづいて細胞質へと、または急速な伝播によって、ある種のCPKアイソザイム(同位酵素)へと移動するが、その特筆すべき振る舞いは次のとおり――

Ÿ   筋肉収縮を担う構造――筋細線維Mライン――と結びつく。

Ÿ   筋小胞体およびCa2+アデノシン3リン酸加水分解酵素と結びつく。

Ÿ   筋形質およびNa+ / K+アデノシン3リン酸加水分解酵素に関与する。

Ÿ   アセチルコリン受容体およびATPアーゼに富んだシナプス後膜と結びつく。

ミトコンドリアCPKは、ミトコンドリア膜の外皮と内皮を結合させる働きをし、その構造を生成する1Mライン領域におけるCPKの局在は、ATPが継続的に再生するための条件を生みだし、筋細線維の適正な収縮機能を確実に働かせる(図11)。その結果、生じたクレアチンはミトコンドリアに戻り、再びリン酸化反応の基材になる。

11:心筋の介在板(概念図)
1
.筋細胞の基底膜  2.原形質膜、筋細胞  3.ミトコンドリア 
4
.筋細線維   5.筋形質  6.細胞質ネットワーク  
7
.薄い前原線維(アクチン)  8.厚い前原線維(ミオシン)
9
.介在板  10.明色の介在板  11.暗色の介在板
12
.テロフラグマ  13M帯(メソフラグマ)  14.付着筋膜
14
.デスモソーム(接着斑)  15.強結合(ネクサス)
(原画:バーグマン、シュルツ。改訂)

11注:(2)は、心筋の筋細胞膜であるはず。(3)は、単一なので“mitochondrion”と表記するはず。(10)は、明色板(I帯)。(11)は、暗色板(A帯)。(12)は、体の断片。(13)は、M帯。(14)は、デスモソーム(斑状接着質)。(15)は、ネクサス(細隙結合)。

したがって、CPKの働きの減衰は、心筋細胞のエネルギー代謝における深刻な構造関連および代謝関連の欠陥を示唆する。このことは、ミトコンドリアの数とサイズの増大、層状結晶数の増大、そしてその結果としてのミトコンドリアの崩壊の形で、ミトコンドリア組織に観察された。また、ミトコンドリアの凝集、ミトコンドリア同士の接触回数の変化としても観察される(図12)。

1245 Bq/kgの体内137Cs取り込み後のラットのミトコンドリアの凝集、数とサイズの増大。倍率:X 30,000

エネルギー代謝の阻害は、甲状腺ホルモンがミトコンドリアの組織に毒性作用をおよぼすことから、それも含めて、なんらかの代謝体の作用による影響と併せて、膜構造に付着したセシウム137による直接的影響に結びつけることもできる13。これに関連していえば、バセドウ病のように、あるいは実験的に発症させた甲状腺機能亢進症に見るように、CPKの働きが抑制されることがある1。セシウム137に被曝するさい、遊離サイロキシンの量が増え、それがCPK(クレアチン・フォスフォキナーゼ)に影響するので、ミトコンドリア細胞を損傷することもありうる。この見かたは、ECG変異の頻度とセシウム137 の体内濃度が37 Bq/kg以上の子どもたちの血中サイロキシンのレベルが正比例して増えることから立証された(図13)。したがって、サイロキシンが不整脈の発現になんらかの寄与をしていると考えることができる。   
13:対照群および実験群の子どもたちの血清中サイロキシン(甲状腺ホルモン)と放射性セシウムの体内取り込み量の相関関係

男性の場合、CPKの働きが女性の場合より大きい1。セシウム137の影響下にある心筋細胞のなかで、この酵素が影響を受けやすいことが、男性の突然死の主因である可能性は除外できない。

心筋組織におけるアルカリ・フォスファターゼの働きの低下が変性過程の発症を示唆していることに注目しなければならず、これは電離放射線被曝の特徴である36

セシウム137を取り込んだ実験動物、あるいはまたセシウム137で汚染された地域に生きる人たちに観察されるミトコンドリア内部の構造変異の性質は、筋小胞体膜のCa2+カルシウムイオンに対する浸透性の減損を示している。これは、セシウム137の崩壊に伴う放射線と併せて、セシウム137が細胞膜の構造に直接与える影響と結びついているのかもしれない8, 29, 41。その結果、リン脂質の脂肪酸連鎖から生成される過酸化物は、細胞膜の構造および、カルシウムイオンなど、さまざまなイオン類に対する浸透性に変異を誘発することになる。同時にまた当然ながら、これが膜に縛られた酵素の働きに変異をおよぼすことになる。遊離水酸基ラジカルの過剰生成、並びに脂質過酸化反応の増幅は、細胞膜の破壊に寄与することになる。

心筋小胞体のCa2+搬送システムは、Ca2+放出・蓄積を通して、筋細線維の収縮・弛緩プロセスに活発な関与をしている。セシウム137など、さまざまな物質によって、このシステムが損傷されると、心筋細胞の遊離Ca2+値が上昇し、筋細線維の弛緩が阻害される。

収縮組織の病変は、筋細線維の二重光線屈折法で観察される、分節および亜分節収縮の発現、細胞内溶融、筋細線維のプライマリ・クラスタ崩壊、細胞融解、最終的には凝集や融解壊死といった病変に反映されている(32)。

分節型および亜分節型の収縮変性は、筋細線維A帯の異方性を偏光で強調することで確定される。光学顕微鏡で観察すると、密度が大きく、好酸球が増えているので、目で確かめられる。

10日分を体内に取り込んだウィスター系統のラットのセシウム137(濃度60100 Bq/kg)もまた、このような病変を誘発した(図14)。筋細線維のプライマリ・クラスタ崩壊において、異方性物質のあいだに等方性空隙が観察された(図15)。これは、細胞死を意味する、心筋細胞の深刻で不可逆的な損傷とは対照的である。多くの場合、突発的な心不全にプライマリ・クラスタ崩壊が見つかることに注目すべきである30, 31

14飼料中の放射性セシウムを取り込んだラット(体内濃度100 Bq/kg)の心筋の組織薄片。心筋細胞の筋細線維に拘縮の拡散。筋変性の増大。リンパ組織球細胞による焦点浸潤。ヘマトキシリンとエオシンで着色。倍率x 125

15出産時に死亡した女性の心筋の組織薄片。心臓における136Cr濃度は105 Bq/k。筋細線維のプライマリ・クラスタ崩壊。筋線維の剥離、筋間水腫。ヘマトキシリンとエオシンで着色。倍率x 250

細胞融解、つまり心筋細胞の生体内自己融解もまた、不可逆性の状態である。これはセシウム137の影響下で拡大しやすい(図1617)。

上記の病変は、セシウム137被曝だけでなく、中毒症状、低酸素症、機能過負荷による機能障害によっても14, 24, 40、ストレス反応の進展に寄与する極端な環境要因の影響によっても27, 28, 31観察される。このような反応のさい、心筋細胞にCa2+(カルシウムイオン)集積の増大が観測されている28

16セシウム137を投与された実験動物の心筋の組織薄片(体内137Cs濃度は900 Bq/kg)。びまん性筋細胞溶解。顕著な組織間浮腫。ヘマトキシリンとエオシンで着色。倍率x 125
1743歳で突然死したダブルシ住民の心筋の組織薄片。心臓の137Cs濃度は45 Bq/kg。びまん性筋細胞溶解。筋間浮腫。筋線維の断片化。ヘマトキシリンとエオシンで着色。倍率x 125

損傷のメカニズムに主導的な役割を担っているものは、心筋のβアドレナリン受容体に対するカテコールアミン類(ノルアドレナリンアドレナリン)の作用である。これは心臓の虚血性傷害とはまったく関係していない28

さまざま広範な要因による心臓に対する作用のメカニズム全体が、ストレス反応を通して影響される。カテコールアミン類の濃度が高くなると、電位依存性と受容体依存性を備えるカルシウム・チャンネルが開く回数とタイミングが増え、その結果、心筋細胞にカルシウムイオン(Ca2+)が集積する。刺激伝導系の細胞は、静止電位が低く、活動電位を司る入力イオン流は組成が基本的にカルシウムなので、より早期に、より甚大に損傷を受ける10。しかも、この系には、アドレナリン作用性神経支配が優勢である28

このプロセスの結果、細胞内Ca2+濃度が高い状態が形成される。心筋細胞からCa2+が不適切に放出されると、不整脈または脈動の乱れが起こりうる。われわれは、これが陽イオン性ポンプに直接関連していることを重視している。ポンプにエネルギーを供給する重要な役割を担っているのは、クレアチン・フォスフォキナーゼと糖分解システムである28。心筋の弛緩を引き起こし、細いアクチンと厚いミオシン筋細線維のあいだの架橋を壊すために、これらのシステムの働きを調整する必要がある。調整役のひとつが筋形質ATPアーゼであり、これはCa2+を運んで筋小胞体にある貯蔵槽に戻す。これは注目すべきことに、心臓の筋肉がそのエネルギー総消費量の15%を費やすエネルギー依存性のプロセスである25

汚染領域に生きる人びとが絶え間なくセシウム137に被曝し、その影響下にあって、大脳半球の細胞のノルアドレナリン生成を抑制されている23ことを考えるなら、カテコールアミン類が筋肉繊維の痙縮(訳注:筋緊張の亢進状態)を引き起こすのに主犯的な役割を担っていることは想像に難くない。これは、強いストレス反応を伴う場面で、まさしく起こり得たことである。セシウム137被曝の影響下にあっては現実に、細胞内のカルシウムイオン集積が、ミトコンドリア、筋小胞体構造など、細胞膜内のエネルギー供給システムの損傷に起因するエネルギー不足のために起こりうる。それこそ、細胞が適時な形でCa2+を放出できない理由である。カルシウムイオンは、遊離水酸基ラジカル類による細胞膜リン脂質の破壊のため、非常に集中して細胞内に入り込む。この状況では、重大な心筋の損傷は苦もなく引き起こされる。身体的激務、急性感染症状、アルコール中毒を原因とする長引くエネルギー不足によって、心筋の細胞死が起こることがある。

心臓は、体内137Cs濃度の上昇によって止まりうる。とりわけ、(5日間以内に濃度が1,000 Bq/kgに達するような)セシウム137の急激な大量投与は、ラットに心停止を引き起こした。この場合、放射性物質そのものが直接の死因になった。それほど大量でない場合、セシウム137の存在による心筋細線維の反復収縮の根本原因が、情動ストレスの原因になって、カテコールアミン類の放出を招いたとも考えられる。これは、長期にわたるセシウムの毒性作用のもとにあって、交感神経系の機能に進行性の抑制が働き、身体の適応余裕度を減衰させる17という事実にもとづいている。また同時に、セシウム137による影響下の心臓障害において、カテコールアミン類の役割を完全に除外するのはありえないことである。

このことは、慢性の胃腸病を患う子どもたちに対する臨床検査と検体検査の結果によって確認された。交感神経系過敏症状の頻度と体内137Cs量とのあいだに正比例関係があった。上記の知見にもとづき、137Cs取り込み期間に生じるカルシウム搬送系のエネルギー不足は、心臓の脈動中断、心筋細胞の収縮組織損傷、さらに最終的には心不全を誘発すると結論できる。

心血管系の傷害を、他の臓器と系、とりわけ腎臓と切り離して考えることはできない。セシウム137を体外に排泄する主要器官である16腎臓は、たとえ少量であっても、セシウム137によって重大な影響を受ける。腎臓はまた、心血管系が受けたものと同じような有害な作用を、他のなによりも糸球体組織に受ける6, 7。細動脈内の筋線維に、心筋で観察されたものと同一の病変が見つかる。筋細線維の痙縮は、長引く細動脈痙攣を誘発し、それ故、ネフロン(腎単位)構造に血行停止をもたらす。細胞構成要素の死は糸球体に特定の構造変異をもたらすが、これは「溶けるつらら」と呼ばれる現象である。栄養失調性および壊死性の病変は、糸球体の縮小および断片化を伴いながら段階的に発現する(図1819)。

18セシウム137のホールボディ濃度が900 Bq/kgである白変種ラットの腎臓の組織薄片。糸球体の空洞形成を伴う壊死および断片化。管状上皮組織の壊死および硝子質滴栄養失調。ヘマトキシリンとエオシンで着色。倍率x 250

19ゴメリの71歳、女性患者の腎臓組織薄片。腹腔の癒着、右肺上葉の硬化・繊維素化膿症状を伴う急性肺炎、両肺の水腫の複合により死亡。腎臓のセシウム137濃度300 Bq/kg。糸状体空洞に液体貯留。細管上皮組織に硝子質滴および水症性栄養失調。間質組織に浮腫。ヘマトキシリンとエオシンで着色。倍率x 250

顕著な細胞反応のない空洞の形成は、セシウム137が腎臓組織におよぼす影響に見られる特徴である。セシウム137は、細動脈の筋線維に異常収縮(過剰収縮)を起こさせる能力をもって、腎臓内部の血流の微小循環プロセスを損傷する。腎臓や他の臓器の損傷に即する適切な炎症反応が身体に備わっていないことは、強調されなければならない。われわれの見解では、これは専門化した細胞の炎症対応因子のような生物学的活性物質の合成が抑制されているためである。

損傷した糸状体は機能を停止する。セシウム137に被曝したときの腎臓の組織特性が、血栓性微小血管症のそれと同じなのは、偶然の一致ではない2。いずれの場合でも、腎単位の微小循環血流システムが細動脈のレベルで堰き止められ、壊死プロセスを招いているのである。

腎不全の進行が、体内に代謝老廃物や邪魔物が溜まるに溜まる理由である。セシウム137そのものの影響に加えて、老廃物や邪魔物は生命維持に必須の臓器と系に毒性の影響をもたらす。やはり特質的なものとして、漿膜(訳注:腹膜、胸膜、心膜など、内面や内臓器官の表面をおおう薄い半透明の膜)、とりわけ心膜(図20)と肋膜(図21)の炎症プロセスがある。

20体内137Cs濃度が900 Bq/kgである実験動物の心筋組織薄片。好中球およびリンパ球による心外膜および心膜の浸潤。筋変性が顕著である。ヘマトキシリンとエオシンで着色。倍率x 125

21体内137Cs濃度が900 Bq/kgである実験動物の肺組織薄片。血管破裂による肺胞内洞の鬱血。好中球、リンパ球、組織球による臓側胸膜浸潤。ヘマトキシリンとエオシンで着色。倍率x 125

腎臓脈管系の傷害が、子どもたちの血圧上昇、とりわけ拡張期血圧の上昇の主要な原因のひとつかもしれない。しかしながら、遅発性であるために隠されている道筋が、この病理プロセスに潜んでいると考えれば、目に見える結果が判明するのは、通常の治療法が匙を投げて、後の祭りになってからのことであるかもしれない。だからこそ、セシウム137で汚染された領域に生きる子どもたちの腎臓と心臓、両臓器の機能に対する継続的な評価を、最新式の研究室と科学技術的な診断法を駆使して実施しつづけるべきなのだ。

肝臓もまた、セシウム137の悪影響を受けている。ゴメリ州に生きていた人たちの肝臓に重大なレベルのセシウム137が見つかった6。たいがいの症例で、顕著な肝細胞の栄養失調性および壊死性の病変が組織検査によって判明した(図22)。

同様な病変は、セシウム137に被曝した実験動物にも見つかった。肝機能のなかでも、とりわけ合成および解毒(中和・無効化)機能に即発性の中絶が観察された。

22突然死した40歳のゴメリ州住民の肝臓組織薄片。肝臓内のセシウム137濃度:142 Bq/kg。幹細胞壊死を伴う脂質および蛋白の変性。ヘマトキシリンとエオシンで着色。倍率x 125

肝細胞の合成機能不全は、セシウム137の体内濃度の上昇にともなって、進行するL1グロブリンおよびL2グロブリン合成の減衰症状として発現する。これは疑いなく、心臓を含む他の臓器の代謝状態に影響をおよぼす。

ステロイド・ホルモン類、特に副腎皮質ホルモンの酸化が肝臓で起こる。副腎髄質のホルモンであるカテコールアミン類、ノルアドレナリン、アドレナリンの分解がメチル化反応を介して起こる。肝臓は尿素の合成にアンモニアを活用するので、その無毒化に非常に大きな働きをしている。肝臓の合成・無毒化機能の不全は、代謝機能障害を発現させ、心筋の状態に悪影響をもたらす。


それ故、セシウム137取り込みの結果、体内に発現する代謝機能障害は、心筋の構造および機能の障害に寄与しかねない。



23:放射性セシウムが心筋に影響をおよぼす経路
CPK:クレアチン・フォスフォキナーゼ ATP:アデノシン3リン酸塩)



◇◇◆目次◆◇◇

環境要因の結果としての心血管病理

放射能汚染地に生きる子どもたちの心血管系の病変

検死解剖に診るゴメリ州住民の心筋構造の病変

137Csに内部被曝した実験動物の体内の構造・代謝病変

4

放射性セシウムが心臓におよぼす作用の病態生理特性

結論・略語リスト・原書目次・参照文献


出処:International solidarity CHERNOBYL

原文:Radioactive Cesium and the Heart: Pathophysiological AspectsPDF


【論文】バンダジェフスキー「セシウムと心臓」 結論・参照文献

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◇◇◆目次◆◇◇


環境要因の結果としての心血管病理

放射能汚染地に生きる子どもたちの心血管系の病変

検死解剖に診るゴメリ州住民の心筋構造の病変

137Csに内部被曝した実験動物の体内の構造・代謝病変

放射性セシウムが心臓におよぼす作用の病態生理特性

結論・略語リスト・原書目次・参照文献

(訳注:米国在住の医師、平沼百合さん@YuriHiranumaによる
4章および「結論日本語訳
pdf.


出処:International solidarity CHERNOBYL

原文:Radioactive Cesium and the Heart: Pathophysiological AspectsPDF



放射性セシウムと心臓:
病理生理学的側面

医学博士、ユーリ・I・バンダジェスキー教授
by Professor Yuri I. Bandazhevsky, M.D.

論文原本出版:ミンスク、2001

ロシア語⇒英語・新訳:2013

Bandazhevsky Y. Radioactive cesium and the Heart: Pathophysiological Aspects.
"The Belrad Institute" 2001. - 64 pp. ISBN 985-434-080-5
   
23:放射性セシウムが心筋に影響をおよぼす経路
CPK:クレアチン・フォスフォキナーゼ ATP:アデノシン3リン酸塩)

結論

わたしは本書を執筆しながら、人体に取り込まれ、摂取された放射性元素が突きつける脅威に関して、文明社会のすべての人に情報を伝える必要について考えつづけていた。今日の社会は不幸なことに、よく言っても、この問題に無関心である。そして、この無関心の代価として、われわれは最高価格――人間の命――を支払っている。知的な人びとの無知は、悲劇を招く。大いに非難されるべきは医学者たちであり、彼らはすでにわかっているデータを活用して、人びとの関心を高めようとするどころか、放射性核種の体内取り込みによって、身体に現れる悪性の変異を研究しようともしない。

わたしは、現にある問題に関する情報の全般的な欠落に対して、この小冊子が埋め合わせにもならないと理解している。それでもやはり、わたしは、本書がこの課題への関心を呼び起こし、状況に関するさらなる議論を促すようにと願う。そうなれば、疑いなく有益だろう。

提示された情報にもとづき、われわれはいくつかの結論に達することができる。

好き嫌いにかかわらず、放射性核種、とりわけセシウム137はわれわれの環境に存在する。なんらかの防護策がなければ、放射性核種は主として食物と水を通して人体に入り込み、やがて臓器や細胞組織に取り込まれる。

成長期の人体の心筋に放射性セシウムが取り込まれると、人命に最も危険である。

セシウム137が心筋細胞に入り込むと、つづいて構造性および代謝性の病変が生じ、エネルギー不足と主要機能の不全を誘発して、ある場合には、死を招く。一連の病変がつづき、心臓の働きを制御する多臓器および系の損傷と併せて、心筋に対する直接的な損傷を示唆する。

心筋細胞は放射性セシウムによって直接の損傷を受けるだけでなく、自然代謝生成物の生産、搬送、結合、排泄、分解が滞っても、やはり傷害をこうむる(図23)。

病的な変異の深刻さの程度は、全身および心筋に取り込まれたセシウム137の量に正比例する。長期にわたってセシウム137を体内に取り込み、30 Bq/kg以上に達するのは、極めて望ましくなく、重大な結果を招くことになる。

1020 Bq/kg程度の体内137Cs濃度では、たいがいの場合、死を招くようなことはない。しかしながら、セシウム137がエネルギー組織にもたらす影響によって、心筋細胞の適応能力は著しく減退する。その結果、心身のストレス、低酸素症、極端な気温の変動、過剰飲酒、感染疾患、アレルギーなど、さまざまなストレスのかかる状況、あるいは普通の状況であってさえ、それぞれの心筋細胞が適切に機能するのが不可能になる。

われわれはセシウム137が極めて有害な毒物であると認識すべきであり、それが細胞に対する遅効性の毒であるとみなさなければならない。(編者注:これは、実験研究および遺体解剖された患者の組織によって実証されているとおり、いわゆる「低線量」のセシウム137が汚染食品に紛れ込んで、日ごとに摂取されているいま、格別に真実である)

セシウム137は心筋細胞のエネルギー機構を蝕み、不整脈、心筋の異常収縮、末梢血管の痙攣を代表とする心筋症を引き起こす。人体および動物の生体に取り込まれた放射性セシウムの影響は、前提として、まず第一番に、化学物質として合成および代謝プロセスに介入するのであって、放射線源としてではないと言及しておくことは重要である。しかしながら、後者を全面的に排除することはできない。

このことは、長期にわたって少量のセシウム137に被曝することについて特に顕著である。セシウム137の影響による腎臓の病的な変異の主要な原因は、細動脈の痙攣であって、糸球体ループの壊死および腎単位構造の破壊を引き起こす。セシウムの血管収縮作用は、1888年にSS・ボトキンによって記述されている11

したがって、セシウム137は、汚染地域に生きる子どもたちの高血圧の主要病因のひとつになっている。このことはおびただしい数の観察によって確認されている20

チェルノブイリ事故で被災した地域に生きる住民の心血管系疾患を予防するための基本として、当面の課題は、放射性核種の量を減らすこと、なによりも食品に含まれるセシウム137の量を削減し、同時に吸収剤の助けを借りて体内から除去することによって、体内のセシウム137を減らすことである。これらの対策は、心筋の代謝プロセスを改善するための重要な働きを担うことになるだろう。


略語リスト:

ATP        adenosine triphosphate     アデノシン3リン酸
CPK       creatine phosphokinase   
クレアチン・フォスフォキナーゼ
LPO       lipid peroxidation              
脂質過酸化反応
GIT        gastro intestinal tract        
消化管; 胃腸管
ECG       electrocardiogram             
心電図
WBC      whole body count                           
ホールボディ計測

英語版目次:

by Professor Yuri I. Bandazhevsky, M.D.

Introduction.                  3
Cardiovascular pathology as a result ofenvironmental factors
序論:環境要因の結果としての心血管病理

Chapter 1.                        5
Changes in cardiovascular system of children living in territory contaminated with radionuclides
1章:放射能汚染地に生きる子どもたちの心血管系の病変

Chapter 2.                        12
Structural changes in myocardium of Gomel region residents according to autopsies
2章:検死解剖に診るゴメリ州住民の心筋構造の病変

Chapter 3.                       15
Structural and metabolic changes in bodies of laboratory animals internally exposed to 137Cs
3章:137Csに内部被曝した実験動物の体内の構造・代謝病変

Chapter 4.                       20
Pathophysiological characteristics of effects of radioactive cesium on the heart
4章:放射性セシウムが心臓におよぼす作用の病態生理特性

Conclusion                      33

List of Abbreviations     35

References                      35



◇◇◆日本語版目次◆◇◇


環境要因の結果としての心血管病理

放射能汚染地に生きる子どもたちの心血管系の病変

検死解剖に診るゴメリ州住民の心筋構造の病変

137Csに内部被曝した実験動物の体内の構造・代謝病変

放射性セシウムが心臓におよぼす作用の病態生理特性

結論・補追

結論・略語リスト・原書目次・参照文献

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◇◇◆目次◆◇◇


環境要因の結果としての心血管病理

放射能汚染地に生きる子どもたちの心血管系の病変

検死解剖に診るゴメリ州住民の心筋構造の病変

137Csに内部被曝した実験動物の体内の構造・代謝病変

放射性セシウムが心臓におよぼす作用の病態生理特性

結論・補追

結論・略語リスト・原書目次・参照文献

【被曝地報告】リチャード・ウィルコックス「日本の放射性ポチョムキン村~政府の裏表あるデータ」

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日本の放射性ポチョムキン村
政府の裏表あるデータ

Japan's Radioactive Potemkin Village:
The Government's Double-Dealing Data

リチャード・ウィルコックス博士
2014
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「リスボンに飛ぶ飛行機に乗りたいのだろ?
どうしてだ…リスボンになにがある?
アメリカに帰国するのだ。おれは、お前はなぜアメリカに帰らないのかとよく考えたものだ。教会の資金を持ち逃げしたのか? 上院議員の妻と駆け落ちしたのか? 人を殺したのだと考えるのが、ロマンチックな気がして好きだった。
三つ全部、合わさっているのだ。
天の国のなにがおれをカサブランカへ連れていったのだ?
おれの健康だ。水を求めて、カサブランカに来たのだ。
水? どんな水だ? おれたちは砂漠にいるのだぜ。
おれは騙されていたのだ」

――レインズ&ボガート、カサブランカ(1942年公開映画)

自分が間違っていると思って立ちどまっているが、わたしが最近、二本松市で面と向かって目撃したのは、日本政府側のガンマ放射線レベルに関する科学的な事実のごまかしと露骨な虚偽の説明の他のなにものでもなく、そのために何万人もの住民に早すぎる死をもたらすことになると解釈できるものだった1。わたしは、福島第一原子力発電所の核惨事現場周辺の避難区域のすぐ外側に位置する小ぶりな街、二本松の近郊の美しい土地に設置された核難民キャンプを訪問した2

二本松は、20113月の三重メルトダウンでひどく放射能で汚染した福島第一原発から近い地域にある典型的な中都市である。風向きのせいで、原発の南側は北西側ほどには汚染されなかった3。昨年の夏、わたしは南側から原発のほんの数キロ手前まで行ったのだが、計測値が0.5マイクロシーベルト/時を超えることはなかった。(0.1マイクロシーベルト/時が、正常な環境で人が浴びる線量であることを思ってみよう)

0.5マイクロシーベルト/時といえば、平静でおれないほど高い線量だが、わたしが二本松で体験した2マイクロシーベルト/時ほどではなかった。(農民や遊び盛りの子どもたちのように)屋外ですごす時間にもよるが、これでは年間19ミリシーベルトに達し、公式限度値の年間20ミリシーベルトを辛うじて下回るだけである。3.11核惨事以前、日本政府は一般人の被曝安全限度値を年間1ミリシーベルトに定めていた。

(写真 © Richard Wilcox, 2014

二本松、現実の放射線レベル:1時間あたり2.17マイクロシーベルト
仮設住宅団地はかつての野球場だった崖上の土地に設置され、
周囲の農村や山地の美しい景観を臨んでいる。
放射線に対応する日本版ポチョムキン村の入り口。二本松に設置された政府のモニタリング・ポストは0.143マイクロシーベルトという精密な数値を示しているが、そのすぐ近くの周辺区域は除染されている。この低レベル放射線量とされ、現実に反する擬似事実は、政府やメディアによって大々的に広報される。

政府が設置した放射線検知器は大型の機械であり、わたしたちボランティア・グループが訪問した仮設住宅団地の中央事務所棟の前に立っている。

公的なガイガー計測器の近くで測った、わたしの計測器の数値は同じ程度だったが、仮設住宅の住民会長、本田さんがわたしたちに説明したところによれば、政府が機械の設置場所の周辺を除染しているからとのことである。

説明を受けたあとで測ってみると、数値はかなり上下に振らついたが、わたしがそこにいた数時間分を平均すれば、0.14マイクロシーベルト/時だった。

仮設住宅の周辺を歩いてみると、わたしの計測した空中と地表の放射線数値は1から2マイクロシーベルト/時超まで大きくばらついていた。

その団地は「仮設住宅」と考えられていたので、その時まで除染されていなかった。除染にあてる労働力と資金が限られているので、恒久的な住宅地が優先されていた。安倍首相が度をこして派手なオリンピック事業者のポケットに納税者の助成金を潤沢に注ぎ込む余裕を見せていることを考えると、なんとも皮肉なことである42020年のほんの数日間を東京ですごすだけのアスリートたちに供用する豪華な部屋と、二本松の住民たちが何年も耐え忍ばなければならないものと、どうのように比べればよいのか、はてさて? 後者に属する人たちは企業子飼いのアスリートに比べれば、ただの廃棄可能な人間のクズなので、どうでもいいのだ。ランス・アームストロングを見るがよい。

インタビュー本田さん
わたしの仲間、タカハシ・ミホとわたしとで2014329日、二本松で最大の仮設住宅団地の住民会長である本田さんにインタビューした。

柔和な物腰、親切だが、物怖じしない本田さんは「政府が嘘をつき、正直で率直な姿勢で状況に対処していないものですから、皆が怒っているのですよ」という。

Q:この仮設住宅に何人お住いですか?

A238世帯の538人が住んでいますが、そのうち67人が独居老人です。安達仮設住宅の子ども(小・中学生、高校生)は70人です。毎日の登下校に、スクールバスが5台来ます。子どもたちは遠くの学校に転校させられ、友だちがバラバラになりましたので、大変なストレスに耐えています。

安達仮設住宅の狭苦しい家並み。
午後の陽光のなか、少年が楽しそうにローラボードで遊び、春の雪解けを喜ぶ。
Q:二本松市内に、フクシマ核惨事避難者の仮設住宅団地は何か所ありますか?

A11か所ありますが、ここが最大の仮設住宅団地です。他にも、この辺りのさまざまな場所に核事故・津波避難者用の施設がたくさんあります。

Q:東電の事故補償について、どのようにお考えですか?

A:十分とはいえません。東電はわたしたちに一人あたり年間120万円くれました(12000ドルに満たない)。5年分として一人あたりで600万円受け取りました。よそへ引っ越す余裕はまったくありません。わたしたちは浪江町では自給生活していましたが、いまでは食べ物を買わねばなりません。

家賃を払う必要はありませんが、光熱費はかかります。わたしたちが東電と政府の過失のために避難を余儀なくされた浪江町で、わたしたちは3.11まで幸せに暮らしていました。でもいまは、帰宅を強く望んだとしても、高レベルの放射線がわたしたちの帰還を阻んでいます。

Q:みなさんが避難を強いられたご自宅の様子はいかがですか?

A:浪江の町民は、自宅の清掃やネズミ害予防などのために、4時間ばかりの帰宅が月に3回ほどできます。浪江では、平均放射線値が6から7マイクロシーベル/時であり、35マイクロシーベルに達する場所もあります。こういう数値は現在の年間20ミリシーベルト法定限度を大きく超えていますが、それでも仮設住宅の住民は定期的に帰宅して、自宅の維持管理とネズミの防除にあたっています。

地域では、多くの人たちが家族や縁者を津波で失いましたが、そのとき、極度の放射能のために彼らの捜索を阻まれました。口にするのも痛々しい話です。

Q:なぜ仮設住宅は除染されていないのですか?

A:高レベルの放射能に被曝する、これほど危険な仕事はだれもしたがりませんので、除染作業にあたる働き手が不足しています。そこで当然ですが、福島第一原発の除染とまったく同じで、作業員が不足しているのです。この辺りを除染するのに、いまから3年ばかりかかるでしょう。おまけに、わたしたちの住宅は「仮設」ですので、優先権は地元の定住地域に与えられています。二本松のみなさんは、放射能に汚染された土壌で畑仕事をやっています。わたしたちは食品中の放射能を心配していましたが、そういう食品は安価であり、入手しやすいので、みなさんはもはやそのような食品を食べるのを心配しておりません。

福島の冬は雪が深く、3月下旬になっても雪が残る。
Q:状況がどれほど改善されたとお考えですか?

A3.11以来、3年たちましたが、抜本的な対策が状況を改善したということはありませんでした。時おり、一般の注目を集めるために集会やデモを実行しようかと思いますが、実行に移すのは難しいです。改善といえるのは、ここのみなさんが2年以内に「公共復興住宅」に入居できるようになることです。同じ二本松市内であり、小さく手狭な点では、いま住んでいる仮設住宅と変わり映えはしませんが、快適な点ではいくらかよくなります。たとえば、新しい住宅では、冬に水道管が凍結する恐れが少なくなります。

Q2020年東京オリンピックが福島に前向きの影響をもたらすとお考えでしょうか?

A:いいえ、そうは思いません。神戸市は1995年の阪神大震災のあと、3年で再建されました。わたしたちがここに来て3年になりますが、福島はいまだに惨憺たる状態のままです。東京の経済人の一部にとって、オリンピックは金になるのでしょうが、遠く離れた福島や東北のわたしたちにオリンピックが役に立つかどうか、わかりません。

気前のよい本田さんはインタビューが終わると、帰路につくわたしたちボランティア全員のために自動販売機の缶入りコーヒーを買ってくださった。

汚染された居住環境

それにしても、町のコンビニエンスストアは資金と手段を備えているので、駐車場の除染を終えていた。わたしは本田さんと住民たちがもっと大きな声で抗議すべきだと思うが、みなさんは微妙な立場にあり、文句をいえば、入居許可を失うのではと恐れている。

わたしがひとりの除染作業員に話しかけてみると、彼はわたしの憶測を裏付け、福島第一原発からこの程度の距離では、2マイクロシーベルトが標準であると話してくれた。郡山では2マイクロシーベルトになることが多く、除染しても放射線は半分になるだけだと彼はいう。

福島の住民が事故当初からの負の遺産に耐えているだけで終わらず、毎日、大量の放射能が福島第一原発災害現場から空中と海中に放出されつづけている5。事実上、除染作業とは、ある場所から別の場所への汚染の移動であって、除去では決してないので、「除染事業」そのものが論争の的になっている。

政府は、この地域の放射能レベルが大幅に下がったと主張しているのだが、真実を語っているのは、どっちなのだろうか――本田さんやわたしの出会った除染作業員なのか、それとも政府なのか?6 文部科学相はウェブサイトで、避難区域内のいろいろな場所で放射線レベルが0.2ないし0.5であると主張するが、わたしが目撃したように、線量計測装置の直近周辺を除染してから計測しているなら、低レベルの理由もわかるというものである。

放射線量計測にまつわり、最近、浮上した政府のスキャンダルを含め、愚行の歴史がある7, 8。政府はいま、冷徹なデータの公表を差し控えながら、住民に死の地帯への帰還を無理強いしようとしている9, 10。地元の地方自治体は人口の減少を心配し、妊娠中の女性が戻るなら、住宅を無料提供している。ある専門家が述べている――「福島県外から戻ってくる避難者のための新規住宅支援計画というのがあります。これは主として妊娠中の女性と子どもを対象にしています。妊娠中の女性、または子どもたちが福島県に戻ると決心すると、福島県は新築で非常によい住宅を無償で提供します。連中が導入する、この類いの政策は、地方自治体が人びとに県内に戻ってもらいたがっていることを意味しています。ですから、これは女性や子どもたちの健康によい状況ではありません」11

信じられないことに、子どもたちは一日あたり8時間以上、屋外ですごさないという仮定のもとに「福島の学校と保育所の放射線量限度は3.8マイクロシーベルト/時である」12。とある2012年の事例では、映画撮影チームが避難区域を車で突っ切っていたとき、5ミリシーベルト/時の線量を経験したと報告している13。これは一日で生涯線量を浴びることに相当し、また疑いなく、このようなホットスポットが避難区域のあちこちにいっぱいある。

プルームは悪い知らせ

核の危機にまつわる政府の不正行為は実に青白く犯罪的で極悪非道の邪悪を超えている。政府をして事故のさなかに国民を守らせないものは、愚かしさだろうか? それとも官僚的な杓子条規か、ジェノサイド的な人口削減を期す国際プランなのだろうか?

学者、カイル・クリーヴランドは「放射能プルーム政策とSPEEDI惨事」を論じる重要な研究報告に次のように記している――

「浪江町の馬場有町長には、事前に東京電力と調整した精緻な避難計画も持ち合わせず、当初に事故を知ったのは、TVを観たからであり、彼の町を危険にさらすことになった、思慮のなさに苦々しく憤慨した。日本政府との連携もなかった。なにもない。馬場有町長はこういう――『彼らはわたしたちに、どこへ避難しろとも告げませんでした。なにもいわなかったのです。浪江町はすべてのことを自分たちでやりました。がっかりしたことに、わたしたちは政府からなにも聞いていませんでしたので――勧告もなかったのです――わたしたちに使えるものはなんでも――スクールバスでもなんでも――町民を地域から移動させるために使いました。町民たちの車は津波で破壊されていましたので、そういう人たちをバスに乗せました。そのときには、自力で逃げられる人たちはすでに宮城県や山形県へ逃げていました。ですから、21000人の町民はミツバチの集団のようにすべてバラバラになりました。情報がないものですから、わたしたちは放射線レベルの高い地域に知らずに避難してしまいましたので、わたしは町民の健康を非常に心配しています。わたしは心に痛みを感じていますし、政府の情けない措置には怒りを覚えます…ことばは悪いですが、わたしはあれは殺人行為だったとやはり考えます。人びとの尊厳と命がかかっていたのに、彼らはなにを考えていたのでしょう? わたしは、彼らがわたしたちの存在すら考えていなかったのではと訝っています』14

多くの人たちが、とりわけ子どもたちの健康を守りたい人たちが福島県から逃げた15。もちろんのこと、福島県は唯一の放射線被曝地ではなかった。研究者のひとりが、事故で放出された高度に放射性のホット・パーティクルが福島第一原発から500キロメートルも離れた場所に着地したのを見つけた16のであり、事故後の1か月間、日本の人びとだけでなく、北アメリカの人びとでさえ、そのような粒子を肺に吸入していたのである。

政府を信用できますか?

日本政府の公的な原子力規制庁ウェブサイト17によれば、東京のガンマ放射線値はただの0.034マイクロシーベルト/時である18, 19。この数値は、東京市街地の主要拠点、新宿の地上22メートルで計測されたもの。幸運というかどうか、わたしはその地点からそれほど遠くない場所に住んでおり、アパート建屋の地上から数階上にある自室の窓辺で測ってみると、いつも決まって0.13マイクロシーベルト/時あった。政府の放射線マップによると、地上1メートルの推測値は0.061マイクロシーベルト/時であった。わたしの住んでいる場所で地上1メートルで測ってみると、数値は0.12マイクロシーベルト/時だった。

この顕著な不一致を、どう説明しようか? 装置のせいか、測定地点の違いだろうか? 政府のマップは東京市街地全域の平均値を0.061としており、まるでそれが正確な遠隔計測値であるかのようだ。わたしは、政府と関係当局が次のような2点の主要戦術を採用していると信じている――

1.      モニタリング装置を地上高くに設置し、当然にも地表や溝の中にある最悪の放射線を読み取らないようにする。

2.      モニタリング装置に直近の区域を磨きあげ、除染して、低めの数値を創作する。

低めの数値を出すように装置の校正方法をいじくったり、公表値を操作したりすることもありうるが、わたしがこのような憶測の証拠を個人的に掴んでいるわけではない。

核推進体制とその手先らが宣伝する放射線科学にまつわる問題の多くは、その方法論にかかわる要因を制限し、結論を導き出すさいに予防原則を排除している点にある。言い換えれば――(たとえ、あなたのミトコンドリアDNAが傷ついても)クヨクヨせずに、ニコニコ笑っていよう、というわけである。

福島の事故後、わたしはわが子の学校の校庭の計測を個人的にした。わたしの計測値は、学校側が最悪の放射線量を避けるために校庭のうえで測って、報告している放射線値よりいつも確実に高かった。

わたしが3月に米国中西部にいたとき、地上および地表の屋外計測をやってみると、0.08から0.13マイクロシーベルト/時あった。わたしたちはいま、太陽や土壌からの自然背景放射線に加え、地上核実験、原子力発電所からの放出、核事故による人工放射能で汚染された世界に生きている。

この目でわたしが二本松で目撃したものは、科学を装ったペテンであり、事実を曲げた虚説だった。このことは、わたし自身の線量計の数値によって、それに仮設住宅団地住民会の会長である本田さん、わたしが対話した熟練の建設・除染作業員さんご両人の証言によって実証されている。

住民を死の地帯に送り返す

日本は、放射線のために「福島の癌発症率の拡大なし」20という国連発の楽しいニュースと歩調を合わせて、死の地帯へ住民を戻すという強力な無理強いをしてきた。一部の住民たちが故里を忘れられず、帰還したがる一方で、放射能の危険のため、多くの人たちは帰還に慎重である21。優れたウェブサイトSimply infoが、フクシマ核惨事由来の癌はありえないとする詭弁的な説を唱える最近の国連報告の骨子を次のようにまとめている――

UNSCEAR(放射能の影響に関する国連科学委員会)は、フクシマ核惨事に由来する、いかなる癌の可能性をも詭弁で言い抜けるために、癌の根本原因を究明することができないという事実を利用している。この戦術はタバコ業界やアスベスト産業で周知のものになっている。

UNSCEARが使ったデータの出処は、基本的にIAEA(国際原子力機関)、東京電力、そして日本政府である。フクシマのできごとを追っている者ならだれでも、このような情報源のどれひとつとして公正で正確であるとは考えられないと知っている。このような組織を出処とするデータの妥当性について、たくさんの異論がある。UNSCEARは他の情報源からのデータを無視しているのだ」22

いくつかの研究が、低レベルと高レベルのどちらの場合でも放射能が安全だとはいえないと問題にし、国連のリスク評価モデルの妥当性に疑問を投げかけている23, 24, 25, 26, 27, 28

研究によって、放射線が生物にもたらす傷害に関する反駁の余地のない証拠が示されており、四半世紀以上も前のチェルノブイリでも、今日のフクシマでも、野生生物に対する数限りない形態の損傷がすでに見つけられている29, 30。核時代に空飛ぶ同類の鳥たちは、皆もろともに死んで地に落ちる31

ボランティアは語る

わたしの仲間であり、津田塾大学の学生、タカハシ・チホは最近、安達仮設住宅団地の人びとを支援するボランティア体験を次のように書いている――

2012年の11月、わたしは初めて二本松の安達仮設住宅に赴いた。わたしたちのイベントに参加した子どもたちのほとんど全員の背はわたしよりも低かったが、そのわたしの身長は148センチである。しかし、それから1年半、定期的に訪問していると子どもたちの背が伸びていることに気づいた。そのような形で、わたしは時間の経過を測り、被災者の暮らしが『仮』のものではまったくなく、長期にわたり地に付くものであると知ることができた。

「小学1年生だった子どもたちは3年生になった。中学1年生だった子どもたちは高校生になった。わたしは『これが仮設暮らしと思えるかしら?』と自問した。そうは思えなかった。

2013年の2月、わたしは安達仮設住宅で年配の男性のお宅にお邪魔する経験をした。その方は、まったくの一人暮らしだった。段を踏み上がり、小さな住宅に入った。間取りは、台所、居間、寝室、風呂場の4部屋だった。彼はわたしをコタツのある居間に案内し、とても寒い日だったので、コタツに入りなさいとすすめてくれた。わたしたちは午後の30分間、話をし、彼はお子さんたちやお孫さんたちのことを話してくれたが、東京都と宮城県に住んでいるので、めったに会えないという。彼は、3.11災害のせいで浪江から二本松への引っ越しを強いられるまで、自家用の大型トラックで林業と農作業に従事していたと誇らしそうに語った。その時以来、すべてを失い、真っ昼間から飲む以外にすることがなかった。今のテーブルのうえに何本かのお酒と芋焼酎の瓶があった。

「彼の悲しい話を聞き、わたしは『大変ですね』としかいえなかった。わたしは彼の役に立てないと感じたけれど、この話を東京の人たちに伝え、二本松の仮設住宅の生活がどれほど大変なものであるか、彼らに知ってほしいと願う。

「わたしは多くの人たちに、わたしが東北で見聞し、感じた体験を知ってほしい。わたしには政府のように大金のかかるプロジェクトは実行できないが、『小さい』と見えるにしても、大事なことを貴重な友人たちと共にしようとするべきであるといつも思ってきた。このような形で、おそらくわたしは、東京の人たちが、たとえ一時に一人が相手でも、福島や東北の災害避難者たちの力になるよう、勧めることができることだろう。わたしたちのささやかなボランティア活動は、仮設住宅の皆さんの役に立つことを目指して、二本松に行く努力、ただ一つのことだが、それぞれの人がささやかでも心のこもった努力をつくせば、大きな効果を生みだすかもしれない」

【筆者】

リチャード・ウィルコックスRichard Wilcoxは東京在住、環境研究関連の博士号を保持する教師・作家であり、フクシマ核惨事の実情暴露で世界を主導するRense.comの常連投稿者。ウィルコックスはまたActivist Postにも投稿している。ラジオ・インタビューと記事のアーカイブはhttp://wilcoxrb99.wordpress.comにまとめられているし、ラジオまたはインターネット・ポッドキャストでフクシマ危機を論議するためのインタビュー申し込みEメール連絡先は、wilcoxrb2013@gmail.com

【参照文献】

1.      Richard Wilcox discusses how the Japan government lies about radiation levels, with Jeff Rense, April 1, 2014
http://rense.gsradio.net:8080/rense/special/rense_Wilcox_040114.mp3
Rense.com
http://www.rense.com

3.      早川由紀夫教授の放射能汚染地図(八訂版)
http://kipuka.blog70.fc2.com/blog-entry-570.html
Professor Yukio Hayakawa's Radiation Contour Map of the Fukushima I Nuke Plant Accident
http://ex-skf.blogspot.jp/search?q=hayakawa+radiation+maps

5.      Tepco NOT to analyze Plutonium or Uranium in bypass water before discharging to the Pacific
http://fukushima-diary.com/2014/04/tepco-not-to-analyze-plutonium-or-uranium-in-bypass-water-before-discharging-to-the-pacific/

6.      Readings at Monitoring Post out of 20 Km Zone of Fukushima Dai-ichi NPP by Municipality (March 28, 2014)
http://radioactivity.nsr.go.jp/en/contents/9000/8222/view.html

7.      Japanese Government Now Admits 675 Radiation Monitoring Posts Show "10% Lower" Than Actual Levels, "
http://ex-skf.blogspot.jp/2012/11/japanese-government-now-admits-675.html

9.      Gov't eyes swift lifting of Fukushima evacuation orders to limit damages payouts
http://mainichi.jp/english/english/newsselect/news/20140402p2a00m0na011000c.html

10.   Government team keeps high radiation data on three Fukushima municipalities from the public
http://japandailypress.com/government-team-keeps-high-radiation-data-on-three-fukushima-municipalities-from-the-public-2646381/

12.   The radiation dose limit of Fukushima schools and kindergartens is 3.8 ?Sv/h / MEXT “Unrealistically low”
http://fukushima-diary.com/2014/04/the-radiation-dose-limit-of-fukushima-schools-and-kindergartens-is-3-8-?svh-mext-unrealistically-low/

16.   The Hottest Particle
http://fairewinds.org/hottest-particle/
【日本語訳】一番ホットなホット・パーティクル
http://besobernow-yuima.blogspot.jp/2014/04/fairewinds.html

17.   Monitoring information of environmental radioactivity level
http://radioactivity.nsr.go.jp/en/

18.   Estimated and measured 1m height environmental radioactivity level at monitoring posts in 47 prefectures (Monitoring Date: March 31, 2014)
http://radioactivity.nsr.go.jp/en/contents/9000/8223/view.html

19.   47 prefecture radiation levels, March 31, 2014
http://radioactivity.nsr.go.jp/en/contents/9000/8223/24/192_20140331_20140401.pdf

20.   U.N. report finds no increase in Fukushima cancer rates
http://ajw.asahi.com/article/0311disaster/fukushima/AJ201404020056

22.   IPPNW Disputes Accuracy Of UNSCEAR Report On Fukushima
http://www.fukuleaks.org/web/?p=12746

23.   Goddard’s Journal: Fukushima Radiation Not Safe!
http://www.youtube.com/watch?v=ywKv0dj3UuY&list=PLcp63Rw5m_QcohHCu3jEFSFuEF4Va2HHh

24.  フクシマの子どもたちの発癌リスクは過小評価
http://besobernow-yuima.blogspot.jp/2014/04/cancerrisk-to-young-children-near.html

26.   WHO Lies Refuted: Physicians’ Group (IPPNW) Predicts 100,000+ Fukushima Cancer Incidences/Deaths
http://rense.com/general95/wholies.html

27.   Powerful Lies - The Fukushima Nuclear Disaster And The Radioactive Effects On Human Health
http://rense.com/general95/powerful-lies.html

28.   A World In Denial: Underestimating Japan’s Nuclear Disaster
http://rense.com/general95/worldindenial.html

29.   Chernobyl, Fukushima, and Other Hot Places Major Findings from studies of Wildlife in Chernobyl and Fukushima
http://www.totalwebcasting.com/tamdata/Documents/hcf/20130311-1/Mousseau-NYAM-Caldicott-edited.pdf


31.   Birds Could Be Flying Japan Radiation Around Pacific Rim
http://www.earthweek.com/2014/ew140404/ew140404b.html

核戦争防止国際医師会議「UNSCEARフクシマ報告の批判的分析」のご案内

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【訳者によるまえがき】


冒頭の文書は、ドイツからBCCで発信されたEメールを日本語訳したものです。国連を舞台にした、フクシマ核惨事の影響を矮小化する策謀に反撃するためには、国際的な舞台で狼煙を高くあげなければならないはずです。読者のみなさんには、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)の活動にご注目と情報拡散にご協力のほど、切にお願いいたします。

親愛なるみなさん

本日、世界各国のIPPNW(核戦争防止国際医師会議)加盟19団体がフクシマに関する最近のUNSCEAR報告に対する批判的分析を公表しました。

UNSCEARとは「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」のことであり、核推進諸国の代表で構成されており、核エネルギーに既得権益と偏った見解を保持しております。フクシマ核惨事に関する彼らの報告は、独立系の情報源よりも、主として核産業による出版物のデータにもとづくものであり、放射能被曝の命にかかわる重大な側面を排除し、あるいは曲解しており、さらにその計算方法は、疑問のある憶測にもとづいています。

わたしたちは、この報告の見るからに系統だった過小評価と疑問のある説明が、核産業によってフクシマの破局的な核惨事で予測される健康被害を過小評価するために利用されると懸念しています。この理由により、わたしたちはUNSCEAR報告の包括的な分析を編纂しました。どうか、ご一読のうえ、広く拡散していただくようにお願いいたします――

このメールに添付されている1ページの文書は、わたしたちの批判の骨子を記したものです。この文書は、みなさんの地域のメディア向け、または全国メディア向けのプレスリリースの叩き台に使えます。どうぞ、フェースブック、Eメール、ホームページ、ブログなど、あらゆるメディアを駆使して、ご自由にシェアしてください。

最後になりましたが、みなさんのコメント、提案、質問、ご連絡をお待ちいたします。みなさんの団体がまだリストに挙げられていなくて、ぜひ賛同団体に加わりたい場合、わたしどもにご連絡ください。まだリストのスペースに余裕があります。

ベルリンから、ご活躍をお祈りしつつ

アレックス・ローゼン博士
IPPNW
(核戦争防止国際医師会議)ドイツ

Dr. Alex RosenIPPNW Germany
【Eメール文中リンク先ページ】

UNSEAR報告に対する批判的分析


Critical Analysis of the UNSCEAR Report
2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」

原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は201442日、完成版報告書「2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」を公表した。

同報告は、独立系の独立系の情報源よりも、主として核産業による出版物のデータにもとづくものであり、放射能被曝の重大な側面を排除し、あるいは曲解している。報告書中の計算の基礎に用いられた前提のいくつかにも疑問がある。われわれは、この報告の見るからに系統だった過小評価と疑問のある説明が、核産業によってフクシマの破局的な核惨事で予測される健康被害を過小評価するために利用されることを懸念している。

以上の理由により、われわれはUNCSEAR報告に対するわれわれの医学・科学的識見を公表し、まず同報告にわれわれが同意できる点をあげるとともに、つづけて10点の主要な批判項目を述べる――

IPPNW(核戦争防止国際医師会議)「UNSCEAR報告の批判的分析」 
Ÿ      英文PDFダウンロード   日本語訳:IPPNW USAにて準備中
【プレスレリース】
Doctors: UNSCEAR report systematically underestimates health effects of the Fukushima nuclear catastrophe (PDF)

PSR/IPPNWUNSCEARフクシマ報告書の批判的分析」:
プレスリリース日本語版 日本語版印刷用PDF








【海外論調】リチャード・ウィルコックス「安全な線量はない~日本の低線量放射線危機」

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当ブログでは、リチャード・ウィルコックス博士のルポルタージュ「日本の放射性ポチョムキン村~政府の裏表あるデータ」を64日付けで掲載しましたが、今回は同博士による低レベル放射能被曝の危険性に関する論考をお届けします。

原文の初出は20127月であり、少し古いといえば古いですが、リスクの全体像を理解するうえで、まったく色褪せていないようです。被曝による健康リスクは、数十年、数百年のタイム・スケールでわたしたちと子々孫々が付き合わなくてはならないはずの課題ですので、古びないのも当然ですね。



安全な線量はない~日本の低線量放射線危機
No Safe Dose - Japan's Low-Dose Radiation Disaster

リチャード・ウィルコックス Richard Wilcox
Rense.com
独占記事 201279

「グローバル化は、金持ちが計り知れないほど、悪辣なまでに、さらに富みを増やしさえすれば、貧乏人も少しはましになるという約束を前提にしている。地球の破滅が人類の望みとするなら、これほど効率的な定式は想像できない」――ジェレミー・シーブルック1

「核科学者らと技術者らは核の力を宗教のように抱きしめている。『核の司祭』という用語は、オークリッジ国立研究所の所長を長く務めていたアルビン・ワインバーグがつくった新造語である…オークリッジや他の米国立核研究所の科学者たちがみずからを『ニューキーズ(核族)』と呼ぶのは、珍しいことでない。オークリッジのウェブサイトは、ワインバーグを『核エネルギー』の『預言者』と称している」――カール・グロスマン2

わたしたちは、フクシマ核惨事後の空気、食品、水の安全に関して、日本政府や国際核機関、企業に操られたメディアを信頼すべきだろうか? 多くの人たちは正当にも疑っているが、一日の終りには、飲み食いしなければならず、息だってしなければならない。多くの人たちにとって、少しばかりの放射能に怒ることはないと見せかけるほうが楽である。

結局、ただ1回のCTスキャン(コンピュータ体軸断層撮影)を受けることによって、6ないし10――正常な背景放射線の数年分――という、途方もないミリシーベルトを浴びることになる3, 4。このような説明を、患者の健康を気づかうとされる医者たちが眉ひとつ動かさずにするのである――医者はあるとき、「安全です」と筆者にいった。先進諸国では、人びとに浴びせかける放射能の大部分が医療技術の寄与分であり、これは吟味に値する問題である5。正当にも「喫煙しないように」と患者に忠告する医師たちが、どれほど煙草が実質的な放射線源であるのか、たぶん知らないのは皮肉なことである。

だからといって、核汚染が疑わしい話題であるということにはならない。核の専門家、アーニ―・ガンダーセン氏によれば、フクシマ核惨事は、現実に起こった原子炉3基のメルトダウンにとどまらず、もっと多くのメルトダウンが起こっていたとしてもおかしくなかったという。予備電源を喪失した原子炉が14基あり、その大多数がギリギリの瀬戸際で電源を回復しなかったならば、「人類全滅の危機」になりえたという6。ガンダーセン氏はまた、日本で30年以内に「100万人」の人びとが福島第一原子力発電所事故関連の死を迎えると信じている7。筆者は以前に、惨事のためにどれほどの人命が失われ、あるいは寿命を縮められるかを計算した8

真実は浮上する

「何人かの地震学者、技術者、政治家が、昨年のマグニチュード9の地震が福島第一原子力発電所の破壊に一役買っており、大規模な放射能放出に寄与していたと信じていると発言している……政府機関、日本原子力研究開発機構の元上級研究主席、田辺文也氏は……2号炉のサプレッション・チェムバーと呼ばれる冷却設備が地震によって重大な損傷を受けたようだと結論した」9

これは、津波の襲来よりずっと前に設備が崩壊するのを、多くの目撃者たちが眼前に見た1号炉に加わるものである10。ガンダーセン氏は最近、4号炉が地震のために「歪んだ」と述べており、このことが原発と地震の基準に疑問を投げかけている11。日本政府は「福島の原子力発電所における事故は、地震とその後の津波によって引き起こされただけでなく、部分的には人的要因も原因になった」こと、それに「政府、規制当局、東京電力は国民の生命と社会を守るという責任感を示すことに失敗した」12ことをついに認めた。事故による放射能――チェルノブイリのそれにほぼ匹敵する量13――の78パーセントが、陸の方向ではなく、海上に吹き流されて14、日本は運がよかった。どこまで多くの放射線をわたしたちに一気に浴びせれば、核産業の気が済むのだろう? 核の申し子たちは、事故で一人も死んでおらず、放射線量は微々たるものと言いはる。なにが真実なのだろう?

論拠が端からデタラメである核推進派に辛辣な懐疑の狙いを定め、彼らの言い分のいくつかについて、論理の一貫性を検証してみよう。他の形態のエネルギー生産が必ずしも穏当とはいえない――たとえば、木炭生産は降雨林存続に打撃をあたえかねない――にしても、核エネルギーは世界の一次エネルギー生産量のたかだか2.5パーセントをまかなっているにすぎない15

核のウソ~あなたはトマトといい、わたしはシーベルトという

まず第一歩として、ウィキペディアは放射線用語の知識獲得に役立つ16。イアン・グダードによる教育ビデオ17, 18は、放射線の危険性について、いかにメディアが国際的にウソをついているかを見せてくれる。BBCが伝える半生の真実からCBSニュースまで、視聴者に伝えるさいのズル賢い姿勢は、次のフレーズによく表されている――

「住民たちは上京して、政府による安全限度の緩和に抗議しました。もっとも、低線量放射線による長期的影響に関する事実は、わかっていません」

ハァ~? あの日本の人たちは、放射線が無害であることを知らないなら、なぜ時間を無駄にして、馬鹿げた抗議行動に参加したのだろう? だが、ゴダードが示してくれるように、低線量放射線のリスクは確定した科学的事実として、よく理解されている。CBSが「低線量放射線による長期的影響に関する事実は、わかっていません」とはっきりいうのは、「地球が丸いか、平らか、四角形か、あるいは逆立ちしているか、わかっていません」というのに等しい。ゴダートの警告は、フクシマ核事故後の大気中に放射性粒子を見つけた科学研究者、マルコ・カルトーフェンによって確認された。カルトーフェンによれば、それらの粒子は、生体の肺に沈着し、人間の生理機能に影響をもたらすのにビッタリのサイズだった19

似而非(えせ)科学~スルーマイル・アイランドの事例

スティーヴン・ウィング博士は、1979年のスルーマイル・アイランド(TMI)核惨事の影響による疾患に関して、公式統計データが最悪とはまったくいえないシナリオをでっちあげるために歪曲された経緯を示してくれている20。ウィングはこう報告する――

TMI原発の周辺における癌罹患率に関するわれわれの再分析は、事故に由来する放射能が放射性プルーム通過経路にあたる地域における癌罹患率の上昇を誘発したとする仮説と一致している。線量が業界や政府当局による推計値よりもはるかに高くなければ、これは短期間のうちに一般住民におこると予測できないことである。正しくいえば、皮膚の紅斑、脱毛、嘔吐、愛玩動物の死に見舞われたと報告された地域の一般住民は、情緒的なストレスを苦にしていたというより、高レベル放射能に被曝したという申し立てを、この知見は支持するものである」21

核保健物理療法士、ランドール・トムソンは、TMIの放射能放出量の値が「政府や業界による認定値より、数千倍とまではいかなくても、数百倍は高かった」22ことを見つけたが、その一方、アーニー・ガンダーセンはTMIからの放射性物質放出量を関係当局による認定よりも「1000倍は大きい」と計算した23TMIは米国最大の産業事故であり24、反核活動家、ハーヴィ・ワッセマンは、30年後のいま「約2400名の地域住民が、家族を見舞った死や疾病の苦痛に対する損害賠償を求めて集団代表訴訟をずっと前に提起している」と報告した25

低レベルだが、低リスクではない

わたしが『原子力科学者会報』低レベル放射能特集号(前出)を読んだ感想の結論は、わたしたちの健康に対する新規な二大脅威が核産業および医療技術産業であるというものだった。両業界ともに、わたしたちの寿命を縮めるが、彼らの利益になる実験をやってのけている。低レベル放射線の専門家、ジャン・バイアは「疫学データが、0.1シーベルト(100ミリシーベルト)を上回る場合の遅発性癌罹患症例の過剰リスクが、平均的アメリカ国民にとって、自然背景放射線による不可避の被曝の40年分によるそれに相当することを明らかにしていることは、ほぼ万人に支持されている」と書いている26。ヒルは、低レベル放射能の有害な影響には、次のものが含まれると記す――

「バイスタンダー効果とは、電離放射線が一細胞を照射し、それが信号を発すると、細胞から細胞への通信伝達によって…照射されていない細胞にまで効果がおよぶことであり…」、そして「遺伝子が不安定になり、最初のDNA損傷が細胞またはその複製メカニズムを改変し、それ故、生き残った細胞がその後の分裂するさいに追加的な遺伝子改変の頻度が増える」27

もうひとり別の研究者が記すように、「低線量放射線は長期にわたると人を病気にさせ、殺す」。たとえ科学が「しっかり確立していても…この(安全な放射線量はないとする)仮説をめぐる合意は、人が科学の領域から政治の世界に移ると雲散霧消する」28。このようにして、政治的打算と科学の尊厳との戦いがはじまる。

ズタズタにされるデータ

フォックスTVの通俗ジャーナリスト、アン・コールティアは、ファンから愛情たっぷりに「老いぼれ馬面」と呼ばれることが多いが、低レベルの放射線は健康によく、これが「放射線ホルメシス」理論に関連していることを「科学者たち」と「ニューヨーク・タイムズ」が明らかにしました、と弁舌の腐臭をぷんぷんと匂わせて視聴者にお知らせしてくれる29

だが、バイアが、ホルメシス理論について「いまでも進取果敢なジャーナリストご愛顧の話題ではあっても、放射線ホルメシス理論はもはや研究者の関心をあまり集めていない」と記すように、この仮説は実のある結果を出していない。核推進派がもっと大きな関心を寄せている新しい理論があって、それによれば「適応反応とは…低線量の放射線が細胞に後の高線量の放射線を浴びるときの体制を高めさせるというもの…その概念は、非常に低い線量が予防接種のように体に放射線で傷んだ細胞を認識して、修復するなり、除去するなりするように教えるというものである。したがって、その後の長期にわたる線量の危険性が減じることになる」。しかしながら、この被曝に期待される利点は、いずれにしても「非常に低い線量」で生じるはずであり、それも制御された実験によってであり、さまざまな要因が奔放に変動する現実世界でのことではないだろう(前掲書)。

民衆のための科学~欧州放射線リスク委員会(ECRR

日本の医師たちは放射線のリスクを真剣に受け止めており、たとえば東京都下のクリニック院長、布施純郎医師はECRRの「内部被曝によるリスクは外部被曝によるリスクより200600倍大きい」という説を唱導している30

ECRR31(最も高名なメンバーはクリス・バズビー博士)は、核テクノクラシー(技術官僚主義)の偏向ぶりに対抗するために集まった自然志向の市民社会グループであると自己規定している。ECRRは「人為的に改変された核種や新規な形で流通する自然由来の核種の分を合算した、公衆の最大許容年間被曝線量限度は、ECRRモデルを用いて計算される0.1ミリシーベルト以下に維持されるべきである」(p. 181)と勧告する。この数値は、主流メディアの情報源によれば、安全であると通常考えられている数値よりも大幅に低い。言い換えれば、目標を命の保全に置くなら、正常な背景線量をいささかでも超える放射線は許容できないということである。

ECRRはその放射線リスク・モデルを従来のモデルと対比して、次のように説明する――「入手可能な科学的証拠を考慮に入れて、問題を調査し、最終的に報告する。とりわけ委員会の付託事項に関して、先行する科学についてなにごとも前提とせず、国際放射線防護委員会(ICRP)、放射能の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)、欧州委員会やEU加盟諸国のリスク評価機関など、従来からのリスク評価委員会からの独立を維持する」(p. 1)。

ECRRの使命は、破綻した公衆健康防護システムへの緊急対応である――

ECRRの初回会合においても、STOA(欧州議会/科学技術選択肢評価委員会)会合においても、当時、人工の放射性物質への低線量被曝が健康障害を引き起こす証拠が十分あり、ICRPおよびそれと同じ放射線リスク・モデルを使っている他の機関による従来のモデルがこのような作用を予測し損ねていたことは広く共有されていた見解であった(p. 2)……内部被曝放射線量に関して、委員会はICRPの外部被曝モデルを拡大し、適用することは科学手法の重大な誤用であると認定している…そのような誤用は政治的な思惑のためでなければ、ずっと以前に捨てられていただろう(p. 11)」

この所見は、放射線リスク科学が、公衆の安全となるかぎり別物であると認めたバイアと彼の仲間たちに傾聴した結果である。

ECRRは「人工の放射性核種は『ホット・パーティクル』の形で存在することが多く、癌や白血病が集中する原発の近隣地域、原発や核実験場の風下住民、フォールアウトで被曝した人びとのあいだでは、ありふれた汚染物質である」(p. 11)と記す。たとえば、体制側(ICRP)モデルは内部放射線被曝モデルを軽んじているが、ECRRモデルによれば、100ミリシーベルト未満の内部放射線量被曝の場合、ICRPモデルが1ないし2000(!)の不確実性要因を抱えており、適用できないことになる(p. 123.1)。

クリス・バズビー博士は、この2011年の核惨事の直後に撮影されたビデオ・プレゼンテーションで、国際核犯罪シンジケート(INCS)が放射線の危険性にまつわる真実を隠蔽している実情を説明している32

ホット・パーティクルの環境ローンダリング

真実を隠しているのは、日本政府やINCSだけではなく、「スウェーデン出身の日本消費者連盟スタッフ、食品安全専門家、マーティン・J・フリード」といった、いわゆる環境保護運動家たちも、核産業の地に落ちたイメージの回復に一役買っている33。フリードはジャパン・フォーカスのサイトで、「最新鋭の検出器」を用いて日本で計測した結果の「現実のデータ」が次のことを明らかにしたと書いた――

「全国各地で12万点を超える食品が検査され、基準を上回った事例の総数は1162件であり、たかだか1パーセント以下だった。したがって、この数値を見ると、食品の汚染状況はもっと悪くなっていてもおかしくなかった(!)と理解できる……今後、栽培される食品が高レベルに汚染されることはありそうもないし、あるいは少なくとも、そのような事例の数は非常に限られているだろう……3.11災害がもたらしたあらゆる損失にもかかわらず、驚くべき事実として、日本は食品の高レベルな安全性を享受しており、継続してきた注意深い検査の結果、国内外で日本は賞賛されつづけるだろう」

日本はほんとうに「食品の高レベルな安全性」を享受しているのだろうか? フリードは「最新鋭の検出器」の詳細を明かしていないし、さらに重要なこととして、20113月以降の政府のふるまいが信用できないというのに、なぜ政府の「現実的な計測」を信頼すべきだというのだろうか? 彼は独立系の研究者らによる放射線データが「現実的」でないとほのめかしながら、政府や米国の「エデン・フーズ」のような海外の輸入業者は信用できるという。フリードは自分が引用したり解説したりしないデータは、なんでも「憶測」とあざけるが、独立系の情報源から簡単に入手できる大量の矛盾するデータを無視してもいる。なるほど、独立系の情報源は検証するべきだし、額面通りに受け取れないことには同意するが、政府のデータも同じであるはずだ――たしかに、フリードはダブル・スタンダードを使いこなしているのだ。フリードは、内部被曝の危険性や、彼自身または彼の勤め先、日本消費者連盟が安全だと信じる放射能量の危険性を分析しない。「状況はもっと悪くなっていてもおかしくなかった」と説いて聞かせるだけである。彼の記事は消費者保護団体のために書かれたはずだが、予防原則34をおろそかにし、放射能の危険性を見くびり、またECRRのアセスメントを考慮していない。

政府の食品モニタリング手法の欠陥をさらけだす格好の記事があるので、2例あげてみよう――「放射性セシウム1110ベクレル/kgのもち米が福島県伊達市の農家直売スタンドで販売された」35、最近の記事の見出し「公的機関による食品検査の結果は実際の放射能含有量の3分の136

政府による隠蔽工作

政府が食品業界に対し、公定の放射線安全許容基準を採用し、それを改正しないように指示しており、少量の放射能は安全だと断言する動きがつづいている37。食品の小売大手、イオンが放射能許容値ゼロを宣伝すると、政府の一スポークスマンが「ゼロ・リスクの達成が進むべき正しい道だという風潮を社会に醸成する」だけだと攻撃した38。「食品安全の専門家」唐木英明氏は、大手企業がゼロ検出食品だけを販売するわけにはいかないかもしれない小規模生産者に対して不公正な経済的優位に立っていると当を得た指摘をしていながら、それでもなお放射能の安全レベルを想定している。唐木氏ご自身は、放射線学科ではなく獣医学科を卒業しており、原発ムラの一族として名高い東京大学とつながっていることを考えると、疑わしいところのある人士である39。さらに最近の発言では、彼は幼児の体内のセシウムは「間違いなく」安全であると主張している40。わたしには、まるでこのドッグ・ドク(訳注:学者犬=ゲームのキャラクター)が蚤を飼っていて、大枚を獲得せんものと、原発ムラ収入役のお気に入りになるために御用科学の生業にお励みのヤブ獣医であるかのように聞こえる。

日本政府は福島の海産物が「食べても安全」であると国民を説得しようとしている41が、20キロ圏避難区域の内側で独自のモニタリングをすることは許されていない42

政府は福島第一原発に非常に近接した沖合で捕獲した「魚の体内のプルトニウム」を見つけた43, 44。プルトニウムの最大検出値は、日本で食卓によくのぼるカタクチイワシの0.019ミリベクレル/kgだった。この値は0.000019ベクレル/kgと非常に低いが、プルトニウムは宇宙で知られているかぎり最も強い毒性の物質である45。さらに悪いことに、宮城県は20127月、同県沖合で捕獲されたチムから3300ベクレル/kgのセシウムが検出されたと報告した――これは極めて高い値である46

カリフォルニア近海で捕獲されたマグロがフクシマ由来のセシウムを吸収しているのが見つかったが、その理由は「放射性セシウムは他の化合物と違って、速やかに海底に沈着しないで、海中で拡散したままになる。魚類はそれを突っ切って泳ぎ、エラを通してセシウムを体内に吸収する」からである。カリフォルニア州の核専門家は「サンディエゴの近海で漁獲したマグロで見つかった低レベルの放射能は、癌のリスクをわずかに高めるだろう」と述べた47。どれほど多くの汚染水がいまだ海中に漏れ出しつづけているのかについて、多くの疑問が残ったままだが、おそらくマグロの放射能は事故当初のファールアウトに由来するのだろう48, 49, 50, 51, 52

東京の放射性降下物:新たな標準

日本政府によれば、人災であるフクシマ核惨事から1年以上たった20124月、同月中に1平方キロメートルあたり2500万ベクレルのセシウムが東京に降り注いだ53。これを1平方メートルあたりに換算すれば、25ベクレルになる。これを一月30日で割り算すれば、1日あたり1ベクレル未満になるが、その場ですべての空気を吸えば、放射性降下物の幾分かは吸入することになる。ウォール・ストリート・ジャーナルは「日本最大の核事故の現場、福島第一原発から10キロ南…この地域にいまだに福島第一原発からの放射性廃棄物が大量に降り注ぎ」、そのレベルは「20113月の事故の以前より16倍ないし33倍も高い」と伝えた54。東京のレバルはもっと低いにしても、福島第一原発からいまだに漏れ出しつづけている放射能のフォールアウトが、200キロメートルに達する距離さえ超えて降り注いでいることを証している。これから何か月、何十年、東京に放射性降下物が標準的な気候現象として届くのだろうか?

奇妙なことに、東京の放射性降下物データは周囲の県より少し高く、数値が高いのは、東京23区の焼却場の瓦礫焼却のせいなのだろうかという疑問が湧く55。わたしはオルタナティブ(代替)メディアからも、焼却データを公表しない政府からも、この件に関する確証データ(つまり、焼却炉の型式、メーカー、フィルタの仕様など)を得ていない。"Please send your opinions and suggestions to the Ministry of the Environment"(「環境政策に関するご意見・ご提案、お問い合わせを受け付けています」)56と書かれたウェブページを開けば、英語で環境省に問い合わせることができる。お役人たちは礼儀正しくあなたのメッセージを印字して、「ご提案、ありがとうございます」と書かれたゴミ箱に放り込むのだろう。

米国環境保護局(EPA)はそれにひきかえ、わたしの放射性廃棄物焼却に関する質問に一日以内に答えてくれた――

EPAにご連絡、ありがとうございます。EPAの管轄区域は米国およびその領土であります。わたしどもは日本国の焼却炉に関する情報を保有しておりません。米国には、放射性瓦礫を地方自治体の焼却場で燃やした経験がございません。米国内で稼働する焼却炉はすべてEPA排出基準で規制されております」(2012425日付けEメール通信)

日本の独立系団体が実施した検査によって、事故由来のフォールアウトと継続中の放射能蓄積のために、東北産と東京産の食品が汚染されたことが明らかになった。店に多く出回る日本茶のセシウム測定値は0.32ベクレル/kgもあった57。東京産の園芸スモモは8.6ベクレル/kgだった58。これは放射能が検知されない西日本産のスモモと対照的である59。山形県産のサクランボは3.1ベクレル/kgであり、東北および東京地域の産品が低レベル放射能で汚染されている可能性があることを示している。

少量とはいえ、この放射能は世界を移動する。ジュール・ヴェルヌは、いまではすっかり鈍足になった彼の気球が世界一周に80日間かかったのに引き比べ、放射能が世界を一周するのにその半分の40日しかかからないと知れば、墓のなかでもんどり打つだろう。このところ、空中のセシウムはひたすら飛ぶばかりである。

【筆者】

リチャード・ウィルコックスは、総合的な視野の社会科学の立場による科学研究で博士号を保持。東京のいくつかの大学で教えている。フクシマ核惨事に関する記事をCounterpunchGlobal ResearchDissident VoiceActivist PostRense.comに寄稿。ウェブサイトwww.rense.comにジェフ・レンスによるインタビューを収録。環境関連記事の多くを次のウェブサイトで保管している――

【参照文献】

3.      You're being exposed to radiation -- but it's the amount that counts
http://articles.latimes.com/2011/mar/15/world/la-fg-radiation-comparison-20110315

4.      Radiation: How much is harmful?(リンク切れ)

5.      Bulletin of the Atomic Scientists May/June 2012; 68
http://bos.sagepub.com/content/current

6.      June 8, 2012, WBAI's Robert Knight Hosts Arnie Gundersen: Latest Fukushima Issues and the U.S. Domestic Nuclear Environment
http://www.fairewinds.org/wbais-robert-knight-hosts-arnie-gundersen-latest-fukushima-issues-and-the-u-s-domestic-nuclear-environment/

7.      As Japan Says Fukushima Disaster "Man-Made"& "Preventable," Fears Grow for Nuclear Plants Worldwide
http://www.democracynow.org/2012/7/6/as_japan_says_fukushima_disaster_man

8.      Japan's Near Miss With Massive Nuclear Catastrophe
http://www.rense.com/general95/nuclearcatss.html

9.      Report on Nuclear Disaster Holds Key to Reactors' Fate
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304441404577482113658775518.html

11.   July 6, 2012, Pacifica Radio Host Ian Masters and Fairewinds' Arnie Gundersen: Lessons Not Learned From Fukushima Daiichi(リンク切れ)

13.   Fukushima-derived radionuclides in the ocean and biota off Japan
http://www.pnas.org/content/early/2012/03/26/1120794109.full.pdf+html?with-ds=yes

14.   TEPCO Cheapskate Tactics Put Entire World At Risk
http://www.rense.com/general95/tepcosvs.html

15.   Martin Cohen and Andrew McKillop, The Doomsday Machine: The High Price of Nuclear Energy, The World's Most Dangerous Fuel (Palgrave, 2012, 242 pgs.)
http://www.amazon.co.jp/Doomsday-Machine-Nuclear-Energy-Dangerous-ebook/dp/B0065RUW6E/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1402363197&sr=8-1&keywords=The+Doomsday+Machine%3A+The+High+Price+of+Nuclear+Energy%2C+The+World%27s+Most+Dangerous+Fuel

19.   Hot Particles and Measurement of Radioactivity
https://www.youtube.com/watch?v=9lA4SgUCnZw
(関連記事:名古屋の住宅で見つかった一番ホットなホット・パーティクル
http://besobernow-yuima.blogspot.jp/2014/04/fairewinds.html

20.   Epidemiologist Steve Wing Discusses the Increases in Cancer Rates After Three Mile Island Accident (Part 2)
http://www.fairewinds.org/epidemiologist-dr-steven-wing-discusses-global-radiation-exposures-and-consequences-with-gundersen/

21.   A Re-Analysis of Cancer Incidence near the Three Mile Island Nuclear Plant
http://www.strahlentelex.de/PORTS_Wing.pdf

22.   Startling Revelations about Three Mile Island Disaster Raise Doubts Over Nuke Safety
http://www.alternet.org/story/134977/startling_revelations_about_three_mile_island_disaster_raise_doubts_over_nuke_safety?page=entire

23.   Three Myths Of The Three Mile Island Accident
http://vimeo.com/39710686

24.   Three Mile Island Revisited: Enviro Close-UP with Karl Grossman
http://www.nuclearfreeplanet.org/three-mile-island-revisited-enviro-close-up-with-karl-grossman.html

26.   The scientific jigsaw puzzle: Fitting the pieces of the low-level radiation debate
http://bos.sagepub.com/content/68/3/13.full.pdf+html

27.   The low-dose phenomenon: How bystander effects, genomic instability, and adaptive responses could transform cancer-risk models
http://bos.sagepub.com/content/68/3/51.full

28.   Unmasking the truth: The science and policy of low-dose ionizing radiation
http://bos.sagepub.com/content/68/3/44.full

29.   Ann Coulter Says Radiation Is Good For You
http://www.youtube.com/watch?v=FXFUUGeV1DI

30.   Head of Tokyo-area Medical Clinic: "Risk from internal exposure is 200-600 times greater than risk from external exposure"
http://enenews.com/head-of-tokyo-area-medical-clinic-risk-from-internal-exposure-is-200-600-times-greater-than-risk-from-external-exposure-video

31.   The Health Effects of Exposure to Low Doses of Ionizing Radiation
http://www.euradcom.org/2011/ecrr2010.pdf

33.   Food Safety in Japan: One Year after the Nuclear Disaster
http://japanfocus.org/-Martin_J_-Frid/3722

35.   Two Ways to Sell Contaminated Fukushima Rice: Sell Direct, and Discount for Wholesalers
http://ex-skf.blogspot.jp/2012/01/two-ways-to-sell-contaminated-fukushima.html

36.   Official Radiation Test for Food Showed Only One-Third of What Was Actually In the Food
http://ex-skf.blogspot.jp/2012/06/radioactive-japan-tsukuba-city-ibarakis.html

37.   Ministry of Agriculture to Food Industry: Don't Use Own Radiation Standard, Use Government's
http://ex-skf.blogspot.jp/2012/04/ministry-of-agriculture-to-food.html

38.   With so many food safety standards, it's no surprise consumers are confused
http://ajw.asahi.com/article/0311disaster/fukushima/AJ201201200053

39.   The Right Level of Concern about Radiation
(訳注:リンク先は削除されているようなので、代わりに…
☆御用学者追放運動★ 唐木英明
http://counter-massmedia.com/utagai/?p=664

40.   Cesium found in urine of Fukushima children
http://www.japantimes.co.jp/text/nn20120702a5.html#.T_IhpUvs-6V

41.   "Fukushima sea food 'safe' for eating"
http://www3.nhk.or.jp/daily/english/20120623_27.html

47.   California Nuclear Professor: Radioactive tuna may raise cancer risks
http://enenews.com/california-nuclear-professor-radioactive-tuna-may-raise-cancer-risks-video

48.   Radioactivity concentration in the seawater near TEPCO Fukushima Dai-ichi NPP (Sampling Jun 6, 2012)
http://radioactivity.mext.go.jp/en/contents/5000/4674/view.html

49.   TEPCO seeks to reduce groundwater flowing into reactor buildings
http://mainichi.jp/english/english/newsselect/news/20120424p2g00m0dm036000c.html

50.   After The Media Has Gone: Fukushima, Suicide and the Legacy of 3.11
http://japanfocus.org/-Makiko-Segawa/3752

53.   Reading of environmental radioactivity level by prefecture (Fallout)(April, 2012)
http://radioactivity.mext.go.jp/en/contents/5000/4590/view.html

55.   Japanese Government's All-Out Offensive to Push Disaster Debris All Over Japan
http://ex-skf.blogspot.jp/2012/03/japanese-governments-all-out-offensive.html

56.   Please send your opinions and suggestions to the Ministry of the Environment.
https://www.env.go.jp/en/moemail/
環境政策に関するご意見・ご提案、お問い合わせを受け付けています。
https://www.env.go.jp/moemail/

57.   Green teas compared for radiation
http://securitytokyo.com/data/ocha.html

58.   Plums from garden in central Tokyo (Takadanobaba, Shinjuku ward) measure 8.6 bq/kg of cesium
http://securitytokyo.com/data/tokyo_ume.html

59.   Plums from West Japan (Wakayama prefecture) measure ZERO radiation
http://securitytokyo.com/data/nankoume.html

60.   Cherries from Northeast Japan (Yamagata prefecture) measure 3.1 bq/kg of cesium
http://securitytokyo.com/data/yamagata_s.html

61.   Radioactive particles circulate the world taking 40 days
http://fukushima-diary.com/2012/06/radioactive-particles-circulate-the-world-taking-40-days/

【ブログ内リンク】

【関連記事】


【海外論調】カール・グロスマン「核にまつわる否認~フクシマをめぐる途方もないウソ」

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201433

核にまつわる否認
フクシマをめぐる途方もないウソ
Nuclear Denial
The Giant Lie About Fukushima

カール・グロスマン KARL GROSSMAN

福島第一原発の破局的な核惨事の勃発から3周年を来週に控えて、災害をめぐる意図的な途方もないウソ――情報の抑圧、歴史的次元の不誠実な企て――がつづいている。

登場するのは、国際的な機関、とりわけ国際原子力機関(IAEA)、現職の総理大臣が率いる政府機関、有力な核産業、科学者らの「核の権威筋」、その他もろもろの原子力に利権をもつ集団である。

策略は原子力推進の発足時から、それに組み込まれていた。じっさいの話し、わたしが核技術についての初めての本“Cover Up: What You Are Not Supposed to Know About Nuclear Power”(仮題『隠蔽~あなたが原子力について知ってはならないこと』)を開いたとき、こう書かれていた――「あなたは原子力に関する情報を与えられていない。説き聞かされていないのだ。それは目的あってのことである。原子力の推進派は、大衆を目隠ししておくことが成功のための必須条件であると考えた。政府、科学界、私企業の原子力を推進する連中は、国民が事実を知らされ、原子力の影響を知れば、支持しないだろうとわかっていた」。

1980年刊の同書を読んだことがきっかけになって、わたしは原子力に関する講演を数多くこなすようになり、その会場でわたしは何度も、破局的な事故が起こって初めて国民が原子力の致命的な破壊力をたっぷりと理解するだろうという感想を聞かされた。

はたして、巨大規模の核事故――1986年のチェルノブイリ災害、そして2011311日に勃発し、大量の放射性毒物を環境中に放出しながら継続中の破局的なフクシマ惨事――が起こった。

その一方、核推進派の姿勢は――フクシマ事故の影響は基本的にありもしないと言い張る――否認である。巨大規模の核事故が起こっても、連中はそんなものなかったと信じさせようとする。

「フクシマは、ヒロシマ・ナガサキの原爆投下ではじまった否認と論争の不気味な再演である」と昨年、エール大学のチャールズ・ペロウ名誉教授はBulletin of the Atomic Scientists(訳注:『原子力科学者会報』、終末時計で有名)にこう書いた――「これは、核実験、イングランド北部ウィンズケールとウラル山系チェリャビンスクのプルトニウム工場事故、米国スリーマイル・アイランドと現ウクライナ・チェルノブイリの原発事故を見舞ったのと同じ核にまつわる否認である」。

フクシマの違いは、惨事の規模にある。フクシマの場合、原子炉6基が立ち並ぶ原発敷地内の複数の炉心メルトダウンである。日本の主要部が汚染されつづけ、放射能が空中に放出され、風に乗って世界を回り、膨大な量の放射能が太平洋に流れ込み、潮流に乗って移動し、海洋生物に摂取されて運ばれている。

地球規模のフクシマ隠蔽を主導しているのが、1957年、国連によって設立され、「全世界における平和、保健及び繁栄に対する原子力の貢献を促進し、及び増大する」任務を付託された国際原子力機関(IAEA)である。

IAEA2011年、フクシマ災害の結果について「今日まで、今回の原子力事故による放射線被ばくの結果として人が健康上の影響を受けた事例は報告されていない」(IAEA調査団報告:暫定的要旨)と報告し、この主張を今にいたっても維持している。

IAEAと協力しているのが、世界保健機関(WHO)である。WHOは、放射能と原子力に関連する問題について、早くからIAEAに隷従することになっていた。やはり国連によって設立されたWHOIAEA1959年に締結された――そして、今日につづく――協定関係に入り、IAEAWHOは「相互に緊密な協力の下に行動し」、また「いずれかの機関が、他方の機関が重大な関心を持つか、持つ可能性のある計画または活動を企画するさいには、常に、前者は後者と協議し、相互合意にもとづく調整を図らなければならない」とされた。

IAEAWHO協定は「WHOは、IAEAによる事前の同意がなければ、いかなる調査も実施できず、いかなる情報も公表できず、いかなる人びとの支援にも乗り出せず…WHOは実質的・現実的に、国連家族内でIAEAの下僕になっている」ことを意味すると、18年間のWHO勤務経験があるアリソン・カッツが昨年、リビー・ハレヴィの「ニュークリア・ホットシート」ポッドキャストで説明した。

カッツは核の問題に関して、「諸国政府、国家機関、また残念なことに世界保健機関を巻き込んだ、非常にハイレベルの制度的・国際的な隠蔽があります」と、The WHO/IAEA—Unholy Alliance and Its Lies About Int’l Nuclear Health Stats(仮題「WHOIAEA~国際核健康被害統計に関する不浄な提携」)というタイトルの番組で語った。カッツはいまIndependentWHOIndependentWHO原子力と健康への影響)という団体に加わっており、彼女はそれを「核ロビーからの、とりわけその代弁者であるIAEAからのWHOからの完全な独立」を求めて活動しており、「WHOが放射線と健康の分野でその憲章に謳う管轄権をまっとうするように、わたしたちはWHOの独立を要求しています」と説明する。

カッツは「ニュークリア・ホットシート」で、「わたしたちは、すべての核に関連する活動による健康と環境への影響が社会に知られるようになれば、原子力をめぐる論争は明日にでも終結すると固く信じています。事実、社会はおそらく即座に原子力をエネルギー選択肢から排除するでしょう」と語った。

WHOは昨年、フクシマ核事故に関する報告(Global report on Fukushima nuclear accident details health risks)を公表し、「日本国内外の一般社会において、予測されるリスクは低く、基礎罹患率を超える癌罹患率の目に見える上昇は予想されない」と主張した。

さて、ここで日本国の安倍晋三・新総理大臣が登場し、昨年、オリンピック2020年夏季大会の東京(フクシマから290キロ)招致の成功を期して、国際オリンピック委員会を前にして、こう主張した――「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」(訳注:原文から離れて安倍首相スピーチのテキストの該当箇所から引用)。日本に原子炉が54基あって、破局的なフクシマ核惨事の余波で停止しているが、安倍はその再稼働を強硬に後押ししている。

安倍の見解は、核惨事の勃発時の総理大臣、菅直人の見解と全面的に違っている。管は昨年、ニューヨークで開催された会議(The Nuclear Forum)において、かつて自分がどれほどの原子力の支持者であったかを話したが、福島事故のあと、「わたしは自分の考えを180度、完全に変えました」と語った。彼は、ある時点で「東京を含む地域」の住民5000万人を避難させなければならなくなるように思えたと断言した。「航空機の墜落などの事故がありますが」、核惨事を除いて、「5000万人に影響をおよぼす事故や災害はありません…他にそのような悲劇の原因になる事故はないのです」と管は発言した。管はさらに、「原子力発電所がなくても、わたしたちは需要を満たすエネルギーを間違いなく用意できます」といった。日本は事故後、太陽エネルギーの使用量を3倍に増やしたと彼は語り、ドイツは全原子力発電所の閉鎖を決定し、2050年までに「全エネルギー供給を再生可能エネルギーで賄う」と計画したことでポスト・フクシマ政策の模範になると指摘した。これは世界全体で可能である、と管はいった。「人類がほんとうに協力すれば…わたしたちはわたしたちのエネルギーのすべてを再生可能エネルギーで賄うことができます」。

安倍の姿勢の主要因は、日本が核産業の世界的な担い手になったことにある。ゼネラル・エレクトリック(GE、フクシマ原子炉のメーカー)とウェスティングハウスは、歴史的に世界の原発の80パーセントを建造したり設計したりして、世界の原発産業におけるコカコーラとペプシの関係にある。2006年、東芝はウェスティングハウスの核部門を買収し、日立はGEと核部門の提携関係を締結した。それ故、いまでは世界の2大原子力発電所メーカーは日本ブランドなのである。安倍は日本の沈滞した経済を浮揚させようとして、東芝=ウェスティングハウス製と日立=GE製の原発の売り込みのため、世界を忙しく飛び回っている。

核産業にいたっては、世界原子力協会がその声明文Safety of Nuclear Power Reactors…Updated April 2014(「発電用原子炉の安全性」20144月改訂版)で「フクシマ事故は死者を誰一人として出していない」と断言するする始末である。「世界の核を専門とする人びとと団体を代表する」この協会は、次のように付け加える――「フクシマ事故は、施設作業員の放射線被曝をいくらか招いたが、彼らの健康を害するほどのものではない」。

福島第一原発災害の影響は、どのようなものになるのだろうか?

現時点で知るのは不可能である。だが、これまでに排出された放射性毒物の量とこれからも放出されつづける分の膨大さを考えると、その影響は不可避的に巨大なものになるだろう。フクシマ惨事による影響が生命におよんでいないという主張と将来においても影響がないだろうという見通しは、言語道断のたわごとである。

なぜなら、放射能に「安全」なレベルがないことは、いまや周知の事実であるからである。いかなる量でも、人を殺す。放射能が多ければ多いほど、影響は大きくなる。全米放射能防護測定委員会が宣言するように、「放射線被曝量のいかなる増分も、癌リスクの増分を加える」(The Nuclear Forum)。

かつて、放射能に「閾値線量」があり、それ以下では害がないという概念があった。それは、核テクノロジーの草創期に人びとが放射能に被曝しはじめたころ、すぐに倒れて死ななかったからである。だが年月がたつにつれ、低線量の放射能が時間をかけて癌や他の疾患という結果を招くこと――5年ないし40年間の「潜伏」期があること――が理解されるようになった。

フクシマで放出された放射能による死亡者数は100万人を超えるだろうと予測しているのが、いくつかの大学で教授職を務めてきた欧州放射線リスク委員会(ECRR)の科学書記、クリス・バスビー博士である。博士は、「フクシマはいまだに沸き立ち、日本中に放射性核種をばら撒いています。チェルノブイリは一回限りの炎上でした。だから、フクシマのほうが始末に負えません」と語った。

じっさい、英国の団体「社会における科学の研究所」(Institute for Science in Society)の報告『フクシマ放射性降下物はチェルノブイリに匹敵』(Fukushima Fallout Rivals Chernobyl)は、次のように結論している――「入手しうるかぎり最も包括的なデータセットにもとづく最先端手法による分析の結果、フクシマ炉心メルトダウンに由来する放射性フォールアウトの量は少なくともチェルノブイリのそれに匹敵するほど膨大であり、到達距離でいえば、より世界的である」。

フィンランドとスウェーデンの原子力発電事業者が運営する北欧確率論的安全性評価グループ(the Nordic PSA Group)のために実施された研究によれば、死亡者数は60万人に達すると予測されている(ENENEWSCazzoli paper 2011-09-05)。

「社会的責任を果たす医師たち」創始者、ヘレン・カルディコット博士は、昨年、日本で開催されたシンポジウム「フクシマの医療における意味」(The Medical Implications of Fukushima)において、次のように語った――「この事故は医療における意味合いにおいて巨大です。人びとが放射性元素を吸引し、放射性の野菜、米、肉を食べ、放射性の牛乳やお茶を飲みますので、この事故は癌の蔓延を誘発するでしょう。海洋汚染に由来する放射能は生物濃縮しながら食物連鎖の上方へと移動します…日本の沿岸から何千マイルも遠く離れた海域で放射性の魚が漁獲されることになるでしょう。海産物が消費されると、汚染サイクルを回しつづけることになりますので、あなたがどこにお住まいであっても、すべての大事故があなたの地元のものであるとお分かりになることになります」。

カルディコット博士は、原子力に関する著書のなかの一冊“Nuclear Madness”(仮題『核の狂気』)でも、次のように述べている――「フクシマ惨事は終了していないし、決して終結しないだろう。数十万年にわたり有毒でありつづける放射性フォールアウトは、日本の広大な地帯を覆いつくし、決して『除染』されることはなく、文字通り永遠に食物、人間、動物を汚染しつづけるだろう」。

核事業会社の元上席副社長、アーニー・ガンダーセンは、こう語った――「日本人は数年間のうちに健康への影響を感じるようになるでしょうし、癌となれば、30年とか40年先のことです。これからの30年にわたり、100万症例に達する癌を見ることになるとわたしは信じています」。

フクシマで「われわれは、簡単に閉めることのできない地獄への扉を開いたのです」と、昨年、米国のグループ「核を超えて」(Beyond Nuclear)が主宰する原子炉監視プロジェクトの管理者、ポール・グンターはいった。

すでに過剰な症例数の甲状腺癌が日本で見つかり、これが放射能による打撃の早期徴候となっている。「放射能と公衆の健康」プロジェクト(the Radiation and Public Health Project)のジョセフ・マンガノとジャネット・シャーマン博士、そしてクリス・バズビー博士による昨年の研究(「フクシマ放射性降下物が原因で」)は、フクシマ由来の放射性ヨウ素フォールアウトがカリフォルニアの乳幼児の甲状腺を傷つけたと結論付けた。そして、太平洋におけるフクシマ由来の放射能の最大波は、これから数か月のうちに北米の西海岸に到達すると予定されている。

また一方、スタンフォード大学の研究でカリフォルニア沖合の海域で捕獲されたクロマグロのすべてが、フクシマから大規模に放出された放射性毒物、セシウム137で汚染されていることがわかった。マグロは日本近海からカリフォルニア沖合海域へと回遊する。研究を主導したダニエル・マディガンは次のようにコメントした――「マグロはそれ(放射能)を包み込んで、世界最大の海をわたって運びました。わたしたちはそれを見て、とんでもなく驚き、測定した個体のすべてがそうだとわかって、なおのことビックリしました」

もちろん、財産の損失も巨額である。「社会的責任を果たす医師たち」(PSR)の環境衛生研究所はその報告書『福島第一原発災害のコストと影響』の概要で、経済的損失が2500億ドルから5000億ドルに達するという推計を引用している。約800平方キロメートルの土地が「放棄された市街地、町、農地、家屋、財産」からなる「立入禁止」区域であり、そこから159128人の人びとが「立ち退き」させられたと、PSRの上席科学者、スティーヴン・スターは述べる。さらに、「災害勃発から約1か月後の2011419日、日本政府は公式『安全』被曝放射線量基準を年間1ミリシーベルトから20ミリシーベルト――米国の被曝限度の20倍――に引き上げると決定した。この決定によって、日本政府は放射性降下物の危険性を軽視し、ひどく汚染された多くの地域からの避難を回避できることになった」。

また昨年、日本政府は新たな特定秘密保全法を制定し、フクシマに関する報告を――刑期10年の罰則付きで――規制できるようになった。「これは、いま止めどなく拡大しつつある致死性の世界規模大災害に関する全情報の統制をめざす核体制の癌のような徴候である」と、“Killing Our Own”(仮題『われわれ自身の抹殺』)共著者、ハーヴィ・ワッサーマンは“Japan’s New ‘Fukushima Fascism’”(仮題「日本の新『フクシマ・ファシズム』」)と題された記事で書いた。

一方の米国に目を戻すと、国の原子力規制委員会(NRC)は過去3年間にわたり、フクシマから「学んだ教訓」を適用することを常に拒んできた。その委員長、グレゴリー・ヤツコ博士は、この問題の解消を強く求めようとし、ジョージア州の新規原発2基に対するNRCの「まるでフクシマ惨事がなかったかのような」免許交付に反対を表明したあと、核産業が主導した攻撃にさらされ、辞任に追い込まれた(Fukushima and the Nuclear Pushers)。

カトリック修道尼、ロザリー・バーテルは、数十年にわたる原子力の影響の抑圧とその背後にある理由について、著書“No Immediate Danger”(仮題『ただちに危険はない』)にこう書いた――「公衆が核汚染の真の健康コストに気づくなら、世界の隅々から叫び声があがり、人びとは自分自身の死と受動的に協力することを拒むようになるでしょう」。

このように、破局的なフクシマ核惨事、地球上の生命に影響を深く与える災害を否認しようとする――また、大いに迎合的な主流メディアが隠してきた――動きは、必死のものである。

【筆者】


カール・グロスマンは、ニューヨーク州立大学ニューヨーク校ジャーナリスト学科教授、The Wrong Stuff: The Space’s Program’s Nuclear Threat to Our Planet(仮題『悪性物質~宇宙開発による核物質の地球に対する脅威』)著者。メディア監視グループ、Fairness and Accuracy in Reporting (FAIR)(報道の公正さと正確さ)の提携会員。Hopeless: Barack Obama and the Politics of Illusion(出口なし~バラク・オバマと幻想の政治)に寄稿している。

#TRNN リアルニュース ジョセフ・マンガノ「米国西岸における甲状腺疾患の急増とフクシマ核惨事」

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米国西岸における甲状腺疾患の急増とフクシマ核惨事

核専門家・研究者、ジョセフ・マンガノは、米国西海岸における新生児の甲状腺機能低下症の増加をフクシマ核惨事に関連づける研究を説明する。

20131223



【プロフィール】

ジョセフ・マンガノ(Joseph Mangano)公衆衛生学修士・経営学修士は医療研究者、放射線と公衆衛生プロジェクト(RPHP)常任理事。同グループは、原子炉および核兵器による健康被害の調査を実施する米国内で唯一の団体。マンガノの業績は、医療誌掲載論文32本、新聞論説53本、著書3冊、研究知見に関する記者会見27回、政府機関証言19件など。

【テキスト】

005

TRNNプロデューサー、ジェシカ・デヴォラオ:
リアルニュース・ネットワークにようこそ。バルチモアのジェシカ・デヴォラオです。


010

フクシマ核惨事後、日本の電力会社、東京電力による放射能汚染水の太平洋排出について、インターネット上で論議が盛んです。そこでわたしたちのリアル・ニュースでも、東電の敷地から高レベル放射能汚染水が地下水と原発の外の港湾に漏れだしているという事実に特に注目して、この放射能に現実の危険があるのか、知りたいと思います。


031

これが現実に懸念すべきことなのか、論じていただくためにジョセフ・マンガノさんをゲストにお招きしました。マンガノさんは医療研究者であり、核兵器および原子炉による災害を専門になされてもいます。また、相互査読論文誌『小児科医療オープン・ジャーナル』(Open Journal of Pediatrics)に掲載された最新論文の筆頭執筆者でもあります。その論文は「フクシマ放射性降下物~カリフォルニアの乳幼児の甲状腺への被害」と標題されています。


ジョー、ご出演、ありがとうございます。

056

放射線と公衆衛生プロジェクト常任理事、ジェセフ・マンガノ:
お招き、ありがとうございます。



デヴォラオ:
ジョー、早速ですが、研究の結果、なにがわかりましたか?

102

マンガノ:
そうですね…日本のメルトダウンに由来する放射能は二通りの経路で米国に来ることがわかっています。第一に2011年、メルトダウンが勃発したとき、100種余りの放射性化学物質が大気中に入りこみ、まっすぐ世界中に拡散し、米国など、北半球に完全に拡散しました。それが沈着により、わが国の環境に、飲用水に、牛が草をはむ牧場…(聴取不能)…牛乳などに入りこみました。


143

第二の経路として、わたしたちの食べるものとわたしたちの体に入りこみ、これが今もつづいています。2011年からこのかた、日本人はメルトダウンを統御できず、放射性化学物質を太平洋に放出しつづけ、それが着実に西から東へと移動し…米国西海岸に到達しようとしています。

210

デヴォラオ:
わかりました。ご研究で、子どもたちの身に起こっている甲状腺機能低下症を論じていらっしゃいます。説明していただけますか?

217

マンガノ:
さて、放射能がわが国に来て、最大量が西海岸に到達したことがわかっているだけではなく、一般的に放射線被曝に対して最も感受性が高い人間は、胎児や乳児といった非常に若い子どもと幼児であることもわかっています。成人に対する線量は、胎児や新生児に対する同じ線量ほどには有害でありません。

244

甲状腺が放射線に対して感受性が極めて高いこともわかっています。甲状腺は、喉を包みこむ蝶のような形をした分泌腺です。放射性混合物に含まれる化学物質のひとつは、放射性ヨウ素です。ヨウ素を摂取すると、それは胃から直に血流に取り込まれ、甲状腺に届いて、そこで細胞を攻撃して、殺します。

315

論文にとりかかったとき、わたしたちが使える2011年のデータは、甲状腺機能低下症の新生児のものだけでした。この国のすべての乳児、すべての新生児は特定の疾患の検査を受けることになっており、そのひとつが甲状腺機能低下症でした。カリフォルニアは、もちろん(西海岸で)人口最大の州であり、わたしたちはここに着目して、フクシマ後9か月間の甲状腺機能低下症の罹患率を前年の分と比較して変化を調べ、26パーセント増加していることを明らかにしました。

402

デヴォラオ:
わかりました。なかには詮索好きがいて、この結果を得たからとしても、直接に関連しているとどうしてわかるのだと言うことでしょう。この原因がフクシマ核惨事であると、どのようにしておわかりになりましたか? 甲状腺機能低下症の別の原因にも言及していただけるでしょうか? それをどのようにして研究から除外なさったのでしょうか?

421

マンガノ:
甲状腺機能低下症の原因は、放射性ヨウ素被曝の他にはほとんど知られていませんし、甲状腺癌でもやはり同じで、食事を介したヨウ素がリスクを高めますし、ヨウ素不足の場合にも、つまり食品中の非放射性のものが不足しても、リスクが高くなります。だが、これは米国にはあてはまりません。ほとんど、第三世界諸国でのことです。他の原因としては、家族の血統などがあります。甲状腺疾患の現実的な理由として、ドラッグ依存の前歴がありますが、これは新生児ではありえません。被験者は新生児なのです。そういうことです。

508

ですから、わたしたちは他に原因がないとはいいませんが、フクシマ由来の放射能が小さな胎児の病気の主たる原因である、おそらくその可能性が最も高いと信じる確かな理由があります。このことを証明するために、わたしたちは追跡調査をおこない、乳児の他の健康状態――他の出生異常、乳児死亡、低体重出産、未熟児出産などといった質のことがら――に注目したいと思います。

542

デヴォラオ:
日本でも同様の研究がおこなわれていますか? 挙げていただくことができるでしょうか? というのも、このようなことがカリフォルニアで起こっているなら、日本で起こっていることは、きっと仰天ものであるはずだと思うからです。

551

マンガノ:
よいご質問です。日本での線量は、米国西岸での線量より何百倍、何千倍も高いですから。残念なことに、日本に一例を除いて研究がなく、その一例とは、福島県立医科大学が実施しているものです。福島医大は甲状腺機能低下症には着目しませんでしたが、フクシマに比較的近い18歳以下の子どもたち20万人を対象に、2つのことを検査しました。第一に甲状腺癌の検査をしました。そして、子どもたち59人に達する甲状腺癌を見つけました。通常の場合、子どもの甲状腺癌は稀です。正常なら、一人か二人でしょう。今回は59人です。

(訳注:20131112日開催、13回「県民健康調査」検討委員会で発表された数値〔内訳は、確定26例、手術後に良性と判明1例、悪性疑い32例〕。最新の悪性ないし悪性疑い例数は、2014519日開催、15「県民健康調査」検討委員会で発表された悪性50例、悪性疑い39例:合計89例)

647

福島医大が見つけた二つ目のことは、超音波による子どもの甲状腺検診で前癌状態のしこり、つまり、結節と嚢胞(のうほう)の所見です。これまでのところ、フクシマ近辺の子どもたちの56パーセントに前癌状態の結節や嚢胞がじっさいに見つかっています。この率は年ごとに高くなっています。2年前が35パーセント、昨年が45パーセントで、今年が56パーセントです。ほどなく、地域内のほとんどすべての子どもたちが甲状腺に前癌性の腫瘍があるということになるでしょう。それがわたしにとって、このメルトダウンがいかに危険なものであってきたかを物語る有力な証拠になります。

732

デヴォラオ:
話しを公正に進めましょう。じっさいにこの浄化作業を担当している政府と当局者らはこの危険を強調してきませんでした。ここで、東京電力浄化のボス、原子力改革監督委員会の委員長、デール・クラインがおおっぴらに語った公式見解に注目したいと思います。彼がオーストラリア放送協会のインタビューに応じて語ったことがあります。聴いてみましょう。


7
55

***
原子力改革監督委員会、デール・クライン委員長:
当日の終わり、水が排出されるとき、それが希釈されて、公衆衛生と安全性にリスクをおよぼさない形で放出されることでしょう。しかし、感情的な問題ではあります。

***

806

デヴォラオ:
では、ジョー、これをどう思いますか?


809

マンガノ:
半分、正しいですね。もちろん、放射能は希釈されます。フクシマに最も近くて、太平洋に流入するとき、最も濃密でしょう。それが流れて、何マイルも何マイルも移動すれば、薄まっていきます。


827

でも、それで、放射能が健康リスクをもたらさなくなるということではありません。放射能はすべて、低レベル線量であっても、健康リスクをもたらします。それが、たったいま米国西岸で起こっていることだとわたしたちは信じています。なにしろ、どんどん届いているのですから。

850

別のこととして、原子炉がいまだに統御されていませんので、放射能が無害だという言説はすべて時期尚早です。まだ漏れています。いまだに恐ろしい毒物を放出しているのです。1980年、チェルノブイリのメルトダウンでも――フクシマのように――放射能が世界を回って広がり、多くの、大変多くの人びとを病気にしましたが、これでさえ、数週間で終息しました。彼らは土や砂や塩を原子炉に投入し、石棺で覆うことができました。

934

フクシマはいまだに放射能を吐き出しています。まだ統御されていません。しかも、すでに3年たっています。ですから、健康に関するいかなる言辞――とりわけ、リスクはないなどということ――は時期尚早であり、当局の人間がそのようなことをいうとは、ほんとうにガッカリします。

956

デヴォラオ:
3
年たったわけですが、太平洋のこちら側で人びとはこのことをいまだに深刻に捉えています。サンフランシスコ市議会は、水の放射能レベルを検査することを票決しました。今日の終わり、だれかがこの番組を視聴していると、「心配したほうがいいのかな? わたしが食べる魚はあの地域から来ているのかもしれないし、地場産の魚であっても、太平洋を渡ってきているのかもしれないので、心配すべきなのかな?」と自問するのでは、と思います。

1025

マンガノ:
さて、先月の201311月のことですが、フェアバンクスはアラスカ大学の科学者たちによって証拠が示されたと思います。彼らはたくさんあるフクシマ由来の化学物質のひとつ、セシウム137を観測してきたのですが、アラスカで太平洋の海水中のレベルが上昇しているのを見つけました。彼らはそれが最終的に1960年代中頃のレベルに達するのではと推測しています。

1105

1960年代中頃、米国とソ連は地上で、何百発も、400発以上の原子爆弾を爆発させていました。人びとは、とても、とても驚いたのですが、それも核戦争のおそれのためだけではなく、死の灰のためでしたので、両国と英国とは地上核実験を禁止する協定を締結しました。だれもが公衆の健康を脅かしているという点で一致していたのです。ジョン・F・ケネディ大統領は、子どもたちの健康がリスクにさらされているので、わが国はこの協定を必要としていると演説しました。そしていま、アラスカ大学の研究者らは同じことになるといっています。ですから、わたしたちは50年前と同じ心配をするべきであるとわたしは信じています。

1153

デヴォラオ:
わかりました。ジョセフ・マンガノさん、ご出演、ありがとうございました。


マンガノ:
お招きいただき、ありがとうございました。


デヴォラオ:
みなさまのご視聴、ありがとうございました。
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【外部リンク】



7月3日緊急!「#原発いらない福島の女たち」環境省抗議行動

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「福島の女たち」の連絡先はonna100ninyahoo.co.jp(@に変換)です。


73緊急!環境省抗議行動について★


「原発いらない福島の女たち」が、総力で上京し訴えます。



n  環境省は福島をバカにするな!

n  石原環境大臣、即刻辞めろ!

n  除染目標値をかってに変えるな!


ü  環境省前 73日(木)1400集合。




ü  環境大臣に申し入れ、ダイ・イン、抗議のアピール等。
(詳細は「原発いらない福島の女たち」ブログ
などでも順次広報します)

ü  主催「原発いらない福島の女たち」

******

先日の「除染に関する有識者との意見交換会」では…


「これからは個人線量を問題にしていくべきだ」「除染は考え直す時だ、復興に金を使うべき」「放射能教育が非常に重要だ」などの意見が出され、結局、これまでの除染での目標基準値が上げられようとしていることが分かりました。


また、石原環境大臣の中間貯蔵施設をめぐっての「金目でしょ」発言……。


私たちは愚弄されて黙っているわけにはいきません。

大臣に申し入れをし、ダイ・インで身をもって抗議の意志を表現します。

首都圏の、そして全国の皆さまのご支援・ご参加をよろしくお願いいたします。




☆★☆中通り発着バスツアーのお知らせ☆★☆

■ タイムスケジュール

830

福島駅西口出発 ~

930

郡山市教組会館経由 ~


環境省着 ~ 申し入れ ~ミニ集会 ~

1446

ダイ・イン ~ 官邸前 ~

1600

福島に向けて出発 ~ 郡山着 ~福島着


■ 参加費

  往復2100円(保険料100円)
  片道1100円(保険料100円)

■ お問い合わせ・お申し込み先

  080-4518-7368

■ 主催

   原発いらない福島の女たち

■ 郡山発着場
  福島県教職員組合郡山支部(郡山教組会館)


集団的自衛権行使容認許すな!郡山市民集会アピール

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2014年6月19日18:30~JR郡山駅西口ひろば

アピール

集団的自衛権の行使容認を許さず、憲法9条を守っていこう

 5月15日、安保法制懇の報告書を受けて、安倍首相は集団的自衛権の解釈改憲を強行する方針を表明し、早期の閣議決定に向けて暴走を加速させています。とりわけ政権離脱を回避したい公明党が「限定容認」の方向で着地点を探る動きを見せるや、自民党は集団的自衛権行使のための新たな「3要件」を持ち出して、公明党の取り込みに躍起になっています。

 郡山市民のみなさん。

 事態は切迫しています。集団的自衛権容認の閣議決定という危険な事態がいま間近に迫っています。国家権力を規制する憲法を、そのシバリが気に食わないと、縛られる当の政府が勝手に解釈でシバリをなくしてしまう――安倍政権がいまやろうとしている解釈改憲とはこういうことです。まさに近代憲法の根本原則である立憲主義の否定であり、憲法破壊以外の何ものでもありません。

 郡山市民のみなさん。

 集団的自衛権の本質とは何でしょうか。それは、「自国が攻撃されていないにもかかわらず、他国に対して武力を行使し、戦争する」ということです。あれこれの事態をいくら想定しても、様々な「限定条件」をいくらつけても、集団的自衛得権の行使とは「日本が先に戦争を仕掛ける」ことにほかなりません。 しかし、安倍首相は「国民の命を守る」を幾度となく繰り返しましたが、集団的自衛権行使の結果については何一つ語っていません。戦争になれば、どれほど多くの国民の命が奪われるか、そのことについては口を閉ざしたままです。

 大ウソで始めたイラクヘの侵略戦争、そこに自衛隊が派兵されました。しかし、自衛隊はただの一発も銃を撃ってはいません。憲法9条があったからです。憲法9条が「戦闘地域には行かない」「武力行使はしない」という歯止めをかけ、自衛隊員の命をギリギリのところで守ってきたのです。集団的自衛権を認めるということは、この歯止めをなくすことです。その結果、日本は「海外で戦争する国」「殺し殺される国」になります。市民のみなさん、「戦争する国」づくりにノーを突きつけましょう。

 先日、与党協議の場で閣議決定原案の概要が提示されました。しかし、それは「限定」どころか「無限定」そのものです。閣議決定原案の新「3要件」は「他国への武力攻撃」があり、「わが国の存立が脅かされる」「国民の生命、自由……が根底から覆されるおそれ」がある場合には、集団的自衛権を行使できるとしています。「おそれ」とは何か、それは主観的判断そのものです。しかも判断するのは時の政権です。いくらでも拡大解釈が可能であり、何の歯止めにもなりません。新「3要件」が援用している1972年の政府見解は集団的自衛権を否定したものですが、これを恣意的に切り取って集団的自衛権容認の根拠とするなどというのは黒を白と言いくるめるもので、国民を愚弄するものと言わねばなりません。

 郡山市民のみなさん。

 私たちの平和憲法は、アジア諸国民2000万と日本国民310万という多大の犠牲を強いたアジア太平洋戦争に対する痛苦の反省の上に、世界に向かって不戦の誓いを発信したものです。憲法9条は、日本の誇りであり世界の宝です。この9条を何としても守りぬき、集団的自衛権の解釈改憲を阻止していきましょう。日本を「殺し殺される国」につくり変えようとする安倍政権の右翼的暴走にストップをかけましょう。

          2014619
集団的自衛権行使容認許すな!郡山市民集会


小児科医療オープン・ジャーナル【論文】カリフォルニアの新生児甲状腺疾患の急増とフクシマからの放射性ヨウ素

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【関連記事】
本論文について、共著者らが解説します…






OJPed

小児科医療オープン・ジャーナルOpen Journal of Pediatrics, 2013, 3, 370-376

オンライン公開:201312月(http://www.scirp.org/journal/ojped/


カリフォルニアにおける先天性甲状腺機能低下症の確定例および疑い例のフクシマ原子炉メルトダウン由来の環境フォールアウトに起因する変化
Changes in confirmed plus borderline cases of congenital hypothyroidism in California as a function of environmental fallout from the Fukushima nuclear meltdown



著者:

ジョセフ・マンガノ Joseph Mangano1

ジャネット・シャーマン Janette Sherman1

クリストファー・バズビー Christopher Busby2

所属:

1.      米国ニューヨーク、放射線・公衆衛生プロジェクト

2.      英国アベリストウィス、グリーン・オーディット(緑の監査)

連絡先

odiejoe@aol.com

受付:20131016日 改訂:2013119日 認可:20131116


Copyright © 2013 Joseph Mangano et al.

本稿は、クリエイティヴ・コモンズ表示ライセンスにもとづいて公開された論文であり、原本クレジットが適正に表示されることを条件として、いかなる媒体であれ、無制限の使用、配布、複製が許可されている。


原本クレジット表示:

Mangano, J. , Sherman, J. and Busby, C. (2013) Changes in confirmed plus borderline cases of congenital hypothyroidism in California as a function of environmental fallout from the Fukushima nuclear meltdown. Open
Journal of Pediatrics
3, 370-376. doi: 10.4236/ojped.2013.34067.



要約

放射線被曝は過去数十年にわたり先天性甲状腺機能低下症(CH)の症例が増加するリスクに結び付けられてきた。CHは比較的に稀な病態であり、米国においては2000回の出産にほぼ1の割合で発現する。カリフォルニアにおける新生児それぞれの甲状腺刺激ホルモン(TSH)のレベル値によって、CHの確定および疑い症例を組み合わせた分析が可能になった。CHの疑い・確定症例を合算した症例数は、確定だけの症例数の7倍になる。米国における総ベータ核放射線の空中線量レベルは、フクシマ原子炉メルトダウンから数日後にはじまる期間に上昇し、とりわけカリフォルニアなどの西海岸におけるそれが顕著だった。2011年末までの9.5か月間における新生児(子宮内被曝集団)のCH確定・疑い症例率は、2011年および2012年の他期間における新生児(非被曝集団)のそれよりも有意に上昇し、新生児の甲状腺の健康に対する悪影響が数少ないCH確定症例に限定されるものではないことを示唆していた。放射線被曝に対する胎児の感受性に加えて、甲状腺に蓄積する放射性ヨウ素の存在は、フクシマ核惨事が新生児の健康に悪影響をおよぼす可能性を分析する必要があることを示唆している。

キーワード:
小児甲状腺機能低下症、福島第1、炉心メルトダウン、胎児甲状腺
Congenital Hypothyroidism; Fukushima Dai-Ichi; Nuclear Meltdown; Fetal Thyroid

1.序論

先天性甲状腺機能低下症(CH)の罹患リスクは、いくつかの人口集団における胎児被曝に関連づけられてきた。最初のCH罹患率上昇は、放射性ヨウ素に対する高線量被曝の後で記録された。そうした人口集団には、1954年の水爆実験で被曝したマーシャル諸島住民1, 2およびその後の核実験による被曝住民36が含まれる。

同様な疾患リスクが、1986年のチェルノブイリ原子炉メルトダウン現場に近いベラルーシ共和国ゴメリ州で観測された71979年のスリーマイル・アイランド原発における部分的メルトダウンの後の9か月間に現場から風下で生まれた新生児のCH例が2倍増したが、風上では変化がなかった8, 9

放射能に対して胎児の感受性が高いこと10、比較的に低レベル線量で被曝した人間に立証されている健康リスク、甲状腺に蓄積する放射性ヨウ素同位元素による周知の生化学的な危険性が相まって、放射性ヨウ素に被曝した新生児のCH罹患リスクを増大させる。チェルノブイリ事故のあと、米国の北西部諸州において、牛乳にヨウ素131が検出11されるなど、全米で最も大量の放射性物質の沈着がつづいたあと、CH罹患率が最も急激に上昇した。ヨウ素131のような半減期の短い同位元素による被曝にいたる主要な経路は、飼料に放射性降下物が沈着することによる乳製品である。インディアン・ポイント原発(ニューヨーク州)に最も近接する4郡行政区における現在のCH罹患率は全米平均のほぼ2倍である12

本論文著者らのうち、2名(マンガノ、シャーマン)は最近の調査報告において、2011年の福島第1原発メルトダウンによる米国内の放射能沈着のうち、ヨウ素131沈着量が最大になったのは、アラスカおよびハワイと並んで、カリフォルニア、オレゴン、ワシントンの太平洋沿岸3州であったことを記録した13。レベル値は日本で観測されたそれに較べるとずっと低かったが、以前のレベル値よりも優に高かった。日本からのフォールアウトの米国到達につづく9か月間の上記5州におけるCH罹患率は有意に上昇した(RR = 1.16, p < 0.03)。上昇幅が最大だったのは、メルトダウン直後の3か月間だった(RR = 1.28, p < 0.04)。米国内の他の州では、降下した放射能線量が低く、有意な変化は見られなかった。

全米50州の新生児健康調査事業がそれぞれ自主的に運営され、独自の診断基準にもとづいてCHを定義しているので、米国におけるCH罹患率の分析に支障があった。いくつかの州では、向甲状腺ホルモン、すなわち甲状腺刺激ホルモン(TSH)の新生児血中濃度のみを測定し、他の州では、TSHに加えて、チロキシン(甲状腺ホルモンの一種:T4)も測っている。おまけに、各州は甲状腺機能低下症の確定症例と診断するための閾値をバラバラに定めており、各州間で意味のある罹患率分析を実施するのは困難である。

CH罹患率分析のもうひとつの欠陥は、疾患が比較的に稀なものであること。米国内で年間4,000,000件になる生児出生数に対して、CH罹患数は2000症例であり、率にすれば12000になる13。このように症例数が少ないので、小さな地理的範囲内や短期間内の傾向をいかなる形で分析するにしても困難になる。“境界線上”の症例は、当人の甲状腺ホルモン値が異常であっても、治療目的でCHと確定診断されていないので、CHの定義から除外されている。

本論文では、米国内の一貫した疾患定義を備えた単一の州におけるCHの――確定および境界線症例を合算した――罹患率をフクシマ由来の環境放射能量の変動と比較する。この手法によって、非常に多数の症例を活用できるようになり、有意の結果をうる可能性が高まるはずである。

2.資料と手法

フクシマ核惨事由来の環境放射性降下物を最も大量に見舞われた米国内5州のひとつが、2012年調査による推計人口38,041,43014を抱えるカリフォルニアである。カリフォルニア州民の年間出生数は50万を少し超え、これは全米出生数のほぼ8分の1にあたる15

カリフォルニア州当局は、新生児それぞれの血液を分析し、複数の先天性疾患の有無を診断する出生時健康調査プログラムを実施している。この調査では甲状腺刺激ホルモン(TSH)値がミリリットルあたり29.0マイクロ国際単位(μIU/ml)を上回る場合のみ、先天性甲状腺機能低下症(CH)と診断している。この基準に合致するすべての子どもは、正常な身体的・精神的成長を促すために、代替的な甲状腺ホルモンを処方されている。州当局は201111日を期して、TSH値を計算するための分析方法を変更した。その結果、ほとんどすべての新生児の検定値が割増しになり、当然ながらCH症例数も増えることになった16

(訳注:国際単位international unitとは、ビタミンや抗生物質などの量・効果を測定するのに国際的に認められた単位~研究社/新英和)

カリフォルニア新生児健康調査ブログラムによって、2009年から2012年まで毎年のTSH被験新生児数データが得られる(1)。TSH検査値の単位ごと(0.00.91.01.9、≦29.0、>29.0)の新生児数が表示されている。

12009年から2012年までの各年のカリフォルニアにおける出生コホート(集団)による甲状腺刺激ホルモン(TSH)値被験新生児の数。

出生日

2009

2010

2011

2012

11316

106,160

101,018

99,953

99,122

317日~630

148,283

141,974

142,592

138,529

 711231

266,050

260,355

252,874

259,056

TSH被験新生児数合計

520,583

503,347

495,419

496,707

カリフォルニア出生数合計

527,020

510,198

*

*

* 本論文公開の時点で、公的な州民出生数は不明。
出処:カリフォルニア州政府公衆衛生省、先天性疾患調査プログラム、201358日公示。

TSH検出値が高いが、29.0には届かないカリフォルニアの新生児は甲状腺ホルモンの補充を処方されないものの、CHの疑い例として確定診断を求められる。これら「境界線上」のCH症例の数は、おそらく確定症例の数よりずっと多くなるはずである。

健康調査プログラムはそれぞれ用いる評価方法の型が異なっており、プログラムによって、TSH評価基準がばらついているので、境界線上CHの普遍的な閾値を定義することはできない。最近の研究のひとつは「軽症」のCH症例をTSH値が20ないし100μIU/mlの範囲内のものと定義していた17が、別のもうひとつは、いくつかのCH症例のTSH値が10μIU/ml未満であったと結論していた18。われわれはカリフォルニアにおける境界線上CH症例のTSH閾値レベルを定義するにあたり、19.0ないし28.9μIU/mlという慎重を期した範囲を採用したところ、2011年から2012年の期間内において、これに該当するカリフォルニアの新生児数は全数の約0.5パーセントになった。境界線上症例を加算することで、2011年ないし2012年期間のCH全数は4670症例(確定658症例、境界線上4012症例)に押し上げられ、7倍以上に増えたことになる。カリフォルニアにおける牛乳、水、食品のヨウ素131含有レベルの検査が、限定的であり、散発的であったのは、残念なことである。したがって、太平洋岸に位置しており、フクシマのメルトダウンに由来するフォールアウトが米国の非西部地域よりも大量に降り注いだカリフォルニアの汚染程度を分析するのに、総ベータ放射能蓄積量の政府による公的な空気フィルター検出法の測定値を、このタイプの放射能測定件数が多いという理由で用いることにした192は、カリフォルニア全域6か所のベータ放射線検出傾向と、米国西部地域に属さず、西経112度の東に位置する、それぞれ別の州の米国内22か所のそれとの対比を示している。週に1、2回の測定が実施されている地点の各年前半6か月間分のデータだけが計算に入れられている。2011318日から417日にかけての米国内大気中の総ベータ線量値が正常な数値に比較して高くなっていることが浮き彫りにされている。われわれは318日~417日期間の総ベータ線量値と同期間を除く同年前半期のそれと較べた比率を計算し、さらに2011年分の比率と2009年から2012年にかけての合算比率とを比較した。付表1(訳注:論文末尾に掲載)に、各地点の結果を示す。

2空気フィルター試料の総ベータ放射線量値、単位:1立法メートルあたりピコ1兆分の1キューリー。318日~417日期間と同期間を除く同年前半期、2011年の検出値と2009年、10年、12年合算値、カリフォルニア6か所と非西部米国内22か所の比較。






318日~417



2011年平均ベータ値

200912年平均ベータ

200912年平均ベータ

11年/

地域

3/184/17

他の同年前半期

3/184/17

他の各年前半期合算

2011

091012

091012

カリフォルニア

48.27 × 10−3 (54)

6.40 × 10−3 (190)

5.12 × 10−3 (119)

6.88 × 10−3 (547)

7.99

0.76

10.53

他地域

20.21 × 10−3 (179)

8.40 × 10−3 (547)

8.40 × 10−3 (526)

9.19 × 10−3 (2431)

2.34

0.92

2.55

出処:米国環境保護局。外気環境放射能監視システム(ERAMS)。
http://oaspub.epa.gov/enviro/erams_query.simple_query

カリフォルニア州内6か所におけるフクシマ核惨事後1か月間の平均値の、それ以外の2011年前半期のそれに対する比率は7.99だった。冬期各月の空気中ベータ放射能濃度は春季のそれに比べて概して高くなるので、2011年以外の3年間分の比率は0.76だった。それ故、2011318日~417日期間のカリフォルニアにおけるベータ線量値は、通常想定値の10.53倍になった(7.990.76)。米国内の他地域22か所における2011年のフクシマ核惨事後1か月間の総ベータ放射線量の平均値は、その1か月を除く同年前半期のそれに比べて2.34倍であり、その一方、2009年、2010年、2012年分を合算したそれは0.92倍だった。それ故、平均ベータ放射線量は想定予測値の2.55倍であり、カリフォルニア分の10.53倍よりはるかに低い。

付表1は、カリフォルニア州内の各地点間で総ベータ放射線量平均値に多少のばらつきがあるとしても、同州内のそれが一貫して高いことを示している。最高の検出値は、ロサンジェルス郊外、カリフォルニア州アナハイムの観測所のもので、フクシマ核惨事勃発後の1か月間に17回測定したうちの7回分は172.0を超えており、それに比べて、それ以外の年の同時期の平均検出値は6.7−3ピコキューリーだった。カリフォルニアにおける1回分の測定で高い検出値だったのが、2011319日の276.0−3ピコキューリーである。カリフォルニアに降り注いだフクシマ放射性降下物レベルは米国内の大部分よりも高く、人間の健康、とりわけ胎児の健康に悪影響をもたらしたのではないかという懸念を浮上させる。

TSH検査値が19.0μIU/mlを超えているカリフォルニア州の新生児の2011年から2012年までの期間における比率変化を分析することにした。2011年下期9.5か月間に生まれた新生児は、子宮内で日本から飛んできた高いレベルの放射能に被曝しているので、317日から1231日までの新生児に生じるTSH検査値の上昇の割合が、2011年に高まり、2012年に低下すると予想される。11日から316日までの期間に生まれた人間集団は、2011年や2012年には子宮内でフクシマ由来の放射能に影響されていない。

3.結果

2011年のさまざまな産児集団でTSH検査値が19.0μIU/lmを超えている新生児の比率を3に示す。われわれはフクシマ放射性降下物の存在の前と後における先天性甲状腺機能低下症(CH)罹患率を比較することに関心があった。しかしながら、カリフォルニア州当局は甲状腺刺激ホルモン(TSH)検査値診断に用いる分析方法を201111日に変更していたので、2011年における多くの新生児の検査値が高くなり、その前年のデータとの意味のある比較ができなくなった。

32011年と2012年の出生期日別、カリフォルニアにおける確定および境界線上の先天性甲状腺機能低下症例。


新生児

TSH19μIU/ml

TSH29μIU/ml

期日

被験数

100,000

100,000

被曝

201111日~316

99,953

500 500.2

69 69.0

2011317日~630

142,592

777 544.9

94 65.9

201171日~1231

252,874

1360 537.8

200 79.1

201211日~316

99,122

450 454.0

63 63.6

2012317日~630

138,529

504 363.8

88 63.5

201271日~1231

259,056

1079 416.5

144 55.6

出処:カリフォルニア州政府公衆衛生省、先天性疾患調査プログラム、201358日公示。

フクシマ由来の放射性降下物の影響を最も強く受けた新生児の分析をおこなうために、2011年と2012年は、11日~316日、317日~630日、71日~1231日の期間に分けられている。3は、年毎のこれらの期間別の出生数、TSH検査値が19μIU/mlおよび29μIU/mlを超えている新生児100,000人あたりの症例数と比率を示している。2009年および2010年の州政府調査プログラムでTSH検査値がわかっている出生はカリフォルニ州民の総出生数の98.7パーセントである(2011年および2012年における総出生数の確定値はまだわからない)。3において、「被曝」集団(フクシマ放射性降下物が米国内に到達したあとの9.5か月間に生まれた新生児)と「非被曝」集団(その他の2011年および2012年の新生児)と定義した区分けにもとづき、統計的検定を実施した。マンテル・ヘンツェルχ2検定を用いた統計的有意性検証を4に示す。

4先天性甲状腺機能低下症の確定症例(TSH検査値>29μIU/ml)および確定症例と境界線上の症例(TSH検査値>19μIU/ml)、2011317日~1231日期間に出生および2011年と2012年のその他の期間に出生したカリフォルニアの新生児に対するマンテル・ヘンツェルχ2検定を用いた統計的有意性検証。

TSH検査値

被曝

非被曝

被験者総数

19μIU/m

2137

393,329

395,466

19μIU/ml

2533

594,127

596,660

RR = 1.27

CI (1.20RR1.35)

χ2 = 67.9

 p0.00000001

29μIU/ml

294

395,172

395,466

29μIU/ml

364

596,296

596,660

RR = 1.21, CI (1.04RR1.42), χ2= 6.15, p0.013

2011317日~1231日期間内に出生した集団、すなわち子宮内でフクシマ由来の環境放射能に被曝した新生児のCH罹患率は、確定症例に関して、2011年および2012年の他期間の新生児に比べて有意に上回った(p0.013)。確定症例に境界症例を加えると、統計的有意性は大きく高まる結果になった(p0.00000001)。子宮内でフクシマ由来の放射性降下物で被曝したものを含む新生児集団の場合、2011年から2012年への境界症例と確定症例の合算値の減少率は想定外に大きかった。317日から630日にかけての下落率は-33.2パーセント(100,000出生あたり544.9から363.8への減少)だったが、71日から1231日にかけての下落率は-22.6パーセント(同537.8から416.5へ)であった。確定症例だけでなく、試料数が大きくなれば、変化の実相を理解しやすくなる。

4.考察

米国西海岸および太平洋に位置する諸州においてフクシマ核メルトダウン事故後に環境放射能レベルが上昇すれば、この放射能が人間、とりわけ傷つきやすい胎児に害をおよぼすのではと懸念がつのる。われわれはすでに、放射性降下物到着後の9か月間のこの地域において、新生児の先天性甲状腺機能低下症(CH)罹患率が上昇したことを立証した。その新生児のひとりひとりが子宮内で正常より高レベルの放射能に被曝したのである。

疾患診断における臨床検査閾値の確定は、とりわけ手厚い治療のための指標として重要である。「境界線上」症例の定義も、個別の患者の治療にあたる場合にしても、住民全体を対象にした医療制度で用いるにしても、あるいは因果関係を理解する手段としても、やはり重要である。体格指数、コレステロール値、血圧、さまざまな免疫系機能といった一般的に採用されている検査は、確定診断症例と境界症例の両方が重要であることを示している例である。

CHの境界症例を自由裁量で定義しなければならないにしても、放射性ヨウ素による胎児期被曝によって、CH確定症例だけでなく、境界症例のリスクを高めるかもしれない。カリフォルニアの場合、確定症例(TSH検査値>29.0μIU/ml)に境界症例(28.9THS検査値>19.0)を加えると、症例数が7倍以上に増えた。

米国内で環境放射線値が上昇したが、2011年春の数週間を経たのち、標準レベルに戻った。また、原子炉からの放射性ヨウ素の大半は、短寿命の同位元素、たいがいは半減期がたかだか8.05日のヨウ素131であり、米国内におけるフクシマ由来の放射性ヨウ素による被曝は2011年春に限定されていたことがわかる。日本のメルトダウン事故に由来する放射性降下物が到達してから9.5か月間におけるカリフォルニアのCH症例数の有意な増加が、確定症例数および確定症例と境界症例の合算数の両方で観測された。両方の比率増大がともに統計的に有意であるものの、確定集団が658症例だけだったのに比べて、確定・境界合算集団が2011年から2012年にかけてずっと多くの症例(4670件)があり、ずっと多かった。

この知見は、胎児期の甲状腺が放射線被曝による健康への悪影響によって格別に傷つきやすいとする研究を裏付けるものである。胎児の甲状腺はヒトの胚で最初に出現する分泌腺組織であり20、妊娠70日目にヨウ素集積と甲状腺ホルモン生産をはじめる。脳の正常な発育は、適正な甲状腺機能に依存している21

本論文では、フクシマ原発におけるメルトダウンによるカリフォルニアの胎児に対する被曝線量を取り上げた。米国政府による公的データでは、空気、水、その他の環境媒体中の放射性ヨウ素蓄積量の測定回数が限られているが、ほとんどの最高値は米国西部で得られている。われわれは空気中の総ベータ放射能蓄積量データを用いたが、これは具体性に劣っており、この総ベータ放射能とは、ヨウ素だけを指しているのではなく、セシウム137やその他の同位元素といった複数のベータ放射線を発する放射性化学物質を含めたものである。カリフォルニアにおけるフクシマ放射性降下物到達後1か月間の空気中ベータ放射能の実測値の想定値に対する比率が、非西部地点のそれよりも大きかった(想定値の2.55倍に対して10.53倍)という、われわれの研究結果は、米国の西部および太平洋諸州が最大の被曝線量をこうむり、その結果、健康に対する悪影響が引き上げられたとする理解を裏付けている。乳歯に含まれるストロンチウム90蓄積量の測定が妊娠後期と出生後の被曝線量測定に採用されている。原爆実験、チェルノブイリのメルトダウンに由来したり、米国および英国の原子炉の近隣地域が見舞われたりするストロンチウム90に関する研究は、人間に対する現実の被曝線量に関する貴重なデータをもたらしている22~28

フクシマ原発の近隣地域と遠隔地域における甲状腺の健康への潜在的な悪影響に関して、さらなる研究が緊急に必要である。日本の福島医科大学は、地元の18歳以下の子どもたちを調査している。そのプロジェクトはすでに、その子どもたち94,426人の43.6パーセントが甲状腺に結節または嚢胞(のうほう)が観察されていると記録している29。同プロジェクトは20113月以降に、検査対象の018歳児178,000人のうち、44人を甲状腺癌症例と診断しており、これは100,000万人あたり12症例の年間罹患率に相当するが、それに対して、日本臨床腫瘍研究グループによる分析にもとづく2005年の想定罹患率は100,000人あたり0.15症例である30。これは80倍という著しく高い標準化発症比である。さらに、まだ確定されていない疑い例の子どもたちもいる31

遠隔地では線量が低くなるだろうからといって、研究をフクシマ地域に限定すべきではない。メルトダウン由来の放射性降下物は太平洋を渡り、5日間で米国西岸に到達し、やがて北半球全域を周回した。それ故、多くの人びとが比較的に低線量の――とはいっても、やはり人間に健康リスクをもたらす――フクシマ由来の放射能に被曝した。「電離放射線による生物学的影響に関する委員会」(BEIR)は、この主題に関する最近の2本の報告書において、放射線と健康リスクのあいだに直線・閾値なし線量・反応関係が存在すると結論するとともに、胎児および幼児の感受性が高くなることを再確認した32, 33。スチュワート他は、妊娠中に子宮・骨盤内エックス線検査で被曝した子どもの癌死亡リスクが2倍近くに高まることを実証した34~36。米国医学研究所および米国学術研究会議は、ネヴァダ砂漠における大気圏内核実験に由来する比較的に低線量の放射性ヨウ素131による胎児/幼児/児童期の被曝の結果、212,000人にも達する多くの米国民が甲状腺癌を発症したと推計した37, 38

5.結論

メルトダウンから3年足らずが経過したものの、放射性降下物による低線量被曝の健康への影響、生涯の最初の段階にある子どもたちの健康への影響を分析するべきである。幼児期死亡、新生児死亡、出生異常、低体重出生、未熟出生、出生1年以内の癌など、20113月以降の健康状態指標を分析することができる。若年層を対象にした短期研究の知見は、全年齢層の人びとの健康に対する潜在的な長期的悪影響に対する警告として有益である。

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Appendix 1. Ratios, March 18 - April 17 vs. other first half year, gross beta concentrations in air filter samples, 2011 vs. 2009-2010-2012 combined, in picocuries per cubic meter, six California sites vs. 22 Non-Western US sites.






March 18 - April 17



Avg. Beta, 2011

Avg. Beta, 2009-10-12

vs.
Other 1st Half Yr.

2011 vs.

地点

3/18 - 4/17

Oth. 1H

3/18 - 4/17

Oth. 1H

2011

2009-
10-12

2009-
10-12

カリフォルニア








アナハイム

113.5 × 10−3 (17)

6.1 × 10−3 (27)

6.7 × 10−3 (19)

9.8 × 10−3 (81)

18.61

0.68

27.39

ベイカーズフィールド

59.1 × 10−3 (7)

12.1 × 10−3 (39)

6.7 × 10−3 (22)

9.7 × 10−3 (101)

4.87

0.69

7.02

リッチモンド

21.0 × 10−3 (6)

5.9 × 10−3 (23)

4.1 × 10−3 (14)

5.6 × 10−3 (62)

3.57

0.73

4.91

リヴァーサイド

43.9 × 10−3 (9)

6.3 × 10−3 (41)

6.4 × 10−3 (24)

7.2 × 10−3 (122)

7.02

0.89

7.93

サンフランシスコ

29.2 × 10−3 (9)

3.2 × 10−3 (31)

3.2 × 10−3 (18)

3.7 × 10−3 (81)

9.16

0.87

10.58

サンホセ

22.9 × 10−3 (6)

4.9 × 10−3 (29)

3.8 × 10−3 (22)

5.4 × 10−3 (100)

4.72

0.70

6.74

平均

48.27 × 10−3 (54)

6.40 × 10−3 (190)

5.12 × 10−3 (119)

6.88 × 10−3 (547)

7.99

0.76

10.53

米国内他州








アルバニー NY

24.2 × 10−3 (8)

9.1 × 10−3 (41)

9.9 × 10−3 (26)

9.7 × 10−3 (113)

2.66

1.02

2.60

バルティモア MD

19.6 × 10−3 (9)

8.6 × 10−3 (35)

9.1 × 10−3 (21)

9.9 × 10−3 (99)

2.27

0.92

2.47

バトンルージュ LA

11.4 × 10−3 (8)

6.0 × 10−3 (38)

6.2 × 10−3 (26)

7.1 × 10−3 (119)

1.90

0.88

2.17

ビスマーク ND

13.6 × 10−3 (8)

6.9 × 10−3 (35)

8.2 × 10−3 (20)

9.0 × 10−3 (98)

1.96

0.92

2.14

シャーロット NC

12.7 × 10−3 (9)

7.5 × 10−3 (38)

8.8 × 10−3 (21)

8.8 × 10−3 (117)

1.71

1.00

1.71

クリーヴランド OH

16.0 × 10−3 (8)

7.7 × 10−3 (40)

10.9 × 10−3 (19)

10.4 × 10−3 (122)

2.08

1.04

1.99

ダラス TX

24.0 × 10−3 (9)

8.9 × 10−3 (34)

8.6 × 10−3 (23)

9.3 × 10−3 (119)

2.71

0.93

2.92

デモイン IA

41.7 × 10−3 (8)

11.3 × 10−3 (43)

7.9 × 10−3 (24)

9.1 × 10−3 (87)

3.68

0.87

4.92

デトロイト MI

21.4 × 10−3 (8)

8.0 × 10−3 (41)

8.1 × 10−3 (27)

8.6 × 10−3 (120)

2.68

0.94

2.68

ドーヴァー DE

10.7 × 10−3 (7)

6.7 × 10−3 (33)

6.6 × 10−3 (21)

7.8 × 10−3 (87)

1.59

0.84

1.88

エジソン NJ

12.2 × 10−3 (9)

5.6 × 10−3 (35)

5.9 × 10−3 (26)

5.8 × 10−3 (104)

2.21

1.01

2.18

インディアナポリス IN

30.8 × 10−3 (8)

10.4 × 10−3 (43)

8.4 × 10−3 (27)

9.3 × 10−3 (124)

2.95

0.91

3.25

ジャクソン MS*

17.4 × 10−3 (9)

9.4 × 10−3 (39)

8.4 × 10−3 (25)

9.5 × 10−3 (119)

1.85

0.88

2.09

ジャクソンヴィル FL

12.5 × 10−3 (8)

6.6 × 10−3 (33)

6.8 × 10−3 (25)

6.8 × 10−3 (104)

1.88

1.00

1.89

ジェファーソンシティ MO

21.2 × 10−3 (8)

9.1 × 10−3 (40)

9.0 × 10−3 (24)

10.0 × 10−3 (116)

2.33

0.90

2.61

リンカーン NE

34.3 × 10−3 (6)

7.6 × 10−3 (34)

8.7 × 10−3 (24)

9.9 × 10−3 (103)

4.52

0.89

5.10

リトルロック AR

16.1 × 10−3 (8)

10.8 × 10−3 (37)

8.9 × 10−3 (24)

10.3 × 10−3 (96)

1.49

0.86

1.72

リンチバーグ VA

33.7 × 10−3 (8)

10.4 × 10−3 (42)

9.0 × 10−3 (27)

10.0 × 10−3 (120)

3.24

0.90

3.62

オークリッジ TN*

22.6 × 10−3 (8)

10.7 × 10−3 (39)

10.0 × 10−3 (25)

12.3 × 10−3 (116)

2.12

0.81

2.62

ピア SD

16.7 × 10−3 (9)

8.6 × 10−3 (41)

8.3 × 10−3 (21)

9.7 × 10−3 (116)

1.95

0.84

2.26

トピーカ KS

23.3 × 10−3 (8)

11.9 × 10−3 (43)

10.4 × 10−3 (23)

12.1 × 10−3 (111)

1.96

0.86

2.28

ワシントン DC

8.7 × 10−3 (8)

4.9 × 10−3 (40)

6.7 × 10−3 (27)

6.8 × 10−3 (121)

1.76

0.97

1.81

平均

20.21 × 10−3 (179)

8.48 × 10−3 (844)

8.40 × 10−3 (526)

9.19 × 10−3 (2431)

2.34

0.92

2.55

*Jackson Department of Environmental Quality site only; Oak Ridge Y-12W site only; Source: US Environmental Protection Agency. Environmental Radiation Ambient Monitoring System (ERAMS).
http://oaspub.epa.gov/enviro/erams_query.simple_query.

【関連記事】
本論文について、共著者らが解説します…

ECOLOGIST寄稿文
クリス・バズビー
「フクシマ放射性降下物が原因でカリフォルニアの乳幼児に甲状腺障害」



【訳者による追補】

本日本語訳稿をアップした後、この論文の欠陥を指摘する「小児科医療オープン・ジャーナル編集者への手紙」があると指摘されました。公正を期すため、論文への反論の紹介としてリンクを付しておきます…

Fukushima Voice version 2
掲載拒否されたエディターへの手紙:マンガノ、シャーマン&バズビー共著のフクシマ事故後のカリフォルニア州での先天性甲状腺機能低下症論文について

【急告!】6.29(日)放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会 第5回学習会(郡山市)

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629日に開催予定の放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会 第5回学習会のご案内です。
画像出処


【日時】629日(日)10001630


【会場】福島県教職員組合郡山支部会議室
    〒963-8025 福島県郡山市桑野2丁目33-9




【参加費】1000
(昼食は各自ご用意をお願いします。お茶は用意致します。)

ゲストスピーカー
永田文夫さん(三陸の海を放射能から守る岩手の会 世話人)

 独自調査によって排ガスに多くの放射性物質が含まれることを確認、99.9%はバグフィルターで捕捉できるという環境省の説明を否定されています。201379日より宮古市の清掃施設で放射能汚染牧草等の焼却開始後、計測によって周辺の小学校で線量の上昇が続いていることを突き止め公表されています。福島で建設が進められている20基以上の仮設焼却炉の危険性について知っていただく機会となるでしょう。

<連続講座テーマ>

l  福島県内の仮設焼却炉計画および鮫川村
前回の学習会で提起された問題と取組みの進捗について

l  新たな問題提起、最新情報など

アドバイザー

坂本博之さん(弁護士、ゴミ弁連事務局長)

ゴミ弁連「たたかう住民とともにゴミ問題の解決をめざす弁護士連絡会」http://gomibenren.jp/

藤原寿和さん(千葉県放射性廃棄物を考える住民連絡会事務局長)

資料準備のため事前にお申込み下さい。

放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会
stopshokyakuf@yahoo.co.jp
080-6010-3750
(担当:和田)

~知って、調べて、動いてみよう~
午前の部 =各地の動き 市民からの報告=

1000

鮫川村、飯舘村の仮設焼却炉ほか

都路町の事前調査に関する住民説明会

県中浄化センターの仮設焼却炉

郡山リサイクル協同組合

1200

昼食


午後の部① =焼却による環境への影響等について=

1300

ゲストスピーカー:

永田文夫さん

 宮古市における指定廃棄物焼却による環境への影響について(60分)

 質疑応答(10分)

1410

藤原寿和さん

 伊達地方衛生処理組合による霊山町石田の仮設焼却

 炉における生活環境影響評価(アセス)の不備について(40分)

 質疑応答(10分)

1500

休憩(10分)


午後の部② =最終処分場問題について=

1510

坂本博之さん(弁護士)調整中(30分)

1540

千葉県指定廃棄物処分場計画

栃木県指定廃棄物処分場計画

フクシマエコテック処分計画

中間貯蔵施設

1620

質疑

1630

閉会


時間と内容は一部変更・調整することがあります。

遠方にて参加できない方、スケジュールが生憎かぶられた方、焼却問題に関心をお寄せの方、当日参加の方で事前学習を望まれる方それらの方にコンビニを使った資料の印刷を案内致します。拡散歓迎重複御免でお願いします。
時間と内容は一部変更・調整することがあります。

---------------------------------------------

【事前資料配布のお知らせ】
ゲストスピーカー永田さんの資料を事前に下記の要領で配布します――

u  ネットプリント
対象コンビニ:セブンイレブン
6G7XE4BH

u  ネットワークプリント 
対象コンビニ:ローソン、ファミリマート、サンクス
KB9GAFFWM8

u  お近くコンビニからプリントアウトして下さい。

u  ご注意いただくこと。

対象コンビニを間違えないこと、全部で10枚で600円ほどかかること、本来5メガ程のものを3分の一ほどに圧縮していますので画像の劣化があります。用紙サイズはB4サイズにしてございます。老眼対策です。

u  600円は嫌だという方には、PDFをダウンロードできます。ご自由に活用下さい。ただ画像の劣化があることをご容赦下さい――

140929_焼却問題学習会資料.pdf

u  オリジナルが必要な方は、別途申し出てください。対応します。


【文責】放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会事務局 深田和秀

カナダ誌【海外報道】福島市の荒川が“水質ランキング日本一”

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ヴァンクーヴァー・オンライン情報誌
http://www.straight.com/

福島市の荒川が“水質ランキング日本一”
水系の魚類、植生、堆積物の放射能検査を実施しないで認定。

マーティン・ダンフィ MARTIN DUNPHY  2014726

荒川は、核惨事を起こした福島第一原発から70キロの福島市の近隣に水源を発し、市内を流れる
福島県の荒川は、国の国土交通省によって日本一クリーンな河川であると判定された。
国土交通省は、荒川の河川水、堆積物、植生、魚類の放射能検査をなんら公表することもなく、この判定を進呈したのである。

荒川は(東京湾に流入する同名の河川とは別ものであり)、福島市の西、吾妻山に水源を発し、約30キロ流れ下って、阿武隈川に合流する。

福島市は、20113月、東日本に襲来した地震と津波のあと、三重炉心メルトダウンに見舞われて損壊した福島第一原子力発電所から西70キロに位置している。

損傷した原発は高レベル放射性物質を大気圏中に放出し、それ以来、太平洋に大量の放射性地下水を日ごとに漏出してきた。

福島市は、核惨事のあと、福島第一原発の周辺に設定され、当局が30万の人びとに避難を強いた立ち入り禁止区域に近い。3年以上たったいまも、約12万の人びとが自宅や農地に戻れないままである。

今回の国土交通省発表は、安倍晋三首相の自民党政権が日本の原発約50基の再稼働を推進しているのと同時並行している。原発施設群は、地震と津波が引き起こした破局のあと閉鎖され、再稼働するには、日本の新しい原子力監視機関に申請しなければならない。

各地の原発の原子炉19基が原子力規制庁による安全計画審査手続きを受けており、そのうち最初に鹿児島県・川内原発の原子炉2基が今年の秋にも発電事業に復帰する見込みである。

2011年に先立つ2004年から2007年にかけて、福島県を含む6県で構成される本州北東部の東北地方において、荒川は水質トップの座を争っていた。また2007年には、荒川は水質クリーン度で全国トップの座を他の国内6河川と分けあった。

直近の栄誉は、国土交通省が実施した2013年度の生物化学的酸素要求量(BOD)検査の結果を分析したあと、722日に公表され、Fukushima Diaryウェブサイトで報道された。

放射能検査が実施されたとは、公表されていない。

国と各県の行政府は東北復興プロジェクトを展開して、地域のその農漁業・観光業潜在力に対する国内的および国際的な信頼の回復を目指している。

この河川栄誉賞は、サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports )サイトに1年間かけた研究(訳注:日本語要約)が掲載され、荒川流域に生息する野生ニホンザル(Macaca fuscata)は、福島第一原発の北方400キロ、本州北部の下北半島のサル個体群に比べて、白血球・赤血球細胞の計数値が「有意に低く」、筋肉中のセシウム濃度が高いことが示されることになった時点のほんの2日前にもたらされた。

これからの研究は、サル個体群のストロンチウム90蓄積レベルの判定を目指している。

この論文は、2011年の原発炉心メルトダウンのあと、福島市内およびその周辺(実質的に荒川の全流域)における土壌の放射性セシウムの蓄積量が1平方メートルあたり10,000ないし300,000ベクレルと計測されていることを日本政府の研究が示していると指摘している。

原子力規制庁の公表値によれば、立ち入り禁止区域の外部における核惨事直後から2年間の空中放射線量積算値は7.5ミリシーベルトになる。

朝日新聞の201275日付け記事によれば、201112月および20121月に日本の環境省が実施した調査によって、福島県内の湖沼・河川に生息する魚類と昆虫類のセシウム蓄積レベルが県内の海洋生物のそれより高いことが判明している。

20124月からこのかた、福島県内3か所の湖の魚類および貝類のセシウム蓄積レベルが国定の食品限度値である1キログラムあたり100ベクレルを超えていることが明らかになっていると朝日新聞は報道した。

侵食と降雨によって、汚染した土砂が河川や小川へと周辺の田園地帯から流れこむ。

******

【付録】

復興 未来へ ふくしまの力で

 国土交通省は22日、国が管理する全国163の一級河川を対象にした平成25年の水質調査結果を発表した。福島市の荒川は4年連続で水質ランキング全国一となった。

 河川の水質を示す指標の生物化学的酸素要求量(BOD)の「年平均値」を調査した。25年の調査で荒川のBOD平均値は検出上の最小値に当たる1リットル当たり0.5ミリグラムだった。同じ数値で1位となったのは全国で10河川あり、東北では荒川だけだった。

 荒川は19、20年と連続で全国1位だったが、21年に10位となった。22年に1位に返り咲き、4年連続で日本一を維持している。

 管理する福島河川国道事務所は「流域住民の河川愛護の取り組みの成果。引き続き、協力してほしい」としている。

 2014/07/23 08:39 カテゴリー:主要 

福島河川国道事務所


記者発表資料

平成25年8月2日
福島河川国道事務所

3年連続で荒川(福島市)"水質ランキング全国“1位”
~平成24年の国土交通大臣管理区間の河川水質調査結果~


国土交通省では、昭和33年(東北地方:昭和35年)から一級河川(大臣管理区間)において水質調査を実施しています。
 平成24年(1月~12月)の水質調査結果が発表(82日)になり、荒川が3年連続で全国の水質ランキング1位になりました。


※全国の水質調査対象河川数-163河川

荒川の  BOD 平均値 H24 0.5 mg/l H23 0.5 mg/l
水質     BOD75 %値 H24 0.5 mg/l H23 0.5 mg/l

【河川水質ランキング対象河川の条件と評価基準】

■河川水質ランキングは、以下の条件を満たす河川を対象としています。

Ÿ   一級河川本川:国土交通大臣管理区間に調査地点注)が2つ以上ある河川。

Ÿ   一級河川支川:国土交通大臣管理区間の延長が概ね10km以上で、かつ調査地点(注)が2つ以上ある河川。
注)湖沼類型指定、海域類型指定の調査地点は含まない。ダム貯水池は原則として調査地点は含まない。

■順位は、BOD(生物化学的酸素要求量)の年平均値を用いて、各河川毎に全ての調査地点を平均した値で評価します。なお、年平均値が同じ場合には75%値で評価しています。


水質3年連続全国第1位は、流域の皆様の河川愛護のおかげと思われます。

引き続き、皆様のご協力をお願いします。


<記者発表先>福島県政記者クラブ、福島市政記者クラブ


< 問い合わせ先>

国土交通省東北地方整備局福島河川国道事務所

福島市黒岩字榎平36番地

TEL024(546)4331(代表)

副所長(河川) 畠山浩晃(内線204)

河川管理課長  宍戸善博(内線331)

占用調整指導官 嶺岸由紀彦(内線303)


【参考】

※BOD(生物化学的酸素要求量)

水の汚れ(有機物)が微生物の働きで分解されるときに消費される酸素の量のことで、河川の水質を示す代表的指標値として使われます。数値が大きいほど水質が汚れていることを示します。

BODに関する水質分析は、最小値を0.5 mg/l として分析をするため、ランキング上、もっともBODの小さい値0.5 mg/l となります。

※75%値

月1回の水質測定で年12回分のデータがあったとした場合、データを小さい順から並べ12回×0.75≒9番目のデータ値をいいます。

※国土交通本省(全国版)・東北地方整備局においても記者発表しております。

【参照データ】

福島県放射能測定マップ【県北地方】荒川桜づつみ河川公園の測定値

土手の測定値

最新の測定値 2013年06月12日 測定
50cm高さ地点
0.59マイクロシーベルト/時
100cm高さ地点
0.58マイクロシーベルト/時



福島県及びその近隣県における航空機モニタリングの測定結果について PDF


図1=阿武隈川流域概図

図2=文科省によるCs137及びCs134の堆積図


【蛇足】

#Nature【環境】福島第一原発の近くに生息するサルの血球数が少ない

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Scientific Reports

2014724

Environment: Blood changes in monkeys near Fukushima



福島市の森林地域に生息する野生のニホンザルの血球数が、青森県のサルと比べて少ないことを報告する論文が掲載される。この結果は、ニホンザルの血球数の変化の一因が、福島第一原子力発電所事故後の放射性物質の被曝であった可能性を示唆しているが、正確な原因は証明されていない。

今回、羽山伸一(はやま・しんいち)たちは、福島第一原子力発電所から70 kmの地点に生息している61匹のサルと同発電所から約400 km離れた下北半島に生息している31匹のサルを比較した。今回の研究では、福島のサルの赤血球数、白血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値が、いずれも下北半島のサルより有意に少ないことが判明した。また、福島のサルの筋中放射性セシウム濃度(放射線被曝の指標の1つ)は、生息地の土壌汚染レベルと関係していたが、下北半島のサルの筋中放射性セシウム濃度は、いずれも検出限界以下だった。福島のサルの場合、未熟なサルの白血球数が筋中放射性セシウム濃度と負の相関関係にあったが、成熟したサルには、そのような関係は見られなかった。この点について、羽山たちは、若いサルの方が放射性物質に脆弱である可能性が示されていると考えている。また、血球数の少ないことについては、免疫不全の徴候であるとし、そのためにサルが流行性感染症にかかりやすくなる可能性があるという見方を示している。

羽山たちは、福島のサルの血球数が少ない原因が、感染症や栄養不良ではないとするが、放射線障害が原因であることを確認するためには、さらなる研究が必要なことも指摘している。

the Guardian【海外報道】

DOI:10.1038/srep05793 | 英語の原文

野生ニホンザルにおける

福島第一核惨事後の
血球細胞計数値の低下

Scientific Reports 4,Article number:5793 | doi:10.1038/srep05793

Received 06 February 2014 | Accepted 24 June 2014 | Published 24 July 2014

われわれは20124月、福島市の森林地に生息する野生のニホンザルに対する1年間の血液学的研究を実施した。この地域は、2011年東日本大震災のあと、大量の放射性物質を環境中に放出した福島第一原子力発電所(以後、原発と表記)から70 kmの距離に位置している。比較のために、原発から約400 kmの距離にある青森県の下北半島に生息しているサルも検査した。福島のサルの場合、総筋肉セシウム濃度は781778ベクレル/㎏の範囲内にあったが、それに対して、下北のサルの場合、セシウム濃度レベル値はすべて検出限界を下回っていた。福島のサルは下北のサルに比べ、赤血球および白血球細胞の計測数値、ヘモグロビン値およびヘマトクリット(赤血球容積率)が有意に低く、幼体サル白血球細胞の計測数値は筋肉セシウム濃度と逆相関関係にあった。これらの結果、なんらかの形態の放射性物質による被曝のために、福島のサルに血液学的な変異が起こったと考えられる。

2011311日、巨大地震が東日本を襲ったあと、福島第一原子力発電所で炉心メルトダウン事故が発生した。原発事故のあと、福島市における土壌の放射性セシウム濃度は10,000300,000 Bq/m2の範囲内におよび1、積算線量計で計測した20114月以降2年間の積算空中放射線量は7.5 mSvになった2

1986年のチェルノブイリ事故など、原発事故は何回か起こっているが、野生霊長類動物の健康に対する放射性物質の作用に関する研究はこれまで実施されたことはなかった。そこでわれわれは、福島県の東部、原発から70 kmに位置する福島市(図1)に生息する野生のニホンザル(Macaca fuscata)個体群の健康作用と長期放射性物質被曝の関連を調べた。ニホンザルは日本の固有種であり、その寿命は20年を超える3。福島市のニホンザル個体群において、5歳以上の成体雌は晩秋に妊娠し、春に出産する4

1.今回の調査実施地、福島と下北の位置図

本地図は日本地理院提供の自由使用が許される白地図を加工したもの。
葉山たち520114月から20126月にかけて、福島市に生息するサルの筋肉中セシウム濃度の経時変化を調べた。ニホンザルは通常、50100個体の母系集団を形成し、それぞれの集団は降雪地に約831 km2の行動域を保持する6。土壌汚染レベルが100,000300,000 Bq/m2の範囲内である地域で捕獲されたサルの平均筋肉中放射性セシウム濃度は、それが10,000100,000 Bq/m2 の範囲内である地域で捕獲されたサルのそれよりも有意に高かった(P < 0.0015

チェルノブイリ事故による健康への影響について調べた研究は大量にある7, 8。とりわけ汚染地域に居住する人びとの血球細胞計測数の減少などの血液学的な変異は、低線量放射線被曝による長期的な影響として報告されている8。福島の場合、放射線量がシジミチョウ科蝶の形態異常発現と相関し9、また鳥類、蝶類、蝉類の生息数減少と相関していると報告されている10, 11

よって、本研究では上記のような放射線被曝にまつわる血液学的な記録を用いて、放射線被曝による健康への作用を解明するために、福島市(以後、「福島」と略記)に生息するニホンザルに対する血液学的な調査を実施した(図1)。対照区として、当該原発から約400キロに位置する青森県下北半島(以後、「下北」と略記)に生息するニホンザルを検査した(図1)。ヒト以外の霊長類――分類学上、ヒトの最近縁種――から得られるデータは、ヒトにおける放射線被曝による健康への作用に関する将来の研究に顕著な貢献をするはずである。

結果

1に、血液学データ値、放射性セシウム濃度、脂肪指数を示す。福島のサルの場合、総筋肉セシウム濃度は781778ベクレル/㎏の範囲内にあったが、それに対して、下北のサルの場合、セシウム濃度レベル値はすべて検出限界を下回っていた。両地域の血液検査値を比較すれば、白血球計数値(WBC)、赤血球計数値(RBC)、ヘモグロビン値(Hb)、赤血球容積率(Ht)において有意な違いが示されていた(両地域における作用に関する双方向分散分析、p0.01、表2)。しかしながら、年齢層または地域ごとの年齢層による、これらのデータ値に対する有意の差異効果は見いだせなかった(表2)。福島および下北それぞれの個体群で有意の差異を示す4種の血液検査値(WBCRBCHbHt)をさらに分析するために、チューキー=クレイマー法を用いて、下北のサルと福島のサル2集団それぞれのデータに対する複数の比較検討を実施した。その結果、すべての福島のサルにおける血液検査値が下北のサルの場合よりも有意に低く(p0.0001)、福島のサルの2集団のあいだには有意の差異は認められなかった。血小板計数値、白血球計数値、脂肪指数には、有意の差異は認められなかった。

1.福島および下北で捕獲されたニホンザルの血液検査値

【 PDFリンク 】

2.地域および年齢を要因とする双方向分散分析による地域および年齢に相関した血液検査値および脂肪指数の偏差


平均平方

F

d.f.

p

白血球計数値





地域

32624.89

14.94

2, 70

<0.01

年齢

1083.38

0.50

1, 70

0.48

地域×年齢

1714.51

0.79

2, 70

0.46

赤血球計数値





地域

47339.27

6.93

2, 70

<0.01

年齢

258.46

0.04

1, 70

0.85

地域×年齢

13876.56

2.03

2, 70

0.14

ヘモグロビン値





地域

76.98

18.13

2, 69

<0.01

年齢

0.78

0.18

1, 69

0.67

地域×年齢

6.37

1.50

2, 69

0.23

赤血球容積率





地域

0.17

6.72

2, 86

<0.01

年齢

0.01

0.47

1, 86

0.50

地域×年齢

0.02

0.72

2, 86

0.49

血小板





地域

860.60

2.65

2, 53

0.08

年齢

138.10

0.43

1, 53

0.52

地域×年齢

1020.18

3.14

2, 53

0.05

リンパ球





地域

0.00

0.23

2, 86

0.80

年齢

0.01

1.13

1, 86

0.29

地域×年齢

0.00

0.21

2, 86

0.81

顆粒球





地域

0.00

1.20

2, 86

0.31

年齢

0.00

0.11

1, 86

0.74

地域×年齢

0.00

1.70

2, 86

0.19

単核白血球





地域

0.00

2.51

2, 86

0.09

年齢

0.00

0.00

1, 86

0.95

地域×年齢

0.00

0.00

2, 86

1.00

脂肪指数





地域

101.68

1.94

2, 86

0.15

年齢

77.52

1.48

1, 86

0.23

地域×年齢

104.28

1.99

2, 86

0.14


福島のサル個体における4種の血液検査値(WBCRBCHbHt)と筋肉中セシウム濃度の関係が評価されたさい、幼体群において、赤血球計数値における有意の逆比例関係が認められた(ピアソン相関係数:r = −0.52, p = 0.011、表3、図2)が、成体群の場合、相関性は認められなかった(r = 0.029, p = 0.887)。他には、筋肉中セシウム濃度との有意の相関関係を示す血液検査値はなかった。4種の血液検査項目はやはり相互に相関していた。

3.福島のサルにおける筋肉中セシウム濃度と血液検査値の相関関係


RBC

Hb

Ht

Cs


n

r

p

n

r

p

n

r

p

n

r

p

幼体













WBC

22

0.430

0.045

21

0.501

0.021

22

0.526

0.012

23

−0.520

0.011

RBC




22

0.967

<0.001

23

0.964

<0.001

23

0.011

0.959

Hb







23

0.982

<0.001

22

0.037

0.870

Ht










23

0.015

0.947

成体













WBC

23

0.430

0.041

23

0.415

0.049

23

0.430

0.041

26

0.029

0.887

RBC




23

0.980

<0.001

23

0.971

<0.001

23

−0.342

0.110

Hb







23

0.985

<0.001

23

−0.363

0.089

Ht










23

−0.400

0.058


ピアソン相関係数はそれぞれの年齢群ごとに筋肉中セシウム濃度と血液検査値の相関関係をしめすために計算された。

WBC:白血球計数値 RBC:赤血球計数値 Hb:ヘモグロビン値 Ht:赤血球容積率
Cs
:筋肉中セシウム濃度 pp

2.福島で捕獲されたニホンザル幼体における白血球計数値と筋肉中セシウム濃度 


考察

本研究において、福島のサルの場合、WBCRBCHbHtが下北のサルの場合よりも低かった。血液試料採取の方法と場所が血液特性に影響すると報告されている12ので、本研究をこれまでの諸研究と直接比較するのは問題かもしれないが、本研究における下北のサルの血球細胞計数値はこれまでも報告されているもの1314と相似している。ニギ他14は、ヤクシマザル(Macaca fuscata yaku)亜種を除き、ニホンザル個体群の血球細胞計数値に個体ごとの差異が大きいが、地域個体群間の差はないと報告した。野生のニホンザルの血球細胞計数値を観測した、これまでの研究は件数こそ少ないものの、個体群間の血液検査値に違いがあるとする証拠を示していない。福島のサルの血球計数値が低い原因が感染症や栄養不良であるとすることも可能である。しかしながら、われわれの研究グループは2008年からこのかた、福島で捕獲された1000頭以上のサルを検査し、検死してきたのであるが、血球細胞計数値を低下させるような地域固有の感染症を観測していない。さらにまた、福島と下北のサルのあいだに脂肪指数の有意な差異がなく(表12)、これは血球細胞計数値が低い原因は栄養不良でないことを示唆している。

下北のサルの筋肉中にセシウムが検出されなかったので、福島のサルにおける低い血液検査値は、他の放射性物質による影響のためであるとも考えうる。ステパノワ他は1986年のチェルノブイリ事故のあと、1998年から1993年にかけてウクライナの子どもたちに対する血液学的研究を実施した15。ステパノワらは、血球計数値、ヘモグロビン値、血小板計数値の低下を観測し、子ども各人における数値低下の程度が居住地域における放射性セシウムのレベルに相関していることを明らかにした。これは本研究で観測されたことと同様である。福島と下北の個体群のあいだで血球細胞計数値が有意に異なっていたが、福島の土壌汚染レベルの異なる地域で捕獲されたサルの2個体群間の有意な差は認められなかった。ウクライナで実施された上記の研究もまた、土壌汚染レベルの異なる2地域の境界の近くでは、白血球計測値に有意な違いがないことを示している15。土壌汚染レベルの高い地域に生息するサルを調査するために、さらなる研究が必要である。さらにまた、福島のサルにおける筋肉中放射性セシウム濃度には、季節変動があることがわかっており、冬期に23倍の上昇をする5。このことから、本研究で示されているように、同じ地域で捕獲されたサルのあいだで筋肉中セシウム濃度が大きく変動することがわかる(表1)。サルの体内におけるセシウムの生物学的半減期は約21日である5。たとえ放射線障害が本論文で観測する低い血球細胞計数値の原因であるとしても、放射性物質の摂取と放射線障害の発現には時間差があるために、因果関係を証明することは困難である。放射線被曝量がかなり同等である地域間で比較する場合、この困難さはさらに増幅する。

これら複雑な要因が絡むにもかかわらず、福島のサル幼体において白血球計数値と筋肉中放射性セシウム濃度のあいだには有意の逆相関関係が認められた(表3)。それに加えて、福島のサルの場合、下北のサルよりも低いWBCRBCHbHtそれぞれの数値が相互に有意の正相関関係にあって、もっと多くの試料がありさえすれば、これら4種の血液検査値と筋肉中放射性セシウム濃度のあいだに正比例関係があることを事実として証明することが可能になるはずである。福島のサル幼体において、白血球計数値は筋肉のなかのセシウム濃度に関して逆相関していたが、福島のサル成体の場合、血液検査値と筋肉中セシウム濃度のあいだの相関関係は認められなかった。サル幼体は放射性物質による影響を受けやすいので、白血球計測値が低下したとしてもおかしくない。モイジッチ他16はチェルノブイリ災害に被災したヨーロッパ人の白血病発症リスクを調べるための疫学研究を実施し、幼い子どものほうが成人よりも明白に発症リスクが高いことを明らかにしたのであり、これは放射線被曝の血液学的な影響が年齢によって異なることを示唆している。

福島のサルの血液検査値変化は、なんらかの形の放射性物質による被曝の結果であるかもしれないが、本研究では放射性セシウム濃度だけしか測定されていない。福島のサルと下北のサルで白血球計測値に違いがないので、これらの血液検査値の変化は、骨髄の造血機能の低下に原因があるのかもしれない。それ故、われわれは将来の研究において、ストロンチウム90など、他の放射性物質を検出する目的で、隠れたメカニズムを詳細に追究する計画を立てている。現時点において、入域が規制されている高度の汚染された地域に生息するニホンザルを調査することは困難である。しかしながら、われわれは適正な許可を得られしだい、血液検査およびその他の測定を実施する意向である。

血球細胞計数値が低いことは、サル個体の健康が危うくなっていることを必ずしも意味しない。しかしながら、これがある程度の免疫系損傷を示唆しているのかもしれず、そうであれば、動物の個体や群全体が潜在的に、たとえば、流行性感染症に影響されやすくなる。したがって、福島のニホンザル個体群に対する免疫およびその他の健康に関連する長期研究を実施する必要がある。

手法

動物と倫理

ニホンザルの血液および筋肉試料は、20124月から20133月のあいだに92頭(福島で61頭、下北で31頭)から採取された。各個体は農用地に近い森林地帯で箱罠を用いて捕獲された。本研究の実験に用いたサルの捕獲は、「鳥獣保護及び狩猟管理法」にもとづいて策定された「ニホンザル保護管理計画」に則り、福島・青森両県知事による許可を得てから実施した。サルの捕獲および屠殺の方法は、京都大学霊長類研究所が発行したガイドライン17に従っている。さらにまた、同地域に生息するニホンザルは環境省の日本版レッド・データ・ブック2012年版18に記載される絶滅危惧種に登録されていない。

土壌汚染レベルが100,000300,000 Bq/m2である地域で捕獲されたサルの平均筋肉中放射性セシウム濃度は、10,000100,000 Bq/m2の地域で捕獲されたサルのそれより有意に高かった(p0,0015。それ故、われわれは試料採取地の土壌汚染レベルを100,000300,000 Bq/m2および10,000100,000 Bq/m22範疇に区分し、それにもとづいて、福島のサルを2集団に分けた。そのうえで、福島のサルの2集団および下北のサルの血液検査値を比較した。

本論文で研究対象にしたサルのうち、20144月から6月のあいだに捕獲した個体は、以前に発表した研究5の対象にしたものと同じ個体である。この前回の論文の目的は、サルの筋肉中に徐々に蓄積したセシウムの濃度と土壌汚染レベルのあいだの相関関係を確立することにあった。しかしながら、今回の研究の狙いは、サルの筋肉中のセシウム濃度を放射能被曝の指標として、血液検査値と放射能被曝のあいだの相関関係の有無を判定することにあり、前回の研究の意図とは明確に違っている。さらにまた、野生動物の場合、長期にわたる放射能被曝量を確定するのは困難である。蓄積放射線被曝量とその健康に対する作用に関する前回出版の研究の場合、捕獲地点の土壌汚染レベルと捕獲時点における体内放射能蓄積量とが放射能被曝の指標に用いられた。今回の研究では逆に、筋肉中に蓄積したセシウムの量が指標に用いられた。

血液試料および筋肉資料

血液試料は、10 ml注射器および18ゲージ注射針を用いて、屠殺直後に心臓から採取した。血液は、ガラス瓶中のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)二カリウム塩二水化物と混合した。血液試料採取および資料搬送の方法は、どのサルの場合でも、どの採取地域の場合でも同じであった。屠殺体と血液試料は冷蔵状態でわれわれの研究室に搬送され、血液採取後2日以内に解剖および血液検査が実施された。血液検査項目は、白血球計数値(WBC)、赤血球計数値(RBC)、ヘモグロビン値(Hb)、赤血球容積率(Ht)、血小板計数値、白血球特異形(リンパ球、単球、顆粒球)計数値であった。血液検査結果はシスメックス株式会社(神戸市)血球計XT2000型を用いて得た。エチレンジアミン4酢酸(EDTA)血液塗抹試料はギームサ染料で仕上げ、顕微鏡を用いた手仕事で精査された。サル各個体の体重はグラム単位で計測された。検死に際して、放射性セシウム成分の測定のために、後肢から5001,000グラムの筋肉組織が採取された。放射性セシウムの測定には500グラムまたはそれ以上の臓器を要するので、骨格筋が試料に選ばれた。採取された筋肉組織は、放射能測定に用いるまで-30℃以下で冷凍保管された。

年齢判定と脂肪指数

解剖のさい、イワモト他19が記述した方法で歯牙萌出の状態が調べられ、各個体の年齢推測に用いられた。推定年齢は、動物を幼体(04歳)集団と成体(>5歳)集団に区分けするのに用いられた。さらにまた、われわれはサルの栄養状態を判定するために脂肪指数を計算した。前回の研究20では、ニホンザルの場合、体重に対する腸間膜脂肪重の比率は、体脂肪の比率に正比例していた。脂肪指数は、腸間膜脂肪重(グラム)を体重で割り算し、それを1000倍にした計算の解と定義された。

放射能測定

筋肉の放射性セシウムの放射能は、ゲルマニウム半導体分光計(キャンベラ社GC2020-7500SL-2002CSL、米国コネチカット州メリデン)およびNalT1)シンチレーション検出器(アトムテック社AT1320A、ベラルーシ国ミンスク)を使用して分析された。データは、測定環境の背景放射線量にもとづき必要に応じて校正された。セシウム134は、604.70 keVおよび795.85 keVガンマ線エネルギーを用いて検出され、セシウム137は、661.6 keVガンマ線エネルギーを用いて検出された。放射性セシウムの放射能は、その物理的半減期にもとづき、捕獲時点の日にちに応じて補正された。検出限界値は10ベクレル/㎏であった。筋肉中セシウム濃度は、セシウム134、セシウム137の生体筋肉重1 kgあたり合算値として計算された。

統計処理

データはSPSS10.0ウィンドウズ版(SPSS社、米国イリノイ州シカゴ)を用いて分析した。地域および年齢区分を因子として、血液検査値および脂肪指数を比較するために双方向分散分析法を用いた。集団間の血液検査値の複合比較を実施するためにチューキー=クレイマー法を用いた。
The Tukey–Kramer method was used to perform multiple comparisons of hematological values between groups. Pearson's correlation coefficient was used to examine correlations between muscle cesium concentration and hematological values.

参照文献

  1. Japanese Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT) website. Available: Results of the Third Airborne Monitoring Survey by MEXThttp://www.mext.go.jp/component/english/__icsFiles/afieldfile/2011/07/22/1304797_0708e.pdfAccessed 28 January, 2014.

  2. Nuclear Regulation Authority. Readings of Accumulated Dose at Reading Points out of 20 km Zone of TEPCO Fukushima Dai-ichi NPP (Monitoring Date: Apr 1, 2013)http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/8000/7310/24/196_0403.pdf Accessed 28 January, 2014.

  3. Koyama, N., Takahata, Y., Huffman, M. A., Norikoshi, K. & Suzuki, H. Reproductive parameters of female Japanese macaques: Thirty years data from the Arashiyama troops, Japan. Primates 33, 33–47 (1992).

  4. Hayama, S., Nakiri, S. & Konno, F. Pregnancy rate and conception date in a wild population of Japanese monkeys. J. Vet. Med. Sci. 73, 809–812 (2011)

  5. Hayama, S. et al. Concentration of radiocesium in the wild Japanese monkey (Macaca fuscata) 15 months after the Fukushima Daiichi nuclear disaster. PLOS One 8, e68530(2013)

  6. Enari, H. & Sakamaki-Enari, H. Resource use of Japanese macaques in heavy snowfall snowfall areas: implications for habitat management. Primates 54, 259–269 (2013).

  7. Geras'kin, S. A., Fesenko, S. V. & Alexakhin, R. M. Effects of non-human species irradiation after the Chernobyl NPP accident. Environment International 34, 880–897 (2008).

  8. Yablokov, A. V., Nesterenko, A. B. & Nesterenco, V. B. Consequences of the Chernobyl catastrophe for public health. Ann. NY. Acad. Sci. 1181, 31–220 (2009).

  9. Hiyama, A. et al. The biological impacts of the Fukushima nuclear accident on the pale grass blue butterfly. Sci. Rep. 2, 570 (2012).

  10. Møller, A. P. et al. Abundance of birds in Fukushima as judged from Chernobyl. Envir. Poll.64, 36–39 (2012).

  11. Møller, A. P., Nishiumi, I., Suzuki, H., Ueda, K. & Mousseau, T. A. Differences in effects of radiation on abundance of animals in Fukushima and Chernobyl. Ecol. Indic. 24, 75–81(2013).

  12. Hoff, J. Methods of Blood Collection in the Mouse. Lab. Animal. 29, 47–53 (2000).

  13. Inoue, M., Itakura, C., Takemura, N. & Hayama, S. Peripheral blood of wild Japanese monkeys (Macaca fuscata fuscata and M. f. yakui). Primates 5, 75–112 (1964).

  14. Nigi, H., Tanaka, T. & Noguchi, Y. Hematological analyses of the Japanese monkey (Macaca fuscata). Primates 8, 107–120 (1967).

  15. Stepanova, E. et al. Exposure from the Chernobyl accident had adverse effects on erythrocytes, leukocytes, and, platelets in children in the Narodichesky region, Ukraine: A 6-year follow-up study. Environmental Health 7, 21 (2008).

  16. Moysich, K. B., Menezes, R. V. & Michalek, A. M. Chernobyl-related ionizing radiation exposure and cancer risk: an epidemiological review. Lancet Oncology 3, 269–279 (2002).

  17. Primate Research Institute, Kyoto University. Guideline for field research for non-human primates.
    http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/research/guide-e2008.html Accessed 28 January, 2014.

  18. Japanese Ministry of the Environment. 2012 Japanese Red List.
    http://www.env.go.jp/en/nature/biodiv/reddata.html Accessed 28 January, 2014.

  19. Iwamoto, M., Watanabe, T. & Hamada, Y. Eruption of permanent teeth in Japanese monkeys (Macaca fuscata). Primate Res 3, 18–28 (1987) (in Japanese with English summary).

  20. Hayama, S., Mizutani, N., Morimitsu, Y., Shirai, K. & Nigi, H. Indices of body fat deposition in wild Japanese monkeys. Primate Res 14, 1–6 (1998) (in Japanese with English summary).

謝辞

本研究は、福島市、Mr. Hideharu YamazakiDr. Noriaki Shibataにご協力を賜り、可能になった。著者らは、本研究に関わったすべての皆さまに心からの感謝を表明する。また、日本獣医生命科学大学職員の皆さまには本研究に不可欠な助力を賜り、深甚な感謝を申しあげる。今回の研究は、京都大学霊長類研究所の共同研究プログラムおよび日本私立学校振興・共済事業団の学術研究振興資金による交付金援助をいただいている。

著者情報

所属および氏名

1.      日本獣医生命科学大学、東京
Kazuhiko Ochiai, Shin-ichi Hayama, Sachie Nakiri, Naomi Ishii, Taiki Uno, Takuya Kato, Shuichi Tsuchida & Toshinori Omi

2.      NPO法人どうぶつたちの病院、東京
Setsuko Nakanishi

3.      JA新ふくしま、福島
Humiharu Konno

4.      京都大学霊長類研究所、愛知
Yoshi Kawamoto

分担

試料採取:Sa.N., Se.N., N.I., T.U. and F.K.
研究方針策定:Y.K., S.T. and T.O.
データ分析:K.O. and T.K.
論文執筆:S.H.

利益相反開示

著者らは利益相反不存在を言明する。

連絡先

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【関連記事】

【海外報道】


【論文要約】南相馬市の新田川河口でプルトニウム採取

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フクシマのプルトニウムはチェルノブイリより遠くに飛んでいた
プルトニウムで最大に汚染されている試料が福島第一原発から最も遠い採取地で見つかって「仰天」し、陸から太平洋への流入を懸念している。

201484日 ENENews 

『環境科学・技術』(アメリカ化学協会)2014711
Environmental Science & Technology (American Chemical Society)
【論文要約】沿海域河川に拡散したプルトニウム同位体の痕跡に見る福島原発事故に関する新規な知見

福島沿海域の河川から太平洋に流れこむ恐れのある堆積物中のプルトニウムを調査する
  • Ÿわれわれの研究結果は、飯舘村および南相馬市の20キロ圏立入禁止地帯の外側で採取した路傍塵芥試料に見つかったプルトニウム同位体組成と似通った組成が、乾燥させていない川床の堆積物のなかでも検出しうることを明らかにした。このことは、福島第1原発に由来するプルトニウムが破損した原発から比較的遠くまで運ばれ、すでに沿海域の河川に到達して、それ故、海中に流れこむプルトニウムの起源になりうることを証明している。
  • 試料FNL034Bはプルトニウムおよび放射性セシウムの両方で最大に汚染されてもいるが、その原子組成比率はかなり驚くべきものである。この試料は新田川の河口域で採取されたが、そこは放射性プルーム主要部が流れた地域を外れており…プルトニウム同位元素組成比率の様相とこの地域一帯における分布をさらによく把握するためにさらなる分析を実施するべきである。

  • フクシマのプルトニウム飛散距離がチェルノブイリのそれより長いことは、主要な事故条件の違いで説明できるかもしれない。チェルノブイリの場合、黒鉛火災であったのでプルトニウム含有粒子が大きく、それ故、原発から短距離の地点に沈着したことの説明がつきそうである。

  • 分析を実施した材料に含まれる福島第1原発由来のプルトニウムの割合は、試料FNS140およびFOL250の場合、1%以下であり、試料FNL034Bでは60%以下であった。試料FNL034Bの採取地は福島第1原発から最も遠かった(~45キロ)ので、このこともまた驚くに値する。
  • 今後の研究は、地域一帯におけるプルトニウムの空間分布、福島第1原発における20113月に起こった事象(暴走、放射性核種の放出など)の経過およびプルトニウムの環境中拡散に対するその影響をよりよく究明するために、立ち入り禁止区域の北西方向に位置する地域の土壌試料を大量に採取して、プルトニウム同位体および元素比率値を分析することに集中すべきである。さらにまた、本研究が河川によるプルトニウムの海中流出の可能性を示したことから、この地域に流れる沿海域河川で採取する大量の河川堆積物試料に対して同様な分析を実施すべきである。われわれの研究結果は、フクシマ事故由来のプルトニウムのなかでプルトニウム239に対してプルトニウム241の原子比率が高いことを示しており、とりわけこのことが、福島県から太平洋に流れこむ陸地起源物質の適切な追跡子になりうるかもしれない。


ヒロシマのバーチェット~世界を震撼させた無検閲の原爆報道、または、いかにして「原子の疫病」が暴露され、いかにしてペンタゴンは隠蔽を図ったか

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ヒロシマのバーチェット
BURCHETT IN HIROSHIMA
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朝鮮戦争取材中のバーチェット(画像出処: Japan Focus

オーストラリア人ジャーナリスト、ウィルフレッド・グラハム・バーチェット(Wilfred Graham Burchett)は、ヒロシマ入りを果たした最初の連合軍記者であり、無検閲の記事を日本国外に持ちだした唯一の人物である。彼は東京から400マイルの列車の旅のあと、194592日夜、ヒロシマに到着した。朝になって、彼はパトカーで逓信病院に案内され、そこで瓦礫の山に腰掛け、持参のベイビーエルメス(携帯タイプライター)で原稿を叩きだした。その記事は95日付けロンドン・デイリー・ニュース紙に次のような不吉なヘッドラインを付して掲載された。

ヒロシマの30日目:脱出者らは死に始める
原子の疫病の犠牲者たち

記者は当記事を世界への警告として書いている

医者らは勤務中に倒れる
毒ガスの恐怖:全員マスク着用


最初の原子爆弾が市街を破壊し、世界を震撼させてから30日後のヒロシマで、大異変で負傷しなかった人びとが原子の疫病としか表現できない――謎めき、恐ろしい――未知の何かのために今でも死んでいる。ヒロシマは爆撃された都市のようには見えない。まるで怪物スチームローラーが乗り上げて、跡形もなく押し潰してしまったかのようだ。記者は事実が世界への警告として役立つように願い、できるだけ感情を抑えて、事実を書いている。

記者はこの最初の原子爆弾実験場で、戦中の4年間で最も恐ろしく驚くべき廃墟を見た。これでは、猛攻を受けた太平洋の島がエデンの園に見える。被害は写真で見るよりはるかに甚大である。ヒロシマに到着すると、25平方マイルか、おそらく30平方マイルは周囲を見渡すことができ、建物はほとんど見当たらない。そのような人為の破壊を目にすれば、胃の腑に空虚な感覚を味わうことになる。記者は消失した市街の中心部にある、一時的な警察本部に使われている小屋への道をたどった。そこから南を見ると、3マイルほどかなたまで赤色がかった瓦礫を見ることができた。すべて、原子爆弾が残した多数の街路の敷石の、ビルの、家屋の、工場の、そして人間の残骸である。立っているものはなにもなく、20本ほどの煙突――工場を失った煙突――ばかり。そして、内部が全焼した数棟のビル。その他、やはりなにもない。

ヒロシマの警察署長は、記者を市に辿り着いた最初の連合軍報道人として張り切って歓迎してくれた。署長は、日本最大手の通信社、同盟通信の支局長とともに記者を車に乗せて、市街を通り抜けたが、いやむしろその上を走らせたというべきだろう。署長は被爆者らがいまだに治療を受けている病院に記者を連れていった。病院内で記者は、爆弾が落ちたとき、まったく負傷もしなかった人びとが、いまや説明のつかない後遺症状で死んでいるのを知った。明らかな理由もなく、被爆者らは健康を損ないはじめていた。食欲をなくしていた。脱毛していた。体表に青あざが現れた。すると、耳、鼻、口から出血がはじまった。医師らによれば、最初、全身衰弱症候であると考えていたそうだ。医師らは患者にビタミンA注射を施していた。結果は凄まじかった。注射針を刺した穴から肉が腐りはじめた。すべての症例で、被爆者は死亡した。これが人類最初の原子爆弾投下による後発効果のひとつであり、記者としては、このような症例を二度と見たくもない。

記者の鼻は、以前に嗅いだいかなるものとも違った独特の匂いを嗅ぎとった。硫黄に似たなにかだが、まったく同じではなかった。まだくすぶっている火のそばを通るとき、あるいは残骸から遺体を回収している現場を通るとき、それを嗅ぎとれた。だが、その匂いは、いまだにすべてが見捨てられている場所なら、どこでも嗅ぎとれたのである。ウラニウム原子の核分裂による放射能が浸透した土砂が発散する毒性ガスがかもしているのだと人びとは信じていた。だから、ヒロシマの人びとは、かつて自慢にしていた市街の惨憺たる廃墟のなかを鼻と口をガーゼのマスクで覆って歩いている。たぶん身体的には役立たないだろう。だが、気休めには役立つ。

この荒廃がヒロシマを見舞った瞬間から、生き残った人びとは白人を憎んできた。それはほとんど爆弾そのもの同様に驚異的な憎しみだった。確認死者数、53,000人。他に30,000人が行方不明であり、これは確実に死んでいることを意味する。記者がヒロシマに滞在した当日、100人がその影響で死亡した。その人たちは爆発による重傷者13,000人の一部だった。悲劇的な過ちがなければ、これら死傷者はそれほど多数になっていなかったかもしれない。軍当局はこれを単なるスーパーフォート攻撃(B29爆撃隊空襲)のひとつと考えていた。航空機が標的の上空を飛び、爆弾を爆発点に運ぶパラシュートを投下した。米軍機は視界から飛び去った。警報解除サイレンが鳴りひびき、ヒロシマの人びとは防空壕から出てきた。ほぼ1分後、爆弾は爆発時限を同期されていた高度2,000フィートに達し、その瞬間には、ヒロシマのほとんど全員が街路に出ていた。

幾千、幾万人の死者たちは、爆弾が発した強烈な熱線にひどく焼かれ、老若男女の見分けがつかないほどだった。他の何千人かは爆心近くにいて、跡形もなかった。ヒロシマで聞いた説では、原子の熱があまりにも強大なため、その人たちは瞬時に焼かれて灰になったということだ――もっとも、灰も残らなかったが。読者諸賢がヒロシマの残骸をご覧になれるなら、ロンドンに爆弾は触れもしなかったとお考えになられるだろう。かつて威容を誇っていたビル、インペリアル・パレスは3フィート高さの瓦礫の山になっており、壁の一面が残るのみである。屋根、床、すべてが塵芥である。

******


画像出処:Exciteブログ「原爆はどのように報道されたのか
(グローブス将軍について下記関連記事を参照のこと)
97日の朝、バーチェットは東京で列車から降り立ち、米当局高官らが世界中に電送されていた報道を抑制する目論見で記者会見を招集していたことを知った。マンハッタン計画の副官、トーマス・ファーレル准将は、「残存放射能」リスクを回避するために、爆弾をヒロシマの上空で充分な高度をとって爆発させたと説明した。わたしの広報官に対する最初の質問。あなたはヒロシマに行かれましたか? 彼はノーと応えたが、説明をつづけた。わたしが病院で見かけた人びとは爆発と熱傷の犠牲者であり、大爆発のあとでは通常のものだった。日本人医師たちは明らかに患者に対処する能力に欠けており、あるいは適正な医薬品が不足していたのです。広報官は、爆発時点で市内にいなかった人びとが、後に影響を受けたという疑惑を軽んじていた。爆発から1か月たった今でも魚が死んでいるのはなぜですか、とわたしは質問した。広報官は苦しんでいるように見えた。残念ながら、あなたは日本側プロパガンダにひっかかりましたね。ヒロシマ入域規制は即座に延長された。わたしは米陸軍病院に連行され、わたしの微小体計数値の低下が膝の感染で投与された抗生物質によって引き起こされたものであると医者らに告げられた。
******


Wilfred Burchett 1911-1983
彼は何年もたってから、この状態が放射能疾患に関連していることに気づいた。彼は自著の出版からほどなくした1983年、癌で死亡した。

このようにして、放射能を闇に閉ざす半世紀がはじまった。バーチェットの直接体験による報告は、全米いたるところで検閲対象になった。放射能およびフッ化物研究(フッ化物は核兵器開発における主成分資材)を含め、あらゆる核兵器研究は「天性の秘密」であって、RD(規制データ)とラベル付けされ、その多くは冷戦終結後も長期にわたり3棟の書庫を満杯にする秘密ファイルのなかに埋葬されている。

******

本稿は、ウィルフレッド・バーチェット著“Shadows of Hiroshima1983年刊)からの抄録である。

  

As reported by Lynn Howard Ehrle, freelance medical writer
Senior Biomedical Policy Analyst (pro bono) Organic Consumers Association
ehrlebird@organicconsumers.org

【関連記事】

【参考文献】
阿修羅サイト…

「長崎原爆ルポ:ジョージ・ウェラー記者原稿全文」
その1. http://www.asyura2.com/0505/war71/msg/372.html
その2. http://www.asyura2.com/0505/war71/msg/371.html
その3. http://www.asyura2.com/0505/war71/msg/370.html

毎日新聞・國枝すみれ記者「長崎原爆:米記者のルポ原稿、60年ぶり発見 検閲で没収」  http://www.asyura2.com/0505/war71/msg/369.html


中國新聞「ヒロシマ平和メディア・センター」

■編集委員 西本 雅実

被爆直後の広島の惨状をルポし、いち早く世界に報じたのは、ハワイ生まれの日系二世のジャーナリスト、レスリー・ナカシマ(日本名、中島覚)さんだった。残っていた記録や関係者の証言から、1945年8月27日に米国の通信社UP(現UPI)を通じて打電していたことが分かった。記事は、同月31日付のニューヨーク・タイムズなどに掲載されていた。海外への広島ルポ第一報は、英国紙の特派員ウィルフレッド・バーチェット氏と長い間信じられていたが、彼の打電より8日早かった。  
記事は、「人口30万人だった街には、完全な形の建物は1つとしてない」と原爆投下16日後の8月22日に入り、歩いた廃虚の様子や市民の被害を詳しく伝えている。なかでも「原爆の紫外線で今も毎日、死者が出ている」と、米軍の原爆調査団が9月に東京で記者会見して否定する放射線障害の深刻な影響をいち早く指摘していた。建物疎開作業に動員された「何千という中学生の男女も犠牲となり、行方不明者の数は驚くほどだ」と、原爆により非戦闘員が多数犠牲になったことも触れている。(…以下、略)

47 NEWS

【ロンドン共同=半沢隆実】英国の核開発を主導し「原爆の父」と呼ばれ、米国の原爆開発にも関与したウィリアム・ペニー博士(1991年死去)が日本への原爆投下から約4カ月後、「米国は放射線被害を(政治的な目的で)過小評価している」と強く批判していたことが10日までに、英公文書館に保管されていた文書で分かった。博士は独自に「殺傷要因」を特定するため、英科学者を米国の核実験に派遣する必要性を訴えていた。(…以下、略)

1966105日、ロンドンで記者会見する
ウィリアム・ペニー博士(PA=共同)

ABCテレビ(オーストラリア)福島県内の放射性核種の移動

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The Movement of Radionuclides through Fukushima – ABC TV Australia

 “Catalyst” 科学シリーズ
STORY ARCHIVE

201487

放射性降下物のダイナミックな移動
RADIATION FALLOUT
http://www.abc.net.au/catalyst/stories/4059031.htm

(本稿は、公益教育目的のために上記番組のトランスクリプトを日本語訳したものです。ビデオは埋め込み不能なので、上記リンク先でご視聴ください。訳者)

番組キャスター、マーク・ホーストマンが福島県内を旅し、福島第1原子力発電所が事故を起こした3年以上も前からの放射性降下物の動きを検証する。

マーク・ホーストマンのシリーズ番組:

Catalystフクシマ旅行の途上、車に搭載したり野外に持ち込んだりしたセーフキャスト放射線計測器「bガイギー」で測定した放射線分布図。各地点のデータを見るには下記リンクをクリックすること。リンク先の地図上で、各地点にポインターを合わせると、地図の左側に放射線量レベルがCPM1分間あたり電離計数値)とµSv/h1時間あたりマイクロシーベルト)で表示される。緑から茶、さらに赤から黒へと色調が移るごとに放射線量レベルが高くなる。最高の記録値は、福島第1原発周辺の立ち入り禁止区域の外れにあったホット・スポットの7 µSv/hだった。
https://api.safecast.org/en-US/bgeigie_imports/15354

番組トランスクリプト

0:08

ナレーション
北国、福島県はかねてより美しい風光で知られています。活気あふれる市街を冠雪の山並みが包みこんでいます。勢いよく流れる川が実り多い農業を育みます。
ところが、2011年の地震と津波のあと、福島県は放射性降下物ですっかり知られるようになってしまいました。福島第一原子力発電所の爆発とメルトダウンのため、危険な量の放射性排出物が放出されました。フォールアウトは各種のアイソトープの混ぜ物であり、ヨウ素など、一部は数日で減衰しますが、セシウム137の場合、そういうわけにはいきません。セシウムが半減するまで30年もかかります。


0:58

マーク・ホーストマン
福島県の山並みを見ると、絵のように完璧ですが、核分裂炉惨事による放射性プルームの80%が海に吹き流された一方、その20%は日本の陸上の河川と森林に沈着したことを覚えておいて、損にはなりません。


1:17

ナレーション
では、その後、陸上汚染はどうなったのでしょうか? 日本人の方がたはぜひとも知りたいと切望しています。

1:23

菊地宗光(郡山市保健所放射線健康管理課)
冷静に放射能というものに向き合っていかなくてはならない、と思います。


1:32

ナレーション
予期せぬ場所に答えを求めて、フォールアウト地帯を貫く放射能ロードを旅しています。この旅は、フランス人とカナダ人の堆積物科学者チームを道連れに山の中でスタートします。


1:46

オリヴィエ・エヴラ―ド
わたしたちはセシウムをトレーサー(追跡子)、丘陵の斜面から河川へ、そして海へと移動する物質の分散を追跡する特定トレーサーに使います。

1:55

ナレーション
セシウムにまみれた地勢は、彼らの堆積物移動研究にとって理想的な場所です。

2:05

マーク・ホーストマン
ここは福島第1原発を取り巻く20キロ圏土地入り禁止区域の外れです。わたしの背後の土地は非常に汚染されていますので、だれにも立ち入りが禁止されています。


2:27

ナレーション
オリヴィエ・エヴラ―ドの研究チームは立ち入り禁止区域のすぐ外側で新たに沈着した堆積物と周辺の土壌の放射線量を測定して比較します。セシウム137は水に溶け、除染が困難で、体内に入りやすいので、人間の健康と安全に対する懸念材料になります。

2:49

オリヴィエ・エヴラード
この地域では台風と雪解けが侵食現象を誘発する主要な原因になりますので、わたしたちは試料測定を年に2度しています。


3:00

マーク・ホーストマン
春に雪が溶けると、ここに水が奔流となって押し寄せ、新しい堆積層を残しますので、わたしたちはここにいるのです。この研究チームはこれら河川堆積物を3年にわたり研究してきたのですが、放射能レベルはいまだに高いままです。じっさい、ここで得た表示値は、この地域のすべての河川堆積物のなかで最高値になっています。

3:20

ナレーション
この土壌は融雪によって川に流れこんだものですが、1時間あたり約5マイクロシーベルトの放射をしています。これは一般人に安全だとされている最高線量率の約50倍にあたります。そして、ほんの数メートル離れた林床ではさらに高くなり――7マイクロシーベルトに達します。


3:42

オリヴィエの研究仲間
6
から7ですね。


オリヴィエ・エヴラード
ああ、川の上よりもっと高い。


マーク・ホーストマン
どうして、そうなる?


オリヴィエ・エヴラード
森には植物がどっさり、腐食がどっさりあって、土壌を侵食から守っている。だから、森林に汚染物質の膨大な在庫がいまだに残ることになる。


マーク・ホーストマン
長く残るのか?


オリヴィエ・エヴラード
そう、そのとおり。

4:00

ナレーション
林床は放射線量が大きいので、長く留まるわけにはいきません。さらに川を下って、このダム湖は地震が堰堤(えんてい)を壊したので、空になっています。湖底が1時間あたり約6マイクロシーベルトの線量を放射していますので、将来の貯水が問題になるのは明らかです。


4:23

オリヴィエ・エヴラード
ここには、汚染物質の滞留箇所がまだたくさんありますので、水位が再び上昇すれば、ずっと後になって海へ押し流さると推測できます。

4:35

ナレーション
つまり、最初のフォールアウトのあと何十年にもわたって放射線レベルが脈動的に連続して上下することがありうるということになります。これはとりわけ、放射線に被曝する可能性が高い下流域の人口密集地域の場合、もっと重要なことになります。

4:54

マーク・ホーストマン
これは阿武隈川です。福島市を貫いて流れています。流域が汚染地域で最大です。ですから、この環境のなかで放射能がどこにあり、どのように動くのかを理解することが、放射能がどのように食物連鎖を介して人間に届くのかを知るのに不可欠です。


5:13

難波謙治教授(福島大学:生命・環境学)
いま川のなかに流れているセシウムのほとんどは粘土や個物粒子にくっついています。これはなかなか生物には行きにくいです。ただ、有機物にくっついているセシウム、それから水に溶けているセシウムは簡単に生物体に入りこみます。


5:35

ナレーション
難波謙治教授と学生たちはこれまで2年にわたり、このモンスーン帯河川における有機物とそれが運ぶセシウムの量との関連を探求してきました。遠心分離機で浮遊粒子を集めるために、5時間かけて何トンもの川水を汲み上げ、回転させるのです。試料はガンマ線分光計で分析し、放射線を放射する元を特定します。川の土壌や植物性物質の粒子は小さいかもしれませんが、そのサイズが問題になります。


6:09

難波謙治教授
粒子が小さいほど、表面に放射性セシウムを付着させる容量が大きくなります。


マーク・ホーストマン
すると表面積が大きくなって…


難波謙治教授
そうです。


マーク・ホーストマン
…体積との関係においてですね。


難波謙治教授
そうです。


マーク・ホーストマン
したがって、表面に放射性セシウムを固着させる容量が大きくなる。


難波謙治教授
そうです。

6:26

ナレーション
つまり、最も小さな粒子が最も放射能が強くなるということになります。

6:31

難波謙治教授
これらの有機物粒子が放射性セシウムを含有していると、魚に摂取され、魚体に移行することがありえます。


6:45

ナレーション
これでは人間が消費するには心配ですし、予防措置として川漁は禁止されてきました。放射能問題とその脅威の認識が日本で大きくそびえたち、モニタリングはもはや科学者たちだけの仕事でなくなりました。ユニークな市民科学プロジェクトが東京の都心部から世界規模に育とうとしています。

7:07

ジョー・モロス
どのようにものごとがかみあって動くのか、確信がもてないなら、基本的にこれが実例になります。わかりますか?


7:14

ナレーション
SAFECAST
(セーフキャスト)が、ハンダゴテなど使ったこともないボランティアたちに放射線の検知と記録をする機器の組み立て方を教えています。

7:22

アズビー・ブラウン
わたしたちはこの運動がこのような状況で効果をあげる市民アクションの先例になればと願っています――ひとつには、なにが起こっているか、究明する方法を人びとに教え、ふたつには、その情報を効果的に活用し、自国の政府を動かすために、「わたしたちはそれを調べあげ、これを突き止めました。あなたがたはXだとおっしゃるが、わたしたちはYであると気づいたのです。理由をお聞かせください」というのです。


7:44

オカダ・アサコ
わたしたちは、たとえば放射線とか、数かずの環境のデータの問題に対して余りにも人に任せすぎているという印象があって、やはり一人ひとりがデータを自分でちゃんと一からつくって知ることが非常に大事なことだと思って参加しています。


8:06

ナレーション
技術者であり古くからの住民、ジョー・モロスは、「bガイギー」ブランドで知られ、ベルト、バイク、車にクリップ留めできる安価なポータブル放射線計測器の開発に助力しました。

8:17

ジョー・モロス
さて、ここにあるのは明らかに肝心な部品である検出器です。これはガイガー・ミューラー計数管です。直径5センチのパンケーキ形ですので、感度が高く、日本国内のたいがいの場所で遭遇する低レベルの場合に役立ちます。そして上面にGPS受信機があり、場所と時間を読み取り、記録装置がデータをSDカードに書きこみ、これがディスプレイで、それにもちろん、マイクロ・コントローラもあって、システム全体を制御しています。


8:42

ナレーション
これが、この自作キット検出器の特別な点です。だれでも放射線量を地図上に記録し、一日に何千もの測定データを自動的に収集して、ウェブサイトにアップロードできます。セーフキャストはクラウドソーシング(ネット上で不特定多数のボランティアに作業参加を求めること)を介して、数百の計測器を動員し、放射線量に関する世界最大の公開データベースを構築しています。

9:03

ピーター・フランケン
わたしたちは現在、一月あたり約100万件の測定をし、日本国内の7000万か所に迫るデータを蓄積していて、いまやこれが日本国外にもじっさいに広がっています。


9:14

ナレーション
セーフキャストはまた、福島県内の自治体と協力しています。

9:19

菊地宗光
郡山市はセーフキャストと協力しまして、郵便局の集配バイクに線量計を付けまして、広い道路から細い路地まで、市内ほぼ全域の空間線量を測って、マッピングして、それを提供していただいております。


9:40

ナレーション
固定式の放射線モニターは、いまやバスの停留所や公衆トイレのように都市景観の一部になっています。セーフキャストは準・公的な立場から、自前の測定に比べて政府の測定値がどうなのか、一般市民に知らしめています。セーフキャストのなかで、ジョーほどに多くのデータを集めたボランティアはいません。

10:06

ジョー・モロス
じっさい、今日、わたしが行こうとしている所は、まだカヴァーされていません。


マーク・ホーストマン
セーフキャストの新しい領分ですね。


ジョー・モロス
そうです。わたしたちがフクシマで3年目であることを考えれば、ほとんどすべての道路を複数回カヴァーしたのには、ビックリします。

10:21

ナレーション
ジョーは過去数年でほぼ80,000キロを走破し、その間、5秒ごとにガイガー測定器が計測値を読みとりました。この街は放射性プルームに覆われ、ひどく汚染しました。

10:38

ジョー・モロス
この町は汚染が深刻で、避難になったのですが、いまでは明らかに人びとが戻っています。


10:46

ナレーション
ジョーの目論見のひとつは、除染の実効性を検証することです。

10:51

ジョー・モロス
そうですね、除染で最高の効果を望むなら、もちろん基本的にすべてを浄化する必要がありますが、ものが集まっていそうな箇所に集中すべきです。こういう側溝の底は、水が流れこみますし、塵芥がこびりつくので、すぐ近くの地面より汚染されていそうです。


マーク・ホーストマン
こういう具合に測定するのですか。


ジョー・モロス
それでできますが、この溝の深さは1メートルぐらいなので、遠すぎます。掃除されていなければ、底の堆積物はおそらく非常に高度に汚染されているでしょう。


マーク・ホーストマン
ここからでさえ、この通りでこれまでに調べたどこよりも高い値になっちゃう。

11:20

ジョー・モロス
それにいいですか、ほんの2メートル離れるだけでも、道の下側のほうが上側よりも汚染されています。放射能が降り注いだ当日、おそらく均一に汚染されたのでしょうが、さまざまな環境要因が原因になって、さまざまな度合いで洗い流されたり移動したりしたのでしょう。ですから、線量レベルが下がった地域で放射能が消えたのではなく、移動しただけであり、なんらかの場所を覆ったり集積したりしたのでしょう。このパイプの下をご覧ください。そこに検出器を置くと、実にホットなはずです。


マーク・ホーストマン
ピープ音が盛大だ。


11:52

ナレーション
この測定の単位は、CPM、つまり放射能の強度を表す電離現象の1分間あたり計数値です。住民がこうしたホット・スポットに気づいているなら、少なくとも避けることはできます。

12:04

ジョー・モロス
ここの所は心配しますか…そのう、放射線…


地元の女性
大丈夫だという話ですから、大丈夫だと思って生活しています。



ジョー・モロス
この人は大丈夫だと考え、それほど確信してはいないが、基本的に大丈夫と思っているのです。ありがとうございました。


地元の女性
ありがとうございました。


マーク・ホーストマン
ありがとう。

12:18

ジョー・モロス
では、もう少し見てまわりましょう。


マーク・ホーストマン
さて、家や庭、農地が混在しているこの集落で、ほかに見るべき変わったものはありますか?


ジョー・モロス
ひところ、わたしたちはもともと、土地の汚染度を示す地図の作成を試み、そこで栽培する食品の危険度を見積もろうとしていました。ところが、土壌中の有機成分とか、砂質度の違い、土壌に投入された他の非有機資材といった要因がありますので、農地の汚染レベルや線量測定値と食品の状態のあいだにほとんど相関関係がないことに気づきました。ほうれん草や、日本のハーブ、紫蘇は明らかにセシウムを蓄積する傾向がありますので、少しでも汚染された地域で栽培するべきでありません。


13:03

ナレーション
でも、よいニュースですが、この場所の除染の結果、当初、高線量だったのが安全なレベルに下がりました。しかし、いまだに避難区域のままの場所では、大群の作業員らが森林地や水田を除染しています。突貫工事で植生は剥ぎ取られ、表土は除去されています。汚染物質は袋詰めされ、運びだされます。

13:29

マーク・ホーストマン
この国を除染するのに要する作業な壮大な規模には、仰天します。シドニーやパース、ブリスベーンに匹敵する面積の地域を切り刻み、剥ぎ取り、洗いあげなければならないと想像してみてください。公的に汚染認定され、この種の除染を要する日本の地域の面積は、オーストラリア諸州の首都をすべて合計したものより広いのです。


13:51

ナレーション
だが、袋詰めの汚染物質の処分問題はまだ解決していません。また、土地を除染するにしても、どこまで除染すれば安全レベルになるのかについても、保証の限りではありません。ジョーはつい先程、数百メートルほど登った森林内と、この除染したばかりの地区の放射線量計測値を比較してみましたが、なんの違いもありませんでした。


14:13

ジョー・モロス
この辺りの線量レベルは1時間あたりほぼ0.6から0.7マイクロシーベルトあります。人びとが避難区域に戻るために日本政府が設定した目標レベルは0.23マイクロシーベルトですので、政府が定めた基準値に届くのに必要なレベルの約3倍にあたっています。


マーク・ホーストマン
作業の後でも、そうですか。


ジョー・モロス
除染しても、この結果です。

14:35

ナレーション
さらに、オリヴィエのチームは、除染作業が実施されている地域の侵食が下流域の汚染を増加させていることを明らかにしています。このことは、河川が海への汚染流出の途切れることのない供給源であるとするオリヴィエたちの知見を反映しています。


14:52

オリヴィエ・エヴラード
取水地の上流部で、最近の河川堆積物の汚染が減衰していることがわかって、とても驚いています。


マーク・ホーストマン
では、白点ですか?


オリヴィエ・エヴラード
確かに白点です。一方、沿岸部では重度に汚染された堆積物の集積が認められ、ここに黒点で示されています。


15:14

ナレーション
数年間にわたり、セーフキャストの試料採取地データの75%以上が、融雪期ごと、雨季ごとの高地から沿岸への放射能の急速で大規模な移動を示しています――これは、これまで想定されていなかった新たな汚染源です。


15:32

オリヴィエ・エヴラード
わたしはこれを実に特筆ものの知見だと思うのですが、なにかをしてみようとする物語で、人間は自分がそれを制御していると考えますが、制御してはいません。すべてを支配しているのは、まさしく自然なのです。


15:47

ナレーション
日本で放射能が人間の健康に影響をおよぼす様相が目に見えるようになるのは、これからのことです。少なくとも1世代はつづく問題に対処するために、正確で標準化されたデータを備えたオンライン・マップを人びとに提供することは、極めて重要な手段になります。

16:02

ジョー・モロス
わたしたちは、人びとに参加していただき、その人たちに率先して参画していただいているので、わたしたちの実践を信頼してくださる、そのような方途を見つけました。その人たちがデータ収集を手伝えば、その信頼性を心から信じることができるようになりますので、人びとが理解でき、信じられるような形でメッセージを発信するのに役立ってきました。


16:18

菊地宗光
原発事故というものは、福島県民にとって、あるいは日本にとって、大変不幸なできごとでした。でも、それを回復するために、わたしたちもがんばっていますし、世界中の放射線・放射能の研究者、あるいは環境学者、いろいろな方がたの支援をいただいて、一刻も早く復旧したいと思っています。みなさん、協力をよろしくお願いします。


番組スタッフ

レポーター:          マーク・ホーストマンMark Horstman
プロデューサー:   マーク・ホーストマン
リサーチャー:    ドミニク・パイル Dominique Pile
カメラ:                 ケヴィン・メイ Kevin May
音響:                    スティーヴ・ラヴィチ Steve Ravich
エディター:          ヴォーガン・スミス Vaughan Smith

制作協力

オリヴィエ・エヴラード博士Dr Olivier Evrard
フランス気候科学・環境研究所

難波謙治教授
福島大学・環境微生物学者

アズビー・ブラウンAzby Brown
KIT
未来デザイン研究所KIT Future Design Institute理事長
東京、セーフキャスト東京・ボランティア

ジョー・モロスJoe Moross
セーフキャスト日本・ボランティア

ピーター・フランケンPieter Franken
セーフキャスト共同創設者・日本部長

菊地宗光
郡山市保健所・放射線健康管理課長

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海外報道【番外編】#イスラエル 軍の #ガザ 攻撃ミサイルに #ソニー 製のカメラと制御装置

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PRESS TV(プレスTVは、イラン国営英語ニュース・テレビチャンネル(ウィキペディア



日本のエレクトロニクス巨大メーカー、ソニーがイスラエルによるガザ封鎖地区に対する無慈悲な攻撃に加担してきたことを示す新たな証拠を発見とプレスTVが報道。


プレスTVガザ通信員がイスラエル軍ロケットの一部を発見し、ソニーがミサイルに装備するカメラとハイテク制御ボードをイスラエル政府に供給してきていたことが露見した。


ガザ地区におけるイスラエル軍用機による標的選別を容易にするために、明らかにソニーが製造したカメラがロケットの残骸に装着されていた。


78日にイスラエル軍がガザ攻撃に踏み切り、封鎖された領域の全域に渡る数多くの空襲を重ねるなかでの今回の発見である。イスラエル軍はまた、717日に包囲されたパレスチナ領に対する地上攻撃をも開始した。


攻撃によって、これまでに470人の子どもを含め、少なくとも1,942人のパレスチナ人が殺害され、10,000人近くが負傷した。


パレスチナ抵抗運動、ハマスの軍事部門、エゼディン・アル=カッサム旅団は、イスラエルに対する報復攻撃を繰り返してきた。


イスラエル陸軍は今回の紛争で65人のイスラエル人が殺されたと発表しているが、ハマスはその人数を150人以上としている。


バラク・オバマ米大統領は今月はじめ、テルアヴィヴによるガザ猛襲をも顧みず、イスラエル軍のアイアンドーム・ミサイルのために、米国民の血税22500USドルを供与する法案に署名した。


ワシントン政府はこれまでにもイスラエル軍のアイアンドームに巨万のドルを注ぎ込んできた。同ミサイルは4ないし70キロ射程のロケット弾や砲弾を迎撃するために設計されている。


MR/AB/SS



【姉妹記事】




【付録イメージ】
ソニーのカメラ・制御技術、ふたつの顔…


#wnn【世界核産業ニュース】フクシマ核燃料の位置特定に宇宙線…胡散臭さが透けて見える!

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世界原子力ニュースは、原子力産業を支援する世界的な業界団体、世界原子力協会が運営する情報配信サービス(ウィキペディア@W_Nuclear_News


2014811

ミューオン(μ粒子)検出器を組みこんだシステムを活用すれば、損壊した福島第1原発原子炉の溶融炉心の正確な位置を特定できるはずである。東芝による授与契約にもとづき、意思決定科学インターナショナル株式会社(DSIC)が同システムを提供することになっている。

DSICシステムは建屋の上部と下部に設置した2器の検出器の測定結果を比較することによって、原子炉建屋内を貫通するμ粒子の経路を確定し、内にある燃料の正確な位置と状態を特定できるはずである。(イラスト:LANL
ヴァージニア州ミドルバーグに本社を置くDSICは、2器のμ粒子検出器を製造して納入し、それが原発建屋に設置される。検出器は東芝の福島原発全般プロジェクトの一環に組み込まれ、原発内の核燃料の位置と状態を確認する。契約額は公表されていない。

μ粒子は、宇宙線が地球の大気圏上層部に突入するさいに生成される素粒子。自然界でこの素粒子は1平方メートルあたり約10,000μ粒子の割合で地表に届いており、無害である。μ粒子追跡装置はこの粒子が対象物を貫通するさいに検出して追跡する。μ粒子が物質を貫通するさい、軌跡がわずかに変化し、その方向変化は物質の密度に相関している。ウラニウムやプルトニウムなど、核物質は非常に密度が高く、それ故、特定が比較的容易である。DSIDはマルチモード受動型検出システムにこの技術を採用し、港で放射性物質を探るためのコンテナ検査に使っている。

検出器が生成する3D 画像は、損傷した福島第1原発原子炉の炉心内燃料の状態と位置の明瞭な描写図をもたらすはずである。これは、東芝が安全で効率的な汚染除去プランを開発するのに役立つだろう。

東電と日本原子力委員会はそれぞれ違ったコンピュータ・モデルを用いて、福島第1原発炉心の位置を解析してきたが、1号炉について同じ結論に達している。両モデルとも、1号炉の77トンの燃料すべてが原子炉容器から直下のドライウエル区域に溶け落ちていると予測した。2号炉と3号炉については、両モデルの結果はそれぞれ違っているが、総合すると107トンの炉心の3040%が容器内に残っており、他はドライウエルに落ちているようだ。

DSIC社長兼CEOは、「福島第1原発の復旧を支援し、人員のための安全な労働環境を支え、確保するために、わが社のソリュージョンを役立てていただくことが、わたしどもの喜びとするところです」と語った。

技術開発

DSISのμ粒子検出システムは、ロスアラモス国立研究所(LANL)が独自に発明した技術にもとづいている。

ロスアラモスの主任研究員でμ粒子断層撮影チーム主査、クリストファー・モリスは最近、「ロスアラモスの研究者たちは福島の原子炉複合施設を破損した2011年地震と津波から数週間以内にμ粒子透過撮像法の改良にとりかかりました。わたしたちは18か月のうちに、われわれの技術を磨きあげ、遠隔的に核物質の位置を探り、特定する技術として、ロスアラモス方式が従来型のμ粒子透過撮像技術より優れており、現場で採用できることを示す論文を発表しました」とコメントした。

LANI技術最高責任者(CTO)、ダンカン・マックブランチは、研究所の技術によって「プラント運転員がじっさいに内部へ潜りこむ必要なしに、炉心物質の状態を確定することが可能になります」と語った。さらに付けくわえてこういう――「ビデオ内視鏡検査やロボットの導入などの侵入型技術は、放射能放出のリスクを冒すことになります。おまけに、このような技術はせいぜい物質の位置特定のための部分的な映像を送ってくれるだけです。μ粒子透過撮像技術によって、プラント運転員は内部の核物質の位置を見て、その状態を確定し、より安全でより迅速な除染法を設計するための情報に欠かせない知見をえることができます」。

リサーチ・執筆:世界原子力ニュース

©2014 World Nuclear Association, 22a St James's Square, London, SW1Y 4JH, UK. Registered in England and Wales, number 01215741


訳者の一言、二言…

メルトダウン核物質が床面より深く沈み込んでいる場合には、位置の特定すらできないのではないか。たとえ、すべて特定できるとしても、クリーンアップは別の話だろう。所詮、核マフィアによる、核マフィアのための、核マフィアの手前みそ情報サービス。


唯一わかることは、利権は廻る…これだけ。

イラン国営プレスTVニュース【スクープ特報】イスラエル軍の #ガザ 攻撃ミサイルに #ソニー 技術

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イラン国営プレスTVニュース PressTV News Videos


スクープ特報:
イスラエル軍のガザ攻撃ミサイルにソニー技術
Exclusive: Sony technology found in an Israeli missile in Gaza
https://www.youtube.com/watch?v=-ckgolwVqH8


トランスクリプト
(注: 本稿は音声聞き取り日本語訳であり、字句どおりの正確さを保証するものではありません)



キャスター
アラーの思し召しにより、ガザ通信員のアラ・サファディにつながっております。


アラ、事実について、詳しく話してください。

0:07

アラ・サファディ通信員
今日は停戦初日で、停戦期間はまだ48時間残っています。


48時間の停戦といっても、パレスチナ人にとってはまったく気が休まりませんが、おかげで空襲はありませんので、みなさんはイスラエルがもたらした悲惨な状況や破壊の規模を見にいったりしています。

0:32

わたしは今日、ガザは、カーンユニスのクザアに行ってきましたが、目にしたことは言葉にもなりません。

 

0:41

地域全体が余りにも破壊され尽くしていました。工場、モスク、住宅、街並みなど、目にするものがことごとく破壊され、地域で無事でいる建物はなにもないといった惨状でした。この理不尽な攻撃を免れたと思えるような見栄えの家屋でも、内部が丸焼けで、壁が外側に歪んでいます。


1:02

人びとが処刑された住宅のなかに踏み入ってみましたが、内部はまともに歩きまわることもできない惨状で、その匂いといえば、とても嗅いでおられるものでなく、屋内に10日以上も死骸が放置されていた異臭で、要するに10日間、国際赤十字の救急隊や国連は遺体を回収することもできなかったのです。隊員たちは10日間、家のバスルームに入ることさえできなかったのです。


1:25

これはイスラエル軍兵士らの非人間性を余すところなく示しています。彼らはバスルームに閉じ込めて、5人の体に大釘を打ち込み、その後の戦闘中、その家を封鎖していました。


1:35

地区内や家屋内を歩きまわっているうちに、このようなシャトル弾をいくつか見つけたのですが、これがとても大勢の人たちを殺しました。これはドローン(無人軍用機)が発射したロケットですが、ロケット本体ではなく、ロケットの一部です。こんなものが実際に、子どもたちや女性たちの頭に直撃し、瞬時にいのちを奪うのです。これが、ガザの地表で起こっている事態です。


1:58

わたしが見たものに比べれば、これさえもなんてことありません。わたしは、破壊された2棟の家屋のまわり全域の人たち全員の頭が吹き飛ばされているのを見ました。


2:08

これはまた別のX16ロケットの一部分です。これは日本製です。ソニー製品で、Made in Japanとはっきり印されています。このロケット部品の先端部に、カメラが装着されています。このカメラ付きの装置は、イスラエル人たちが人を殺しているという意識すらもなく、民間人を抹消しようとしているとき、ロケットの先端部で標的を選定するのに使われているのです。


2:42

これはとても重たいシロモノです。別の側には、電子ボード付きの制御装置があります。


2:51

わたしは別のとき、シーファ病院で1週間前、このボードが子どもの頭のなかに突き刺さっているのを見ました。わたしには説明の言葉もありません。眼前で床に転がり、なにもかも焼きつくし、3人、あるいはそれ以上も多人数を殺し、モスクを破壊し、その破壊の惨状は言語を絶し、再建するには年もかかるでしょう。


3:12

わたしたちは建物のことを言っているのではありません。わたしたちは子どもたちのことを言っているのです。今日、わたしに話しかけてきた人たちは、いったい自分の周りでなにが起こったのか、理解すらできない様子でした。



【姉妹記事】


ソニーの2つの顔…

【参考ブログ記事】

清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所
ソニーの平和主義はホンモノか?

ソニー、ヒット商品開発へ100人チーム結成 テーマ絞って年内始動
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120828/biz12082819160030-n1.htm

業績を上げるならば、CCD素子のような他に競合存在しないような、何かダントツのデバイスなり、コンポーネントを軍民両市場で売ればいいんです。

意思決定が遅く、人件費の高い日本の大企業が家電などのコンシューマー向け製品で勝負するのは極めて困難だと思います。

売れるものならば軍用だってどんどん売ればいい。

ソニーは故盛田氏の時代から軍事で儲けないと言ってきたんですが、それは随分と綺麗事です。

ハッキリ言って嘘です。

同社のCCD素子は航空機や車輛などに搭載されるFLARには必ずといっていいほど使用されています。またミサイルのシーカーなどにも使用されています。
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